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2019.01.15 Sub-GHz無線
30回に及んだ「Sub-GHz無線 基礎編」ですが、今回で最後になります。ここでは、主にSub-GHz無線を開発する際の基礎知識として、Sub-GHz無線の基礎から開発のポイントを解説してきました。以下の、各記事のまとめを抜粋しましたので、記事へのリンクとともにご利用ください。
<Sub-GHz無線の概要>
▶ はじめに
・Sub-GHz無線は近年注目されている近距離無線の1つ。
・国内電力スマートメータのBルートで利用されているWi-SUNはSub-GHz無線を利用したシステム
・Sub-GHz無線は1GHz以下の周波数帯を使う無線の総称。
・920MHz帯は通信距離やデータ伝送速度の面から、M2M/IoT、ワイヤレスセンサネットワークに使い勝手のよい特徴をもつ。
<Sub-GHz無線開発の基礎知識>
▶無線特性の用語
・Sub-GHz無線開発の基礎値知識として、無線特性の用語を理解する。
・搬送波周波数はデータを送る周波数で、搬送波を変調することでデータを送信する。
・周波数精度は搬送波周波数の精度。所望の周波数からのズレ、誤差のことで、通常ppmを使って表す。
・送信パワーは、送信機がアンテナに供給する電波の強さで、単位はmWまたはdBm。
・隣接チャネル漏洩電力 (ACP)は、隣に位置するチャネル帯域に放射される/漏れ出す電力で、単位はdBm。
・隣接チャネル漏洩電力比 (ACPR/ACLR)は、ACPの比で、単位はdBまたはdBc。
・ 占有帯域幅
・占有帯域幅とは、Sub-GHz無線では、送信電力の99%が含まれる周波数幅。
・FSKでは変調指数が大きいほど受信機の復調特性が良くなるが、占有帯域幅が広がり周波数利用効率が悪くなる。
・逆に変調指数が小さいほど占有帯域幅が狭まりまるが、m=0.5を下回ると復調特性が急減に悪化する。
・変調指数0.5のFSKのことを、最も変調指数の小さいFSKという意味で、MSK(Minimum Shift Keying)と呼ぶ。
・ スプリアス
・スプリアスは不要な電波のことで、以下の2種類がある。
・不要輻射:目的とする帯域外への電波の発射で、そのレベルを無線通信に影響を与えないで低減できるもの。
・帯域外発射:変調よって生じる目的とする帯域に近接する周波数への電波の発射で、そのレベルを無線通信に影響を与えないで低減できない不要輻射。
・受信時のスプリアスは、非常に小さく、通常は無視できるレベル。
・ 受信感度と選択度
・受信感度と選択度は、受信性能を示す重要なパラメータ。
・受信感度は、どのくらい弱い電波まで受信できるかという能力であり、決められた誤り条件を満たす最小の入力レベルで単位はdBm。
・選択度は、受信機が妨害波をどの程度分離して希望波を受信することができるかという能力で、妨害波レベルを希望波レベルとの比で示すので単位はdB。
・ブロッキングは妨害耐性を示すパラメータで、搬送波周波数から離れた周波数(オフセット)上での妨害波(不要波)を除去して、目的の信号(希望波)を受信する能力。
・スプリアス応答は、スプリアスポイントの妨害波を除去して目的の信号(希望波)を受信する能力。
・ まとめ
・スタートラインでチェックしておく用語をまとめた。
・意味のわからない用語は、必ず意味を調べて理解することが重要。
・無線にかかわらず、用語の意味がわからないまま先に進むことはできない。
▶無線設計ガイダンス
・ 設計の手順
・ここでは無線設計のビギナーに、最低限知っておくべきこと、設計のためのガイダンス、設計や評価における重要なポイントやヒントを提供することで、無線を必要としている人が無線設計にチャレンジできることを目的にしている。
・ 無線方式の選択
・無線ビギナーが無線設計を始める場合、最初に検討し決定すべきは無線方式である。
・実現したいことを「5W1H」で考え整理する。
・どの様な無線方式があり、それらの仕様、特徴を調べて、5Wを実現できる無線方式を選択する。
・無線ビギナーが無線デバイスを選択する場合、ますはモジュールが無難である。
・LSIかモジュールかは、設計リソースだけではなく、生産数量や市場投入時間、トータルコストを加味する必要がある。
・ネットワークトポロジーとは、通信ネットワークの接続形態のこと。
・ネットワークトポロジーの特徴を理解して、構築するシステムに適するものを選択する。
・本章の①無線方式の選択~③ネットワークトポロジーの検討は、本来は個別の作業ではなく包括的に行うもの。
・仕様確認は、単にサイズや性能だけではなく、サポートや入手性、そして採用実績なども含めた様々な角度から検討することが重要。
・評価ボードとソフトウェアの提供があると、評価を迅速に開始できる。
・まず動かしてみることも重要。
・決定したシステムを実現するために、具体的にどんなハードウェアを開発する必要があるのか考える。
・ハードウェアの共有化ができる部分は可能な限り共有化する。
・決定したハードウェアとシステムを制御するためのソフトウェアを開発する。
・OSI参照モデルを参照し、自分で開発しなければならないものを明確にする。
・通信モジュールを利用する場合、一般に必要になるのは上位レイヤの開発。
・ 評価の検討
・無線通信の評価の第1歩として、通信距離と通信の安定性を確認する。
・確認にはpingを利用するのが手軽で、通信速度などある程度の情報も得られる。
・ まとめ
▶無線設計ガイダンス
・ 回路設計
・無線通信LSIを使った設計はLSIの集積度が高いため、アンテナ、水晶他わずかなLCR部品で構成できる。
・回路設計は基本的にそのLSIの水晶回路に従う。
・無線回路は、µVオーダーの極小信号を取り扱うので基板(PCB)レイアウトは非常の重要。
・グランド(GND)は極力強化する。
・ 調整、測定時
・調整は所望の特性が出ていない場合に必要になる。
・主要なチェックポイントは、マスタークロック、VCO、マッチング、スプリアス、受信感度、送信パワー、アンテナインピーダンス。
・VCO発振周波数の調整は、LSIのキャリブレーション機能を使う。
・キャリブレーション機能を使っても正しく調整できない場合は、外付け部品の定数を変更する必要がある。
・調整が正しく終了しない場合、一般的にはPLLアンロックが発生し、受送信ができない可能性がある。
・マッチングはアンテナからLSI間の信号を最大の効率で送るために必要。
・マッチングが正しく調整されていないと、所望の送信出力や受信感度が得られなくなる。
・マッチング調整には、スミスチャートが主に用いられる。
・LSIから送信時に放射されるスプリアスは、標準規格を満足するようにフィルタ等で減衰させる必要がある。
・フィルタにはトラップフィルタやローパスフィルタを利用する。
・その他の調整として、送信パワーおよびRSSI、発振回路、ループフィルタの調整が必要。
▶通信フォーマット
・ 通信レイヤとは
・データ通信は決められたフォーマット(形式)に従い、それによって通信が成立する。
・通信はレイヤ(階層)構造で考え、基本的にOSI*参照モデルでレイヤ化されている。
・通信フレームはデータ通信における送信データの1単位で、入れ子状態で通信フレームを構成する。
・物理層の無線パケットは、プリアンブル信号、同期ワード(SFD)、ヘッダ、データペイロード、FCSで構成されている。
・実データにより、物理層でパケットの終端を検出しデータの正しさを確認する。
・データリンク層(MAC層)では、直接つながった機器とのやり取りに関するルールが定められている。
・ネットワーク層では基本的に以下が規定されている。
-データの送信先/送信元を識別できるアドレスの割り当て方法(アドレッシング)
-送信先への経路の選択方法(ルーティング)
-選択した経路へデータ(パケット)を送信方法
・アドホックネットワークとは、無線端末同士でネットワークを構築し、マルチホップにより応用範囲が飛躍的に広がる可能性があるネットワーク。
<干渉回避の手法>
▶ キャリアセンス
・無線通信において干渉を回避する方法としてキャリアセンスがある。
・キャリアセンスは、送信を開始する前に他の無線局が送信を開始しようとする無線チャネル(自チャネル)を使用していないか確認し、他無線機が自チャネルを使用中であれば、同一周波数での送信を行わないことで干渉を回避する。
<無線システム検討へのヒント>
・無線システムではパケットロスが発生するので、パケットの再送を前提にするシステムにしておく。
・電池駆動システムの受信に関する消費電力を削減するには間欠受信にする必要がある。
・無線通信は盗聴される可能性があるので、特に到達距離が長いSub-GHzの場合にはセキュリティには十分な注意を払う。
・無線通信デバイスを提供してるメーカーサイトの技術資料、情報、サポートツールをまずは利用する。
以上