トランジスタ|評価編
インバータ回路におけるスイッチング素子の逆回復特性の重要性 インバータ回路の種類と通電方式について
2022.05.17
この記事のポイント
・インバータ回路は主に単相インバータ回路と三相インバータ回路の2つに分類することができる。
・モーター駆動に関しては、トルクが安定し振動や騒音を抑えることができるので三相インバータが用いられる。
・三相インバータでモーターを駆動するための通電方式としては、矩形波駆動(120°通電)、正弦波駆動(三相変調、二相変調)などがあり、それぞれにメリット・デメリットがある。
・本章では、モーター駆動でよく用いられる正弦波駆動(三相変調)方式を例にとる。
今回は、1つ目の「インバータ回路の種類と通電方式について」です。
- ■インバータ回路の種類と通電方式について
- ■三相変調インバータ回路の基本動作
- ■ダブルパルス試験によるPrestoMOS™と通常のSJ MOSFETの損失比較(実測定結果)
- ■三相変調インバータ回路によるPrestoMOS™と通常のSJ MOSFETの効率比較(シミュレーション)
インバータ回路の種類と通電方式について
インバータ回路の種類は主に、単相インバータ回路と三相インバータ回路の2つに分類することができます。単相インバータ回路の回路図と出力電流の概略波形を、図1と2に示します。単相インバータ回路は、直流を単相交流に変換する構成となっているので、一般家庭の商用電源用途を想定したパワーコンディショナーや無停電電源(UPS)などに用いられます。

次に、三相インバータ回路の回路図と出力電流の概略波形を図3、4、5に示します。図4は正弦波駆動(180°通電)、図5は矩形波駆動(120°通電)の電流波形です。三相インバータ回路は、直流を三相交流に変換する構成となっており、エアコンのコンプレッサーや電気自動車などのモーター駆動などに用いられます。

モーターを駆動する場合、単相、三相のどちらのインバータ回路でも可能です。しかしながら、単相インバータ回路はその構成上、出力電流が必ずゼロになる期間が存在します(図2参照)。そのため、モーターのトルクが大きく変動し、モーターの振動や駆動音が大きくなってしまいます。これに対して、三相インバータ回路は三相のいずれかが常に電流を流す制御方式であるので(図4、5参照)、出力電流の変動が単相インバータ回路と比較して小さく、モーターのトルクが安定し振動や騒音を抑えることができます。この理由から、モーター駆動には一般的に三相インバータ回路が用いられます。
三相インバータでモーターを駆動するための通電方式としては、表1のように、矩形波駆動(120°通電)、正弦波駆動(180°通電/三相変調、二相変調)などがあります。
図5の電流波形のような120°通電では、半波180°区間のうち120°のみスイッチングするため、正弦波駆動に比べてスイッチング損失の低減が可能です。しかしながら、相電流が矩形波状になるため高調波が増加し、モーター効率は悪化する点がデメリットです。
図4の正弦波駆動(180°通電)では、相電流は基本周波数に近似されるため高調波の低減が可能であり、モーター効率を向上できるメリットがあります。ただし、半波180°区間のすべてでスイッチングするので、スイッチング損失は矩形波駆動に比べて増加します。
表 1.各種通電方式とその特徴
| 矩形波駆動(120°通電) | 正弦波駆動(三相変調) | 正弦波駆動(二相変調) | |
|---|---|---|---|
| スイッチング損失 | 小 | 大 | 中 |
| 出力AC高調波 | 大 | 小 | 小 |
| モーター効率 | 低 | 高 | 高 |
| 制御 | 容易 | やや難しい | 難しい |
本章では、モーター駆動でよく用いられる正弦波駆動(三相変調)方式を例にして説明をして行きます。
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