この記事のキーポイント
・スイッチングにより急峻な電流のON/OFFが発生するループでは、寄生成分により高周波リンギング=スイッチングノイズが発生する。
・このスイッチングノイズは、基板配線の最適化などによって低減できるが、それでも残るノイズはコモンモードノイズとして入力電源に伝導するため漏出を防ぐ対処が必要。
今回は、実際のスイッチング電源で発生するノイズについて検討します。
スイッチング電源で発生するノイズ
最初に、同期整流型降圧DC/DCコンバータの等価回路を使って、スイッチ電流の経路を確認します。
ハイサイドスイッチをSW1、ローサイドスイッチをSW2とします。SW1がON(SW2はOFF)では、入力コンデンサからSW1、そしてインダクタLを通って出力コンデンサへという電流経路になります。SW2がON(SW1はOFF)では、SW2からLを通り出力コンデンサへという経路になります。そして下の図は、これらの電流経路の差分で、スイッチがON/OFFするたびに赤色のラインの電流は激しく変化します。このループは電流変化が急峻なため、基板配線のインダクタンスによりループ内に高周波のリンギングが生じます。
電源回路を構成する外付け部品および実装基板の寄生成分とリンギングの関係を示します。
先の図で示した電流が急激に変化するループにおける寄生成分を赤色で示してあります。配線には配線インダクタンスがあり、一般に1mmあたり1nH程のインダクタンスが存在します。また、コンデンサには等価直列インダクタンスESLか存在し、MOSFETには各端子間に寄生容量が存在します。これらによって、スイッチノードには赤枠の図に示したような100MHzから300MHzのリンギングが発生します。発生する電流と電圧は、2つの式により求められます。
このリンギングは、高周波のスイッチングノイズとして様々な影響を与えます。当然ながら対策を施すのですが、実装基板の寄生成分は電源IC側では除去することができないので、基板配線レイアウトやデカップリングコンデンサによって対処します。基板レイアウトに関しては、DC/DCコンバータの「基板レイアウト」のセクションで詳細が展開されていますので参考にしてください。
ディファレンシャルモードノイズとコモンモードノイズに関してはこちら、クロストークに関してはこちらで詳細を説明しました。コモンモードフィルタに関しては後ほど説明を予定しています。