この記事のキーポイント
・トランスT1のコアサイズ、一次側インダクタンス、各巻数を手順に則り計算する。
・設計編第一弾の「絶縁型フライバックコンバータ回路設計」とほぼ同じ考え方で算出できる。
前回の「トランスT1の設計 その1」では、下記の算出手順の①から③までを説明しました。今回は「その2」として、残りの④から⑥を算出し、トランスT1の設計を終えます。
- ①フライバック電圧VORの設定
- ②一次側巻線インダクタンスLp、一次側の最大電流Ippkの算出
- ③トランスサイズの決定
- ④一次側巻線数Npの算出
- ⑤二次側巻線数Nsの算出
- ⑥VCC巻線数Ndの算出

「その1」でも説明しましたが、トランス設計のために導出しなければならないパラメータは、「コアサイズ」、「Lpのインダクタンス」、「Np/Ns/Ndの巻数」になります。「その1」では、「コアサイズ」と「Lpのインダクタンス」を算出済みです。
トランス設計に必要なパラメータ
トランスコアサイズ | EFD30(または互換品) |
---|---|
Lp(一次側巻線インダクタンス) | 1750µH |
Np(一次側巻線数) | ④にて |
Ns(二次側巻線数) | ⑤にて |
Nd(VCC巻線数) | ⑥にて |
また、T1に与えられる条件は、出力24V1A、VIN(DC)=300V~900Vです。
④一次側巻線数Npの算出
4つ目の手順として、一次側巻線数Npを算出します。一般的なフェライトコアの磁束密度B(T)の最大値は100℃において0.4Tなので、Bsat=0.3Tとします。
磁気飽和を起こさないために、AL-Value-NI特性を確認して、飽和しない領域で使用する必要があります。確認にはAL-Value-NI特性のグラフを利用します。

例えば、Np=50ターンにしてみると、
となり、飽和領域に入ってしまいます。
この飽和領域に入らないように一次巻線数を設定します。
Np=64ターンの場合は、

となり、飽和しない領域にあります。よって、Np=64ターンとします。
⑤二次側巻線数Nsの算出
続いて、二次巻き線数Nsを算出します。「①フライバック電圧VORの設定」で、Np/Ns=8を求めてありますので、これから算出します。
⑥VCC巻線数Ndの算出
以下の式からVCC巻線数Ndを求めます。VCC=24V、Vf_vcc=1Vとします。
VCCの24Vは、この設計で使うICであるBD7682FJ-LBのVCCの標準要求電圧です。SiC-MOSFETを駆動するので、ゲート電圧(OUT端子クランプ電圧)は18V(typ)を必要とします。
これで必要なパラメータすべての算出が終わりました。上出の表に数値をいれました。
トランス設計に必要なパラメータ
トランスコアサイズ | EFD30(または互換品) |
---|---|
Lp(一次側巻線インダクタンス) | 1750µH |
Np(一次側巻線数) | 64ターン |
Ns(二次側巻線数) | 8ターン |
Nd(VCC巻線数) | 8ターン |
最後に、これらのパラメータを基にしたトランスの設計事例を示します。
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