トランジスタ|評価編
インバータ回路におけるスイッチング素子の逆回復特性の重要性 三相インバータ回路によるPrestoMOS™と通常のSJ MOSFETの効率比較(シミュレーション)
2022.10.25
この記事のポイント
・三相変調インバータ回路の回路効率とMOSFET 1個あたりの損失確認のためにシミュレーションを用いた。
・三相変調インバータ回路において、PrestoMOS™と通常のSJ MOSFETを比較すると、逆回復特性が優れるPrestoMOS™を使用した方が、効率が高く(損失が小さく)なることが確認された。
・三相変調インバータ回路において、逆回復特性が優れるPrestoMOS™の効率面でのメリットは明確である。
今回は4つ目、最後となる「三相インバータ回路によるPrestoMOS™と通常のSJ MOSFETの効率比較」になります。この効率比較はシミュレーションによるものです。
- ■インバータ回路の種類と通電方式について
- ■三相変調インバータ回路の基本動作
- ■ダブルパルス試験によるPrestoMOS™と通常のSJ MOSFETの損失比較(実測定結果)
- ■三相変調インバータ回路によるPrestoMOS™と通常のSJ MOSFETの効率比較(シミュレーション)
三相変調インバータ回路によるPrestoMOS™と通常のSJ MOSFETの効率比較(シミュレーション)
先に実施したダブルパルス試験による損失比較に続いて、本章の評価対象である三相変調インバータ回路での効率比較を行いました。MOSFETはダブルパルス試験で使用したものと同じ品種で、PrestoMOS™ R6030JNxと通常のSJ MOSFETであるR6030KNxです。この効率比較はシミュレーションを用いました。そのシミュレーション回路を図19に示します。

シミュレーション条件は、ダブルパルス試験回路で用いた条件から、以下に設定しました。
- (1)ゲート駆動電圧VGS:0V to 12V
- (2)電源電圧Vin:280Vdc
- (3)インダクタLU、LV、LW:8mH
- (4)スイッチング周波数fsw:5kHz
- (5)ゲート抵抗RG(on):デバイスにより変更(ターンONのdi/dtを、100A/µsに合わせるため)
・PrestoMOS™ R6030JNx:60Ω(180Ωを3並列)
・R6030KNx:180Ω - (6)ゲート抵抗RG(off):22Ω
- (7)出力電力POUT:100W、300W、500W、700W、1000W
図20に、シミュレーションによる効率を示します。また、シミュレーション時のMOSFET 1個あたりの損失を、図21に示します。

結果が示すように、PrestoMOS™ R6030JNx(赤色線)の方が効率は高く、優れた逆回復特性が効率向上に有効なことがわかります。また、損失に関しては、出力1000W時にMOSFET 1個あたり0.5Wの損失が改善され、MOSFET 6個、つまり全MOSFETでは3Wの損失改善になります。