この記事のキーポイント
・最新のSiパワーデバイスの特性や特徴を理解して、Siパワーデバイスのカバレッジを再考、拡張していく。
・要求仕様によって、従来のSi半導体とSiCのような新材料によるパワーデバイスを使い分ける。
Tech Webの「基礎知識」に、新しく「パワーデバイス」に関する記事を追加していきます。近年、「パワーデバイス」もしくは「パワー半導体」といった表現で、大電力を低損失で扱うことを目的にしたダイオードやトランジスタといったディスクリート(個別半導体)部品に注目が集まっています。その理由は、世界共通の課題である「省エネルギー化」と「小型化」に対応するために、より高効率で高性能なパワーデバイスが必須になるからです。
ところで、最近耳にする「パワーデバイス」というのは、具体的にどのような定義に基づく分類なのでしょうか?おそらく、明確な分類はないと思いますが、イメージとしては、高電圧高電力のAC/DC変換や電力切り替えを目的としたダイオードやMOSFET、そして電源の出力段としてモジュール化されたパワーモジュールなどが該当すると思います。
ここでは、従来のシリコン半導体をベースにした「シリコン(Si)パワーデバイス」と、Si半導体に比べ損失低減や高温度環境下での動作特性に優れ、次世代の低損失素子として期待されている「シリコンカーバイド(SiC)パワーデバイス」に分けて話を進めていきます。パワーデバイスというと、SiCのような新材料に注目が集まるのは当然ですが、現状において幅広い市場とアプリケーションをカバーしているSiパワーデバイスの性能向上も目を見張るものがあります。現実面では、用途や仕様によって最適なパワーデバイスを利用することになるので、比較的広い意味でのパワーデバイスをカバーしていこうと考えています。
Siパワーデバイス
Siパワーデバイスに関しては、大きく以下の4つに分けて話をしていく予定です。
- Siダイオード
- 分類と特性
- ショットキーバリアダイオード
- ファストリカバリダイオード
- Siトランジスタ
- 分類と特性
- 高耐圧MOSFET
- トランジスタの選択方法
- 選択の流れ
- SOA、定格、温度
- 特徴を生かしたアプリケーション事例

SiのダイオードとMOSFETには非常に多くの種類があり、耐圧や電流のバリエーションも幅広いものがあります。その中で、主に電源用途を念頭に置き、Siダイオードはショットキーバリアダイオードとファストリカバリダイオードをとりあげます。MOSFETは、高耐圧のスーパージャンクションMOSFETを中心にします。
加えて、要求仕様に対してトランジスタを選択する際の手順と判断方法についての説明と、ダイオードやトランジスタがもつ特性や特徴を利用したアプリケーション事例を紹介する予定です。
それぞれに基礎的な内容を含みます。数十ワットの電源であれば、パワーデバイスを内蔵しており、個別にMOSFETを選んだり動作確認をすることは少なくなっています。しかしながら、大電力回路ではディスクリート部品をしっかり使いこなすことが重要になります。今後の記事が、ダイオードやトランジスタの特性や規格値をあらためて確認したり、最新のSiパワーデバイスの特徴や性能を知る機会になればと考えています。