この記事のキーポイント
・擬似共振方式の絶縁型AC/DCコンバータの設計事例。
・パワースイッチにはSiC-MOSFETを利用する。
AC/DCコンバータ設計編の新章、「SiC-MOSFETを使った絶縁型擬似共振コンバータの設計事例」を開始します。この章では、今まで取り上げた「フライバック方式」と「フォワード方式」に次いで、「擬似共振方式」の電源ICを利用した絶縁型AC/DCコンバータの設計事例を解説します。
また、パワースイッチにSiC(Silicon Carbide:シリコンカーバイド)のMOSFETを使用します。SiCはSi半導体に比べ、低損失で高温下での動作特性に優れた新世代の半導体材料です。SiC半導体と聞くと、何かとても大きな電力を扱う特殊なアプリケーションをイメージするかもしれませんが、多くの身近なアプリケーションで省エネや小型化に貢献可能です。SiC半導体はすでに実用領域に入っており、品質信頼性要求が厳しい車載機器にも搭載されています。SiCパワーデバイスの詳細については、Tech Web基礎知識でも取り上げていますので、合わせて読んでいただければと思います。
この章では、以下の項目について解説する予定でいます。
<SiC-MOSFETを使った絶縁型擬似共振コンバータの設計事例>
- 設計に使うIC
- トランス設計
- 主要部品選定
- EMI対策
- 出力ノイズ対策
- レイアウト案
- 評価
以下は、この設計事例でできあがるAC/DCコンバータです。ちなみに、電源用ICは裏面の赤色○、SiC-MOSFETは表面のオレンジ○のところに実装されています。

電源用IC:BD7682FJ、SiC-MOSFET:SCT2H12NZを使った絶縁型擬似共振AC/DCコンバータの例
次回は、設計に使う電源ICと擬似共振型についての説明を予定しています。
「SiC-MOSFETを使った絶縁型擬似共振コンバータの設計事例」と同一カテゴリの記事一覧
- 設計に使う電源IC:SiC-MOSFET用に最適化
- 設計事例回路
- トランスT1の設計 その1
- トランスT1の設計 その2
- 主要部品選定:MOSFET Q1
- 主要部品選定:入力コンデンサおよびバランス抵抗
- 主要部品選定:過負荷保護ポイントの切り替え設定抵抗
- 主要部品選定:電源ICのVCC関連部品
- 主要部品選定:電源ICのBO(ブラウンアウト)ピン関連部品
- 主要部品選定:スナバ回路関連部品
- 主要部品選定:MOSFETゲートドライブ調整回路
- 主要部品選定:出力整流ダイオード
- 主要部品選定:出力コンデンサ、出力設定および制御部品
- 主要部品選定:電流検出抵抗および各検出用端子関連部品
- 主要部品選定:EMIおよび出力ノイズ対策部品
- 基板レイアウト例
- 事例回路と部品リスト
- 評価結果:効率とスイッチング波形
- SiC-MOSFETを使った絶縁型擬似共振コンバータの設計事例 ーまとめー