電気回路設計|基礎編
テブナンの定理とは?:直流回路の回路解析
2025.08.29
テブナンの定理(Thevenin’s theorem)は、線形回路(抵抗や電源、従属電源などの線形要素で構成される回路)の任意の2端子部分を「1つの電圧源(VTh)と1つの抵抗(RTh)の直列回路」に置き換えられる、とする定理です。例えば複数の抵抗と電源が含まれる複雑な直流回路でも、テブナンの定理を用いてテブナン等価回路に変換することで、負荷に流れる電流や端子電圧を簡単に求められるようになります。テブナンの定理を使うと計算のステップ数を簡単に減らせるため、普段のスイッチ回路や電源回路でも、その原理を知っていれば応用がしやすく、学習や実務において活用されています。ここからは、テブナンの定理の基本要素や導入方法、証明に至る考え方、そして具体的な使い方と計算手順などを段階的にわかりやすく解説していきます。
テブナンの定理の概要
まずテブナンの定理は、線形回路の重ね合わせ原理を背景としており、直流回路だけでなく交流回路にも適用可能です(抵抗をインピーダンスに置き換えて考えます)。テブナンの定理は、抵抗・独立電源・従属電源などで構成された「線形回路」において、2端子間の電圧と電流の関係が一次(直線)関係となる事実を根拠とし、これを簡易的な証明の骨子としています。したがって、ダイオードやトランジスタなどの非線形素子が回路に含まれる場合は、原則としてそのまま適用できません。例えば、抵抗が多く入った配線網でも、テブナンの等価電源(テブナン電圧)とテブナン抵抗を求めてしまえば、負荷に流れる電流が簡単に求められます。以下では、この定理がどのように位置づけられているのかを確認します。

テブナンの定理の主要要素
テブナンの定理を学ぶうえで、テブナン電圧(VTh)とテブナン抵抗(RTh)とは何かを理解することが重要です。これら2つの要素は、「複雑な回路を、1つの電圧源と1つの直列抵抗にまとめる」際の核となる部分です。開放電圧を調べ、独立した電源を除去して合成抵抗を求めれば、最後に負荷を接続したときの電流や電圧を簡単に導き出せます。以下では、テブナン電圧・テブナン抵抗と、負荷抵抗を含めた回路解析について整理します。
開放電圧:テブナン電圧(VTh)とは?

テブナン電圧(VTh)は、テブナンの定理による等価回路において「1つの電圧源」として表される値です。通常は、注目する2つの端子を開放(負荷抵抗を外して無負荷に)した状態で、その2端子間に生じる電圧を測定・計算するとVThが得られます。ただし、従属電源のみが含まれる場合は開放電圧がゼロになることもあるため、必要に応じてテスト電源法などを用いて正しいVThを求めることがあります。具体的には、負荷抵抗を外し、その2端子を開放したときに生じる開放電圧がテブナン電圧になります。求め方としては、以下の手順があります。
- 負荷抵抗など外部回路を取り外す
- 2端子間以外はそのままで、注目している負荷を外す
- 電圧や抵抗がそのまま残った状態で、外した2端子の間の開放電圧をオームの法則やキルヒホッフの法則などで求める
このように、負荷を外した状態でも2端子間に生じる電圧がVThという形で得られ、これがテブナン等価回路の「1つの電圧源」に対応します。
複数の電源が直列・並列になっている回路でも、観測している2端子だけを見れば一定の電圧が測定できる場合があります。線形の回路であれば、重ね合わせの理や単純な電圧分圧などを使って計算することが可能です。また、「開放電圧を探す」という素直なアプローチに従うことで、元が複雑な回路でも理解が進みやすくなります。
テブナン抵抗(RTh)の求め方

テブナン抵抗(RTh)は、テブナン電圧(VTh)と並ぶ重要なパラメーターで、外部から見た回路の抵抗成分を要約したものです。独立電源のみがある場合は「理想電圧源→短絡、理想電流源→開放」として残った抵抗を直列・並列で合成すれば得られます。ただし、回路に従属電源のみが含まれる場合などは、2端子間にテスト電源を加え、その電圧・電流比からRThを導出する必要があります。
言い換えれば、RThは回路内部に存在する抵抗要素がどのように接続されているかを要約し、外部端子から見たときの合成抵抗を表すものです。
以下は、一般的な線形回路の理論に基づく代表的なステップで、RThの回路理論の標準的な考え方は以下のとおりです。
- 独立電源を除去する
- 理想電圧源 → 短絡(ショート)
- 理想電流源 → 開放(オープン)
これにより、独立電源が抵抗値に影響を与えない形へ回路を変換します。
ただし、従属電源(電圧制御・電流制御など)がある場合はそのまま残し、テスト電源法(例:テスト電圧源を接続して流れる電流を計測し、R = V / Iで算出)などで抵抗値を導き出します。
- 2端子間に見える抵抗値を把握する
- 回路に残った抵抗素子を、直列・並列などで合成して求める場合が多いです。
- 従属電源を含む場合は、テスト電源法などを使って、2端子間の合成抵抗であるRThを特定します。
こうして得られるRThは、回路に含まれるすべての抵抗がどう組み合わさって外部から見えるのかを統合した値といえます。たとえ回路内部が複雑でも、理想電圧源を短絡扱いするなどの手順を踏むことで、直列・並列の簡潔な形に落とし込むことが可能です。結果的に、RThという一つの抵抗値で、回路全体の抵抗の組み合わせを要約できるようになります。
テブナン等価回路での電流・電圧の求め方(負荷接続時)
VThとRThが得られたら、あとは負荷抵抗(RL)との直列回路として簡単に扱うだけで良いので、回路全体の解析が大幅に楽になります。一般的には以下の式で表せます。
\(I_L=\displaystyle \frac{V_{Th}}{R_{Th}+R_L}\)
\(V_L=I_L×R_L\)
ここでILは負荷抵抗に流れる電流、VLは負荷抵抗にかかる電圧です。元の回路は複雑だったとしても、(線形回路であれば)テブナン等価回路としてVThとRThを特定した後は、上記のように非常に簡単に負荷の電流や電圧を求められます。これは計算の負担を減らすだけでなく、「大きな1つの電源+1つの抵抗」とみなせるのでイメージもしやすくなります。

テブナンの定理を使った解析の手順
テブナンの定理を実際の回路に適用する際には、基本的な手順を正しく踏むことが重要です。まずはどの2端子を解析対象として切り出すかを決め、その2端子間の開放電圧(テブナン電圧)や合成抵抗(テブナン抵抗)を求める流れを理解しておけば、複雑そうに見える直流回路の解析も飛躍的にわかりやすくなります。
ただし、回路構成や端子の選び方によって、解析の具体的な進め方が変わる場合があります。例えば、従属電源の取り扱い方や回路の特定部分をどのように「見えなく」するかなど、開放電圧や等価抵抗の計算手順が変化することがあるため、一概に「どの端子を選んでも手順が全く同じ」とは言い切れません。
それでも、テブナンの定理が示す本質的な手順は変わりません。
- 2端子を開放したときの電圧(テブナン電圧)を求める
- 独立電源がある場合は、理想電圧源を短絡・理想電流源を開放し、2端子間の合成抵抗(テブナン抵抗)を求める
- 従属電源が含まれている場合は、そのまま回路に残し、テスト電源法などで合成抵抗を算出する。
このステップを踏むことで、外部から見たときに回路がどのような単一電圧源+直列抵抗で等価化できるのかを把握できます。
以下では、その実際的な手順や数値例題を通じて、テブナンの定理を活用する流れを説明します。端子の選び方で解析対象となるサブ回路が変わるため、具体的な手計算やシミュレーションを行う際は、ステップごとに回路の変化を慎重に追ってください。
線形回路の場合の前提とポイント
テブナンの定理は、理論上は「非線形素子を含まない(又は含んでも線形動作領域に限定できる)回路」に適用されるものです。したがって、ダイオードやトランジスタなどの非線形素子を含む回路には厳密には適用できません。ただし、一部の実務や解析では「動作点付近で小信号モデルによる線形化」を行い、近似的にテブナン等価回路を用いるケースがあります。しかしこれは原理的な適用範囲を超えた“近似”であり、テブナンの定理そのものが非線形回路に直接適用されるわけではありません。
直流回路であれば、コイルやコンデンサが定常状態で短絡・開放扱いになるケースも多く、テブナンの定理を適用しやすくなります。例えば、定常状態ならコンデンサは開放、コイルは導線とみなせるため、抵抗と電源だけを意識すれば済むので、手順が整理しやすいのです。ただし、過渡現象や交流成分を考慮すべき場合には、テブナンの定理の適用範囲を理解する必要があります。
テブナンの定理の解析手順のまとめ
テブナンの定理では、任意の線形回路を「テブナン電圧(VTh)」と「テブナン抵抗(RTh)」の直列接続に置き換えて考えられます。これにより、回路が複雑でも、外部から見た電圧・電流特性を簡単に扱えるようになります。
一般的な解析フローは次のとおりです。ただし、回路中に従属電源が含まれる場合や、特殊な回路構成になっている場合は、以下のステップをそのまま適用できないことがありますので注意してください。
- 回路の2端子を決定する
- 負荷や測定対象など、どこを等価化したいかを明確にします。
- 負荷を外し、その2端子間の開放電圧(VOC)を求める
- 多くの場合、この開放電圧がテブナン電圧(VTh)に相当します。
- しかし、従属電源や回路構成によっては、単純に負荷を外しただけでは正しくVThを求められない場合があります。必要に応じてテスト電源を挿入して電圧・電流を計算するなどの追加手順を踏むこともあります。
- 回路内の独立電源を除去し、2端子間の合成抵抗(RTh)を求める
- 理想電圧源→短絡(ショート扱い)
- 理想電流源→開放扱い(オープン扱い)
- 従属電源がある場合はそのまま残し、テスト電源法などで抵抗を算出します。
- 得られたVThとRThを直列接続した等価回路として描く
- このとき、外部から見た回路は「理想電圧源VTh」と「抵抗RTh」の直列回路として扱えます。
- 外した負荷抵抗(RL)を再接続し、単純な直列回路として計算する
- あとは、通常の直列回路解析を行い、電流や端子電圧を求めます。

要点と注意事項
- 開放電圧がそのままテブナン電圧となるケースが多い
- 独立電源のみで構成された回路であれば、負荷を外したときの端子間電圧(VOC)がそのままテブナン電圧(VTh)となります。
- 従属電源や特殊回路がある場合の注意
- 回路によっては、単に負荷を外した状態の電圧をそのままVThとみなせない場合があります。
- その場合は、テスト電源を端子に接続して電流や電圧を解析し、正しくVThを求める必要があります。
- 抵抗の合成(RTh)
- 独立電源を除去(電圧源→短絡、電流源→開放)した上で、残った抵抗を直列・並列に合成して求めます。
- 従属電源が含まれる場合はテスト電源法を用いるのが一般的です。
以上の手順を正確に踏むことで、テブナンの定理に基づく等価回路を得られます。特に、回路の性質によっては開放電圧がそのままテブナン電圧と一致しないケースもある点に留意しつつ、状況に応じて最適な方法でVThとRThを求めることが大切です。
多数の抵抗がある具体例
ここで具体的な直流回路を1つ挙げ、テブナンの定理による簡略化を例示します。例えば以下のような設定を考えます。
- 電源:直流12V
- 抵抗:R1=6Ω、R2=3Ω、R3=2Ω
- 接続:電源の+側から順にR1を通り、その先でR2とR3が並列接続でグラウンド側へ。さらに、ノードA(R1出力側)からグラウンドに対して負荷抵抗RLを取り外し可能な形で接続する
文章だけだとイメージしにくいですが、要点としては「R1の後にR2とR3の並列があり、常時グラウンドに接続されているところに負荷RLを並列に追加できる」構造を考える、ということです。
ここで、負荷RLを取り外した2端子の開放電圧(ノードA-GND間電圧)を求めると、並列にあるR2,R3がグラウンドへつながっているため、電流は
\(I_L=\displaystyle \frac{12V}{R_1+(R_2\|R_3)}\)
となり、ノードAの電圧は分圧で決まります。実際に
\(R_2\|R_3=\displaystyle \frac{3×2}{3+2}=1.2Ω\)
\(I_L=\displaystyle \frac{12}{6+1.2}=\displaystyle \frac{12}{7.2}≈1.6667A\)
\(V_{Th}=I_L×(R_2\|R_3)=2.0V\)
と求まります。
次に電源を短絡扱いして、合成抵抗を求めるときにR1や並列R2,R3の組み合わせを確認してRThを計算します(従属電源がなければ、直列・並列の公式で簡単に合成できる場合がほとんど)。このようにして、
\(R_{Th}=R_1\|R_2\|R_3=1Ω\)
よって、まとめると
VTh = 2V, RTh = 1Ω
というテブナン等価回路にまとめられます。最後に、負荷RLを元に戻して、直列回路として
\(I_L=\displaystyle \frac{V_{Th}}{R_{Th}+R_L}=\displaystyle \frac{2}{1+R_L}\)
という式で電流を求められるので、負荷抵抗に流れる電流の値が簡単に出せます。

テブナンの定理と最大電力移動
テブナンの定理で等価回路を得たら、しばしば「負荷に供給できる電力を最大化したい」という視点も出てきます。これが最大電力移動の定理で、テブナン定理と並行して語られることが多いです。これは計算の負担を減らすだけでなく、「大きな1つの電源+1つの抵抗」とみなせるのでイメージもしやすくなります。さらに、負荷抵抗をRThに等しく設定したときに負荷電力が最大になる(最大電力伝達)という重要な設計指針にも繋がります。
最大電力移動の概要
最大電力移動の定理は、負荷抵抗RLがテブナン抵抗RThと等しいとき、負荷が受け取る電力が最大になる、というものです。テブナン等価回路を思い浮かべると、
\(P_L=I_L^2 R_L=\left(\displaystyle \frac{V_{Th}}{R_{Th}+R_L}\right)^2 R_L\)
を最大化する条件が
\(R_L=R_{Th}\)
である、という形になります。これはオーディオアンプやアンテナ設計などで、負荷と内部抵抗を合わせると効率よく電力を負荷側へ伝達できる、という考えに直結します。

実際の応用と注意点
最大電力移動を狙うときは、負荷側の電力を大きくできる一方で、回路全体の電流や電力損失も増加します。実際の設計現場では、条件や効率、熱設計、部品の許容範囲を考慮しつつ、理想的なRTh = RLに合わせるかどうかを検討します。ただし回路理論を理解するうえでは、テブナン抵抗がどのように負荷側に影響するかを把握するために非常に有用な概念です。
テブナンの定理と他の回路理論との関係
電気回路理論を広く眺めると、テブナンの定理は決して単独で存在しているわけではありません。ノートンの定理はテブナンの定理の表裏の関係にあり、重ね合わせの理やキルヒホッフの法則(KCL/KVL)などの基本原理と組み合わせて使われることも多いです。ここでは、他の代表的な理論とテブナンの定理がどう関連しているかを確認します。
ノートンの定理
ノートンの定理は、「任意の線形回路を、1つの電流源と1つの並列抵抗で等価表現できる」という主張です。テブナンが「電圧源+直列抵抗」であるのに対し、ノートンは「電流源+並列抵抗」となります。2つの定理は次式で表される関係によって相互に変換可能です。
\(I_N=\displaystyle \frac{V_{Th}}{R_{Th}}\)
つまり、もしテブナン等価回路のVThとRThが分かれば、電源をINという電流源に置き換えて、RThと並列につなぐ形に変換できるわけです。どちらの形式が扱いやすいかは、回路の分岐の仕方や設計者の好みに左右されます。
ノートン等価回路への変換
既にテブナン等価回路がわかっている場合、そこからノートン等価回路へ変換するのは簡単です。例えば、以下のようなテブナン等価回路があるとします。
VThと直列のRTh
これをノートン形式(電流源INと並列のRN)に変換するには、まず
\(I_N=\displaystyle \frac{V_{Th}}{R_{Th}}\)
を計算します。次に、RThと同じ値の抵抗RNを電流源INに並列接続するだけで完成です。多数の負荷が並列に接続される回路を扱う際には、ノートン形式が有利になる場合があります。

重ね合わせの理やキルヒホッフの法則
テブナンの定理は、電気回路の分析において、重ね合わせの理やキルヒホッフの法則(KCL/KVL)と密接に関係しあう手法です。これらはそれぞれ独立した基本原理ではありますが、回路解析では相互に補完しあい、切り離せない形で利用されることが多いといえます。
- 重ね合わせの理
複数の独立電源をそれぞれ単独で作用させたときの応答を足し合わせれば、回路全体の応答を得られるという線形回路特有の性質を活用します。 - キルヒホッフの法則(KCL/KVL)
KCL(電流則):回路の任意の節点に流入する電流の総和と流出する電流の総和は等しい
KVL(電圧則):任意の閉ループ内の電圧上昇と電圧降下を合計するとゼロになる
テブナンの定理を使う際には、開放電圧の算出で重ね合わせの理を応用したり、独立電源を除去後の抵抗合成でKCLやKVLを活用する場面が頻繁に登場します。これらの基本法則によって回路内の電圧や電流を整理したうえで、最終的に「1つの電源+1つの抵抗」という形に要約するのがテブナンの定理のアプローチです。
テブナンの定理の具体的な活用例(DC回路)
テブナンの定理が実際の回路設計や解析でどのように使われるのかを知ると、理解がいっそう深まります。電源回路やセンサ回路、モーターやヒーターの駆動回路などで、複雑な部分を簡単に捉えられるメリットがあります。以下では、直流に焦点を当てた数例を挙げます。

電源回路での負荷変動解析
電源ユニットにさまざまな抵抗値やデバイスを接続し、それによって電圧や電流がどう変化するか調べたいとき、電源内部の構成が複雑でも、2端子のみを見ればテブナン等価回路にできる場合が多いです。すると、負荷をいくつ変えてもVThとRThが一定なら、負荷電流や端子電圧は簡単に計算できます。電源設計の確認や評価がスムーズに行える利点があります。
センサ回路・アクチュエータ回路の簡略化
一部のセンサやアクチュエータ(例:抵抗変化型、2線式など)は、2端子デバイスとして扱える場合があり、その場合はテブナン等価回路を用いて入出力特性を簡単にモデル化できます。一方で、多端子を備えた複雑なセンサ(例:超音波センサ、IC内蔵タイプ)には複数の信号線や電源ラインが必要で、必ずしも2端子でモデル化できるわけではありません。実際の設計では、各センサの内部構造や端子数に応じて解析方法を選択する必要があります。
DCモーターやヒーターの駆動回路
DCモーターやヒーターは一見単純ですが、温度や回転数などで負荷特性が変わります。それでも、特定の動作点近辺なら内部を「等価電源+直列抵抗」の形に近似し、負荷条件に応じてどの程度の電流が流れるか計算できます。モーターが非線形であっても、ある範囲ならテブナン近似が有効な場合があります。
テブナンの定理を確実に運用するうえでのポイント
テブナンの定理による解析は回路を大幅に単純化しますが、実際の回路には従属電源や非線形素子、寄生要素などが混在することもあります。どこまで理想化してよいか、あるいは補正が必要かを誤ると、理論値から大きくずれる恐れがあります。ここでは、テブナンの定理を使ううえで意識しておくべき点をまとめます。
従属電源の扱い
回路によっては、電圧制御電流源や電圧制御電圧源などの従属電源を含むことがあります。この場合、単純に「独立電圧源を短絡」「独立電流源を開放」するだけではRThを求められないケースが出ます。そこでよく使われるのが「テスト電源法」です。2端子間に仮想の電圧源(又は電流源)を挿入し、そのときの電流(又は電圧)を解析して比からRThを導き出します。
- テスト電圧Vtestを加えたときの電流Itest
- そこからRTh = Vtest / Itest
という要領です。回路が線形性を保っていれば、従属電源があっても正しく合成抵抗を求められます。
過渡現象や高周波領域
テブナンの定理はACや過渡解析にも応用が可能ですが、コイルやコンデンサといった周波数依存の素子がある場合は、それらのインピーダンスや位相を考慮する必要があります。また、高周波になれば寄生容量や寄生インダクタも無視できなくなるため、単純な「抵抗」という1つの値では表しきれません。よって、交流やsドメイン解析では、テブナン抵抗をリアクタンスなどを含む「テブナンインピーダンス」に拡張して扱う必要があります。
直流範囲であればこれらを考えなくても済むので、テブナンの定理は簡単に適用できます。ただし、モーターのように時間変化する負荷を扱う場合などは、目的に応じてどの程度理想化してよいかを慎重に判断しなければなりません。

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テブナンの定理の限界
テブナンの定理は解析を簡単にするうえで非常に有力ですが、以下のような場面でそのまま適用できないか、あるいは追加の処理を要することがあります。
- 非線形素子・領域
- ダイオードやトランジスタなどの強い非線形要素を含む回路には、テブナンの定理をそのまま適用できません。
- テブナンの定理は線形回路に対して成り立つ定理なので、非線形素子を含む場合には小信号近似や別の解析法(例:大信号解析、SPICEシミュレーションなど)を用いる必要があります。
- 周波数依存要素
- 抵抗だけでなく、インダクタやコンデンサなどのリアクタンスが問題になる高周波領域や過渡解析では、テブナンの定理の適用自体は可能でも、リアクタンスを無視できるとは限りません。
- 高周波回路や過渡現象を扱う際には、インピーダンスの周波数依存や寄生成分を考慮する必要があります。
- スイッチング回路や動的切り替え
- トポロジが一定でない回路(PWMなど)や、時間とともに回路構成が変わるようなケースでは、1つのテブナン等価回路で表しにくい場合があります。
- 必要に応じて、動作状態ごとに等価回路を切り替えて解析するなどの工夫が求められます。
- 従属電源
- テスト電源法で対応可能ですが、制御関係が複雑だと計算プロセスや理論の前提が煩雑になることがあります。
- ただし、あくまで回路が線形であることが前提であり、非線形制御素子を含む場合は1.と同様の注意が必要です。
- 実測誤差や許容誤差
- 理論上の VThやRThと、実際に測定した値が常に完全に一致するわけではありません。
- 回路部品の製造誤差や配線抵抗、測定機器の精度、温度変化などの影響で理論値と実測値にズレが生じる可能性があります。
- 実用上は、これらの誤差要因を見込んだうえでテブナン等価回路を使うか、必要なら補正を行います。
とはいえ、テブナンの定理は回路解析の基盤的な考え方として依然として有力です。非線形性や時間変化、高周波での挙動を踏まえつつ、テブナンの定理をどこまで使えるかを見極めれば、大いに役立ちます。
実測とのすり合わせ
紙上やシミュレーションで求めたテブナン等価回路が、実測すると多少異なるのはよくあることです。部品の誤差や配線抵抗、接触抵抗、寄生要素などが影響します。実際の測定を踏まえて「この回路のテブナン電圧は約11.8V、テブナン抵抗は3.1Ω程度」といった形で補正すると、より現実に即した設計や解析が行えます。
テブナンの定理のまとめ
テブナンの定理は、線形回路の解析を簡単にするうえで広く知られた強力な手法です。多数の抵抗や電源(独立・依存を問わず)が絡む回路でも、2端子の視点を持つことで「テブナン電圧VThとテブナン抵抗RThが直列接続された等価回路」に置き換えられます。この考え方は直流だけでなく、インピーダンスを使うことで交流回路にも適用可能です。
その結果、負荷を変更したり、電流や電圧を再計算するときも簡単に式で求められるようになります。
また、最大電力移動の定理を検討するときにも、テブナン等価回路がよく活用されます。具体的には、外部負荷から見た回路を「電圧源+直列抵抗」という形で捉えると、負荷抵抗をいくつに設定したときに最も多くの電力が供給されるかを簡明に議論できるからです。実際の回路設計やトラブルシューティングの現場でも、「複雑に見える回路をどこで切り出すか」が大きなポイントですが、テブナンの定理を用いて2端子を明確にすることで、全体像を簡単に把握できるようになります。
ノートンの定理や重ね合わせの理、キルヒホッフの法則など、他の回路理論と組み合わさることで、より多くの問題に対応しやすくなるのも魅力です。直流解析に限定すれば特に導入しやすく、抵抗のみの回路であれば式の導出も比較的スムーズに行えます。高周波や非線形素子への応用には追加の工夫が求められますが、根本は「2端子間の挙動を、1つの電源と1つの抵抗に要約できる」という点です。
複数の要素を都度ひもとくことなく、頭の中で「テブナン等価回路」としてまとめておけると、負荷設計や電源の調整などが後々ずいぶん楽になります。学習段階でも、抵抗が少ない例題を使って練習し、実機でテスターなどを用いて開放電圧や短絡電流を測ってみると、この考え方の有用性を簡単に実感できます。
テブナンの定理を正しく理解して活用すれば、直流回路の解析は飛躍的に簡単になり、ミスも減らせます。もし回路図を見て「どこから解けばいいのかわからない」と思ったときは、まずテブナンの定理を思い出して2端子を意識してみるのも良い方法です。結果的に、負荷側の電流や電圧だけでなく、回路全体の動作をより明快に把握しやすくなるでしょう。
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