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2020.04.28 SiCパワーデバイス

SiC MOSFETのゲート駆動回路とターンオン・ターンオフ動作

SiC MOSFET:ブリッジ構成におけるゲート-ソース間電圧の挙動

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前回説明したSiC MOSFETのブリッジ構成におけるゲート駆動回路と、そのターンオン・ターンオフ動作に関して説明を進めます。

SiC MOSFETブリッジ構成のゲート駆動回路

LS(ローサイド)側SiC MOSFETの、ターンオン時とターンオフ時のVDSおよびIDの変化の仕方は異なります。この変化によるゲート-ソース電圧(VGS)への影響を考察する場合には、ゲート駆動回路の寄生成分を含めた等価回路を基に考えます。

右の図は、基本となるゲート駆動回路とSiC MOSFETの等価回路です。ゲート駆動回路には、ゲート信号(VG)、SiC MOSFET内部のゲート配線による抵抗(RG_INT)、およびSiC MOSFETのパッケージのソースインタクダンス(LSOURCE)と、ゲート回路パターンのインダクタンス(LTRACE)と外付けゲート抵抗(RG_INT)が存在します。

ゲート駆動回路とSiC-MOSFET等価回路

各電圧と電流の極性は、等価回路図においてゲート電流(IG)およびドレイン電流(ID)の示す方向を正とし、ソース端子を基準としてVGSおよびVDSを定義しています。

なお、SiC MOSFET内部のゲート配線にもインダクタンスは存在しますが、LTRACEに比べ小さいため、ここでは省略しています。

ターンオン・ターンオフ動作

ブリッジ回路におけるターンオン・ターンオフ動作を理解するために、前回示したブリッジ回路の各SiC MOSFETの電圧および電流波形について、その詳細を説明します。以下の波形図は前回と同じものです。前出の等価回路と併せて確認してください。

LS側をONするため、LS側ゲート信号に正のVGが印加されると、ゲート-ソース間容量(CGS)への充電が開始されVGSが上昇し、SiC MOSFETのゲートしきい電圧(VGS(th))以上になるとLSでIDが流れ始め、同時にソースからドレインの向きに流れているHS側のIDが減少を開始します。この時間領域は前回定義したT1(波形図最下部に表示)になります。

MOSFETブリッジ構成同期方式boost回路の電圧・電流波形の例

次にHS側のIDがゼロになり寄生ダイオードがターンオフすると、中間点の電圧(VSW)が降下し始めると同時にHS側のドレイン-ソース間容量(CDS)およびドレイン-ゲート間容量(CGD)への充電が行われます(波形図T2)。このHS側でのCDS+CGDへの充電(LS側は放電)が完了後、LS側のVGSが所定の電圧まで達した時に、LS側のターンオン動作が完了します。

一方、ターンオフ動作はLS側VGがオフすると始まり、LS側のCGSの蓄積電荷が放電を開始しSiC MOSFETのプラトー電圧に達する(ミラー効果領域に入る)と、LS側のVDSが上昇を始め、同時にVSWが上昇します。

この時点ではほとんどの負荷電流はまだLS側に流れている状態(波形図T4)であり、HS側の寄生ダイオードにはまだ転流電流は流れていません。LS側のCDS+CGDへの充電(HS側は放電)が完了すると、VSWが入力電圧(E)を超え、HS側の寄生ダイオードがターンオンし、LS側のIDがHS側に転流し始めます(波形図T5)。

LS側のIDはやがてゼロとなり、デットタイム期間(波形図T6)に入り、HS側MOSFETのゲート信号に正のVGが印加されるとターンオンし、同期動作期間となります(波形図T7)。

この一連のスイッチング動作において、HS側およびLS側のMOSFETのVDSおよびIDの変化に起因して様々なゲート電流が流れ、それが印加信号VGとは違うVGS変化となって現れます。これについては次回説明します。

キーポイント:

・ターンオン時とターンオフ時のVDSおよびIDの変化の仕方は異なる。

・この変化によるVGSへの影響の考察には、ゲート駆動回路の寄生成分を含めた等価回路を基に考える。

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