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モーターの構造とは?|回転する原理や仕組み、広く利用される理由を解説

2023.08.29

電気エネルギーを力学的エネルギーへ変換する原動機である「モーター」は自動車やエレベーター、IT機器、身近な電気製品までさまざまな分野で活用されていますが、その原理や構造について、理解されていますか? この記事では、さまざまな種類があるモーターのなかで主に「ブラシ付きDCモーター」について取り上げ、その基本的構造や回転動作の原理、活用されている分野などについて解説します。

モーター(電動機)は、日常の身近な製品から産業工場まで多くの分野で使われています。モーター以外にもさまざまな動力源がありますが、なぜ広く普及しているのでしょうか。理由を知るためには、モーターの基本的な構造や動作原理から知るとわかりやすくなります。

この記事では、モーターの構造や、広く利用される理由や活用製品も紹介しますので、ご興味のある方はぜひご覧ください。

モーターの基本的な構造

モーターは、直流(DC)モーターや交流(AC)など数多くの種類があります。中でも、直流モーターである「ブラシ付きDCモーター」は基礎的なモーターと言えます。ここではブラシ付きDCモーターを例にして、基本的な構造を解説します。

ブラシ付きDCモーターの構造は、ローター、コイル、ステーター、永久磁石、整流子、ブラシから構成されています。これらの役割を理解することでモータの回転についての理解を深めることができます。

図:モーターの構造

ローター(回転子)

「ローター(回転子)」とは、モーターの回転する部分です。ローターには、「コイル(巻線)」が施されています。ローターの回転が、機械を動かす動力源となります。

コイル(巻線)

「コイル(巻線)」とは、紐状の「電線(導線)」です。ローターの外周に取り付けられており、電流を通す性質を持ちます。電線の材料は、銅やアルミニウムなどが一般的です。コイルの両端は、後述の「整流子(コミテーター)」に接続されています。

ステーター(固定子)

「ステーター(固定子)」は、ローターを囲むように外側に設置されています。ローターを回転させる力を生むための部品です。ステーターには、永久磁石が組み込まれています。

永久磁石

永久磁石はステーターに組み込まれ、N極とS極が対面するように設置されています。つまり、N極とS極の磁界の中に、コイル及びローターが位置している形です。コイルへ直流電流を印加すると電磁力が働き、回転へと繋がります。詳しい回転原理は、次の章にて解説します。

整流子(コミテーター)

「整流子(コミテーター)」とは、コイルの両端と接続している素子です。半回転ごとに電流の向きを変え、コイル及びローターの回転を維持させる役割を持ちます。また、整流子は「ブラシ」とも接触しています。

ブラシ

「ブラシ」とは、整流子と接触している電極です。ブラシと整流子は常に接触しているわけではなく、回転中に接触・非接触を繰り返します。ブラシと整流子の接触時はコイルに電流が流れ、ローターが回転します。非接触時は電流が流れませんが、惰性によりローターは回転し再びブラシと整流子が接触する仕組みです。

【補足】ブラシレスDCモーターは整流子とブラシがない

ここまで、「ブラシ付きDCモーター」の構造を紹介しましたが、直流モーターには「ブラシレスDCモーター」も存在します。ブラシレスDCモーターの構造には、整流子とブラシが含まれません。代わりに、トランジスタなどの素子で構成される電気回路により、モーターを回転させます。

ブラシレスDCモーターは、整流子とブラシの接触による摩耗が起きません。そのため、ブラシ付きDCモーターに比べ、静音性や耐久性が優れています。

その他のモーターの種類

本記事では、主にブラシ付きDCモーターの構造について取り上げ、解説を行っていますが、モーターにはDCモーター以外にもさまざまな種類があります。
以下に、代表的な種類についての概要をまとめておきます。

【ACモーター(交流モーター)】
交流(プラスとマイナスが一定周期で切り替わる)の電圧を用いたモーター。設計の違いにより整流子型モーター、同期モーター、誘導モーターに分けられる。

【PMモーター(永久磁石式モーター、磁石式同期モーター)】
回転子(ローター部分)に永久磁石を使用しているモーター。小型化しやすい。

【ステッピングモーター(パルスモーター)】
パルス信号との同期で動作するモーター。パルス信号の周波数を高めると回転が速くなる。

【誘導モーター】
非同期式で、交流電源に直接接続したうえで使用することが可能なモーター。比較的安価に製造できる。

【超音波モーター】
電磁モーターと異なり、超音波領域(20kHz以上)の振動を用いてローター部分を駆動させるモーター。

【サーボモーター】
サーボ機構のなかで、位置や速度を自動制御できるモーター。
(特定のモーターを指すのではなく、あくまでサーボ機構のなかで使用されるモーターのことを指す)

【インホイールモーター】
自動車のホイール内部で駆動するモーター。

モーターが回転する原理と仕組み

続いて、モーターが回転する原理や仕組みを説明します。同じく、直流モーター(ブラシ付きDCモーター)を例に見ていきましょう。モーターが回転するまでの流れは、次の4段階に分かれます。

1.磁界の発生
2.電磁力の発生
3.電磁力による回転
4.整流子による回転維持

順番に説明します。

1.磁界の発生

ステーターにはN極とS極の永久磁石が向き合って設置されているため、磁界が発生しています。磁界の向きは、N極からS極へ向かう形です。さらに、磁界の中央に、コイル(及びローター)を置きます。

2.電磁力の発生

コイルの両端は整流子と繋がっており、整流子は電極であるブラシと接触しています。電流を流すと、プラス側のブラシ→整流子→コイル→マイナス側の整流子→ブラシの順番で流れていきます。磁界の中にあるコイルに電流が流れるとき、電磁力(ここではモーターを回転させる力)が生まれます。

3.電磁力による回転

発生した電磁力は、フレミング左手の法則に沿った向きに力が働きます。フレミング左手の法則とは、電流・磁界・力(電磁力)の向きを求める法則です。電流と磁界の向きをフレミング左手の法則に当てはめると、N極側のコイルは上向き、S極側のコイルは下向きに力が働くとわかります。つまり、コイルは時計回りに回転するわけです。

コイルが90度回転すると、整流子はブラシから離れます。電流が流れず電磁力は失われますが、惰性で回転が続きます。整流子が再びブラシに接触すると電流が流れ、電磁力が再度発生する仕組みです。

4.整流子による回転維持

コイルが半回転(180度)に達した際、整流子によってコイルの電流の向きが反対になります。電磁力が働く方向が維持され、コイルを同じ方向に回転させ続けられます。整流子がないと、コイルの電流の向きが反対になりません。したがって、半回転した時点で反時計回りに回転してしまいます。時計回りと反時計回りを延々と繰り返すだけになるため、電流を一定方向に流す整流子が必要です。

モーターの活用分野と広く利用される理由

モーターは産業用から身近な製品まで幅広い用途で使われており、現代の機械製品に欠かせない部品です。具体的には、どのような場面で使用されているのでしょうか。

モーターの活用分野

モーターの代表的な活用分野と製品例を次の一覧表にまとめます。

活用分野 製品例
産業・業務用機器 エレベーター、自動ドア、ベルトコンベア、電動フォークリフト、産業ロボット、発電機
自動車 ハイブリッドシステム、パワーステアリング、パワーウィンドウ、パワーシート、燃料ポンプ、ワイパー、EVの回生ブレーキ
医療 CTスキャナー、MRI、電子血圧計、輸血機器、電動車椅子
IT(情報技術)・通信 スマートフォン、タブレット、PC、携帯基地局
身近な家電製品 エアコン、ドライヤー、ミキサー、洗濯機、扇風機、掃除機

モーターが利用される理由

なぜモーターは多くの分野で利用されているのでしょうか。4つの理由を解説します。

1.優れたエネルギー変換効率

モーターは、他の動力源と比べてエネルギー変換効率が優れています。一般的に、モーターのエネルギー変換効率は80〜90%です。一方、ガソリンエンジンのエネルギー変換効率は30%、ディーゼルエンジンは40%と言われています。モーターはエンジンよりも失われるエネルギーが少なく、効率良くエネルギーを得られます。

2.発電も可能

ここまで紹介したモーターの構造は、電気エネルギーを運動エネルギーに変換する仕組みです。しかし、モーターは、運動エネルギーから電気エネルギーを得ることも可能です。例えば、電気自動車や風力発電、新幹線はモーターによって運動エネルギーから電気エネルギーを得ています。モーターは駆動力だけでなく電力も生み出せるため、幅広い用途に使われているわけです。

3.制御しやすい

モーターは、他の動力源と比較すると構造が単純で制御しやすい構造です。例えば、エンジンは部品が多く、センサーによる電子制御も必要になります。また、モーターはシンプルな構造ゆえに小型化が可能です。小さな部品にも組み込みやすいため、多くの製品がモーターを採用しています。

4.環境に配慮した動力源

モーターは、環境に優しい動力源です。エンジンはガソリンを使用し、二酸化炭素などといった温室効果ガスを排出します。対するモーターは電気からエネルギーを生みます。モーターそのものからは温室効果ガスが排出されないため、環境に配慮したクリーンエネルギーと言えます。

モーターのシンプルな構造設計が支える私たちの社会

モーターはローターやコイル、永久磁石などの多くの部品で構成されています。しかし、構造自体はシンプルであるため扱いやすく、自動車、家電、医療機器といった多くの分野で使用されています。モーターは、私たちの社会を支える重要な部品と言えるでしょう。

【資料ダウンロード】 モーターの基礎とモータードライブの概要

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