電気回路設計|基礎編
キルヒホッフの法則
2024.09.30
キルヒホッフの法則は、電気回路の解析におけるもっとも基本的かつ不可欠な原則です。キルヒホッフの電流法則(KCL)とも呼ばれる第一法則とキルヒホッフの電圧法則(KVL)と呼ばれる第二法則があります。キルヒホッフの電流法則は、回路の任意の接点で、流入する電流の合計が流出する電流の合計に等しいという原則に基づいています。一方、キルヒホッフの電圧法則は、閉回路を一周する電圧の総和がゼロになるという原則です。これらの法則を適用することで、複雑な回路の電流や電圧の分布を理解し、効率的に解析することが可能になります。
本記事では、キルヒホッフの法則の理論的な背景から、実際の回路問題への応用、さらにはオームの法則との関連性に至るまで、キルヒホッフの法則の全容を紹介していきます。電気回路を学ぶ上で不可欠なキルヒホッフの法則をマスターし、その強力な解析力を自分のものにしていきましょう。
キルヒホッフの法則と電気回路の基本
キルヒホッフの第一法則と第二法則の概要
キルヒホッフの法則は、電気回路の解析において基本的かつ不可欠な原則です。この法則は二つの重要な部分、すなわちキルヒホッフの電流法則(KCL:Kirchhoff’s Current Law)と電圧法則(KVL:Kirchhoff’s Voltage Law)から成り立っています。
キルヒホッフの電流法則(KCL)
キルヒホッフの第一法則、又は電流法則は、ある接点(節点)に流れ込む電流の総和は、その接点から流れ出る電流の総和と等しいという原則です。数学的には以下のように表されます。
\(\sum I_{in}=\sum I_{out}\)
この法則は、電荷が回路の節点に蓄積されないことを示しています。
キルヒホッフの電圧法則(KVL)
キルヒホッフの第二法則、または電圧法則は、閉回路を一周する際の電圧の総和はゼロになるという原則です。これはエネルギー保存の法則に基づいており、以下のように表現されます。
\(\sum{V=0}\)
この法則は、電圧降下と起電力の和が均衡を保つことを意味します。
閉回路と開回路の違い
電気回路の解析において、閉回路と開回路の概念は非常に重要です。特に、キルヒホッフの法則を適用する際には、回路が閉じているかどうかを識別することが重要です。

閉回路
閉回路は、電流が一連の導体を通って電源に戻る経路が完全に形成されている回路、つまり電源から始まり、一連の電気的要素(抵抗、コンデンサ、インダクタなど)を通過し、再び電源に戻る経路を指します。キルヒホッフの法則は、このような閉回路に適用されます。閉回路では、電流は連続的に流れ、電圧の降下は回路内の各要素に分散されます。
閉回路の概念は電気回路の設計と解析において中心的です。電源、抵抗器、その他の電気的要素の正確な挙動を理解し、予測するためには、これらの要素が形成する閉回路内での電流と電圧の関係を把握する必要があります。また、閉回路は回路の性能を評価し、問題を診断する際にも重要な役割を果たします。
開回路
開回路は、導体の途中で断たれているため、電流が流れる完全な経路が存在しない回路です。これは、スイッチがオフになっている、回路が物理的に切断されている、または何らかの断絶が存在することによって引き起こされます。
キルヒホッフの法則は、開回路に直接適用することはできませんが、開回路を含むシステムの分析において重要な役割を果たします。これは、回路が正しく機能していない場合や、設計段階で意図的に開回路を利用する場合に不可欠です。故障分析やトラブルシューティングでは、開回路が問題の原因である可能性が高く、診断プロセスにおいて重要な役割を果たします。また、開回路の概念は、スイッチ制御回路や一時的な回路遮断の設計にも適用されます。
電圧と電流の測定におけるキルヒホッフの法則の役割
電圧測定の基礎とキルヒホッフの法則の適用
電圧測定は電気回路の重要な要素であり、キルヒホッフの法則はこのプロセスにおいて中心的な役割を果たします。
電圧測定の基本
電圧測定は、回路の二点間の電位差を測定することです。この測定は、一般に電圧計(ボルトメーター)を使用して行われます。測定時、電圧計は測定したい二点間に並列に接続されるべきです。

キルヒホッフの電圧法則(KVL)の適用
キルヒホッフの電圧法則(KVL)は、閉回路を一周する際の電圧の総和がゼロになるという原則です。この法則により、回路内の任意のループにおける電圧の測定や計算が可能になります。
\(\sum{V=0}\)
電圧測定においては、KVLを使用して、未知の電圧を測定点間の既知の電圧降下から計算することができます。
電流の測定方法と回路解析の重要性
電流の測定と回路解析は、回路の性能と安全性を評価する上で重要です。
電流測定の方法
電流の測定は、回路の特定の部分を流れる電流の強さを測定するプロセスです。これは一般にアンペアメーターを使用して行われ、測定したい点に直列に接続します。
キルヒホッフの電流法則(KCL)と回路解析
キルヒホッフの電流法則(KCL)は、ある節点に流入する電流の合計が流出する電流の合計に等しいという原則です。
\(\sum I_{in}=\sum I_{out}\)
この法則により、回路の任意の点での電流の分布を分析し、電流測定の結果を解釈することができます。KCLを適用することで、電流の分布を理解し、回路の機能的な側面を評価することが可能になります。
回路解析における連立方程式の応用
キルヒホッフの法則を用いた連立方程式の設定
キルヒホッフの法則を使用して回路解析を行う際、連立方程式の設定は非常に重要です。
連立方程式の設定のプロセス
- 回路の識別:回路内のすべての節点(接点)とループ(閉回路)を識別します。
- キルヒホッフの電流法則(KCL)の適用:各節点において、流入する電流の合計が流出する電流の合計に等しいという方程式を設定します。
\(\sum I_{in}=\sum I_{out}\) - キルヒホッフの電圧法則(KVL)の適用:各ループにおいて、ループ内の電圧の総和がゼロになるという方程式を設定します。
\(\sum{V=0}\) - 方程式の解決:得られた方程式のシステムを解いて、未知の電流や電圧を求めます。
実際の回路問題における解法の例
実際の回路問題にキルヒホッフの法則を適用する例を通じて、理論の具体的な応用を示します。
例えば、単純な直列回路において、異なる抵抗値の抵抗器が接続されているとします。この回路での各抵抗器にかかる電圧を求めるためには、以下のステップに従います。
- KVLの適用:回路全体に適用されるKVLの方程式を設定します。
\(V_{source}=V_1+V_2+\ldots+V_n\)
ここで、\(V_{source}\)は電源の電圧、\(V_1,V_2,…,V_n\)は各抵抗器にかかる電圧です。 - オームの法則の適用:各抵抗器にオームの法則を適用して電圧を求めます。
\(V_i=I\times R_i\)
ここで、\(I\)は回路の電流、\(Ri\)は各抵抗器の抵抗値です。 - 方程式の解決:これらの方程式を解いて、各抵抗器にかかる電圧を求めます。
電気理論との関連性:オームの法則とキルヒホッフの法則
オームの法則とキルヒホッフの法則の統合
オームの法則とキルヒホッフの法則は、電気回路の解析において互いに補完し合います。
オームの法則
オームの法則は、導体における電圧(\(V\))と電流(\(I\))との関係を表します。この法則は以下の式で表されます。
\(V=I×R\)
ここで、\(R\)は抵抗の値です。
キルヒホッフの法則との統合
キルヒホッフの法則とオームの法則を組み合わせることで、回路内の電圧と電流のより複雑な関係を解析することが可能になります。特に、キルヒホッフの電圧法則(KVL)と電流法則(KCL)は、オームの法則と組み合わされることで、回路内の未知の電圧や電流を求める際に役立ちます。
直流回路と交流回路における理論の適用
直流回路(DC)と交流回路(AC)では、これらの理論の適用方法が異なります。
直流回路(DC)における適用
直流回路では、電流は一定の方向で流れ、電圧も一定です。オームの法則とキルヒホッフの法則は、直流回路の解析に直接適用され、回路内の各部品にかかる電圧や流れる電流を計算するのに使用されます。
交流回路(AC)における適用
交流回路では、電圧と電流が時間とともに変化します。このため、オームの法則とキルヒホッフの法則を適用する際には、交流の特性を考慮する必要があります。特に、位相差や交流の周波数が重要な役割を果たします。
キルヒホッフの法則の実践例と計算方法
具体的な計算例とステップバイステップの解説
キルヒホッフの法則を使用した具体的な計算例をステップバイステップで解説します。
計算例
例として、3つの抵抗器が含まれる単純な回路を考えます。抵抗器\(R_1\)、\(R_2\)、\(R_3\)が直列に接続されており、電源\(Vs\)がこの回路に接続されています。各抵抗器にかかる電圧を求めることが目的です。

1.回路の分析:まず、回路を観察し、各要素を特定します。
- ・電源(電圧:\(Vs\))
- ・抵抗器1(抵抗値:\(R_1\))
- ・抵抗器2(抵抗値:\(R_2\))
- ・抵抗器3(抵抗値:\(R_3\))
2.キルヒホッフの電圧法則(KVL)の適用: 閉回路における電圧の合計はゼロです。
\(V_S=V_1+V_2+V_3\)
ここで、\(Vs\) は電源の電圧、\(V_1\),\(V_2\),\(V_3\) はそれぞれ抵抗器 \(R_1\)、\(R_2\)、\(R_3\) にかかる電圧です。
3.オームの法則の適用: 各抵抗器にオームの法則を適用します。
\(V_i=I\times R_i\)
4.計算: 電源電圧と各抵抗値を用いて、各抵抗器にかかる電圧を計算します。
オームの法則により、各抵抗器にかかる電圧は以下のように計算できます。
・ \(V_1=I×R_1\)
・ \(V_2=I×R_2\)
・ \(V_3=I×R_3\)
ここで \(I\) は回路を流れる電流です。
5.方程式の整理
これらをキルヒホッフの電圧法則の方程式に代入すると、
\(V_S=I×R_1+I×R_2+I×R_3\)
となります。この方程式は、直列回路の電圧降下が電源の電圧と等しいことを示しています。
難解な問題へのキルヒホッフの法則の適用
より複雑な回路にキルヒホッフの法則を適用する方法を説明します。

難解な問題の例
複数の電源と抵抗器が含まれる回路を考えます。
- ・電源1(電圧:\(Vs1\))
- ・電源1(電圧:\(Vs2\))
- ・抵抗器1(抵抗値:\(R1\))
- ・抵抗器2(抵抗値:\(R2\))
- ・抵抗器3(抵抗値:\(R3\))
回路は以下のように接続されています:
- ・\(Vs1\) と \(R1\) が直列に接続されています。
- ・\(R2\) がこの組み合わせと平行に接続されています。
- ・この並列回路全体が \(R3\) と直列に接続されています。
- ・最後に \(Vs2\) が \(R3\) の後に接続されています。
回路の数式化
以下の式が成立します。
- ・閉回路1(\(Vs1\), \(R1\), \(R2\)を含む):\(Vs1−I1⋅R1−I2⋅R2=0\)
- ・閉回路2(\(Vs1\), \(Vs2\), \(R3\)を含む):\(Vs1−I1⋅R1−I3⋅R3−Vs2=0\)
- ・閉回路3(\(Vs2\), \(R2\), \(R3\)を含む):\(Vs2−I2⋅R2−I3⋅R3=0\)
ここで、\(I1\), \(I2\), \(I3\) はそれぞれの回路部分を流れる電流です。
このような回路では、以下のステップに従って解析を進めます。
- 回路の要素の識別:すべての電源、抵抗器、節点、閉回路を特定します。
- キルヒホッフの法則の適用:閉回路ごとにKVLを適用し、節点ごとにKCLを適用します。
- 連立方程式の設定:得られた方程式を一緒に解くための連立方程式を設定します。
- 計算:方程式を解いて、未知の電流や電圧を求めます。
電位差と起電力:キルヒホッフの法則の拡張
電位差とは何か?キルヒホッフの法則との関連
電位差は電気回路の基本概念であり、キルヒホッフの法則と深く関連しています。
電位差の定義
電位差は、二つの点間の電位(電気的エネルギーのレベル)の差です。これは、電荷が一点から別の点へ移動する際に必要な仕事の量を示し、ボルト(\(V\))で測定されます。数式で表すと、電位差\(V\) は次のようになります。単位はボルト(\(V\))で表され、以下の式で表すことができます。
\(V=W/Q\)
ここで、\(V\)は電位差、\(W\)は仕事、\(Q\)は電荷です。
電位差とキルヒホッフの法則の関連
電位差の概念は、キルヒホッフの法則を適用して回路内の電圧分布を理解するために不可欠です。例えば、複数の電源と抵抗器を含む回路において、キルヒホッフの法則を用いて各部分にかかる電位差を決定できます。これにより、電源の電位差が回路内のどのように分配されるかを正確に把握することができます。
起電力とキルヒホッフの法則の統合理解
起電力は電源が生成する電位差であり、キルヒホッフの法則と組み合わせて理解することが重要です。
起電力の定義
起電力(EMF:Electromotive Force)は、電源(例えば電池や発電機)が回路に提供するエネルギーによって生じる電位差です。これは、電源が回路に供給するエネルギーの能力を表し、ボルト(\(V\))で測定されます。起電力は、電源がつくる電場によって電荷が移動することで生じます。
キルヒホッフの電圧法則との統合
起電力とキルヒホッフの法則の統合は、電源から供給されるエネルギーと回路内のさまざまな要素(抵抗器、コンデンサなど)によるエネルギー消費がどのように相互作用するかを理解するのに役立ちます。回路の各部分での電圧降下(負荷によるエネルギー消費)は、電源による起電力によってバランスされます。この理解は、電気回路の設計、解析、及びトラブルシューティングにおいて非常に重要です。
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