電気回路設計|基礎編

はんだの種類と接合のメカニズム

2024.09.04

「接合技術」と聞いて最初に思い浮かべるのは、木工用ボンドやホットメルトなどの接着剤を使う方法かもしれません。本稿で紹介するのは「はんだ」を使った金属どうしを接合する技術です。

エレクトロニクス製品を設計・開発する技術者はみな、プロ級のはんだ付け技術をもっているという目で見られることも多いでしょう。「今さら聞けない」というベテラン技術者の皆さんも、今一度、基本に立ち返って、見直してみてはいかがでしょうか?

金属を接合する3つの技術

はんだ付け

はんだ付けとは、「はんだ」を利用して金属を溶融することによって接合する技法です。「はんだ」を使う接合技術の歴史は溶接より古く、古代エジプトの出土品からもその形跡が見つかるほどです。今も、工法や材料、道具は進歩し続けています。

材料は鉛と錫で、ろう付けより低温で接合できます。融点は200~400℃で、電子部品や精密機器の組み立てに適しています。一般に、接合強度はろう付けより弱いです。

はんだ付けの接合原理は「のり」などを使う接着とは根本的に異なります。

銅の上にはんだ付けすると、錫と銅の間の微小領域に数μmの合金層(拡散層)が生まれます。これがミクロな溶接状態となり、はんだと母材の銅ががっちり接合します(図1)。

錫と基板パターン(銅)の間の合金拡散層図1:錫と基板パターン(銅)の間の合金拡散層
参考文献:https://toragi.cqpub.co.jp/tabid/693/Default.aspx

金めっきタイプのプリント基板の場合は、錫と金が合金層(AuSn2)を作り出し接合します。この合金は薄い金を取り込み、下地のニッケル層と錫が拡散層(合金層)を形成します。

ろう付け

ろう付けは、銀、銅、アルミなどの「ろう材」を使用した接合技法です。接合部は強度があり、高温にも耐えるので、アクセサリや模型、眼鏡の組み立てなどに利用されています。

接合対象の母材より低温の金属を溶かすと生まれる「ぬれ性」を利用して、母材どうし接合します。接合材料(ろう材)は、銀、金、銅、亜鉛などです。

ろう付けとはんだ付けを総称して「ろう接」と呼びます。はんだ付けはろう付けの一種です。逆に「ろう付けははんだ付けの一種」という文献もあるほど両者は似ています。溶接より微細で精密な作業ができる、と言われていますが、溶接技術も進化しているので、今となっては正しい表現とは言えません。

溶接

溶接は、超高温で母材そのものを溶かして接合する技法です。ろう付けよりも接合強度が高いです。一般的に、ろう付けより大がかりな道具が必要です。

溶接は、火花を巻き散らして、大きな金属部品を接合するイメージがありますが、繊細な電子回路にも欠かせない接合技術です。バッテリーの端子に電極(タブ)の接合にも用いられています(スポット溶接と呼ぶ)。熱電対は、2種類の金属線の先端の接合にも利用されています。

そのほかの電気的な接合技術

圧着・圧入

機械的な圧力を加えて変形させることで、材料どうしを機械的に接触させます。コネクタの端子などに多く利用されます。正しい工具を利用すれば非常に信頼性が高い接合方法です。

締結

ねじを使って、端子どうしを機械的に接触させます。端子台や大電力やアースのバス・バーの接続に利用されます。

超音波接合

超音波を利用して、材料と材料の間に摩擦を発生させ、表面の酸化物を取り除きつつ、熱や塑性変形を起こして接合します。IC内の半導体チップ上の電極パッドから、アルミや金の細いワイヤで、ICの端子へ信号を引き出すときにも利用されます。これを「超音波ワイヤ・ボンダ」と呼びます。

導電性接着剤

エポキシ接着剤に銀やカーボンナノチューブなどの導電性フィラーを混ぜ合わせてできる、導電性接着剤を使用して接合する方法です。導電性接着剤は、電気を通す特性を持つため、電気的接続が必要な箇所にも使用されます。接着剤が硬化する過程でエポキシ樹脂がわずかに収縮し、内部のフィラー粒子が互いに密着することで電気が流れるようになります。

特に、半導体パッケージや電子基板の接合において、ハンダ付けが困難な場面や、ハンダ接合による熱影響を避けたい場合に活用されることが多いです。

ラッピング

端子棒(ポスト)にラッピング・ワイヤを絡めて、電極とワイヤを接合します(図2)。はんだ付けよりも信頼性が高いとされています。かつては、航空宇宙分野でも用いられた重要な技術ですが、ほとんど使われなくなっています。

ワイヤ・ラッピング配線の例図2:ワイヤ・ラッピング配線の例

コネクタ

ばね性機構を利用して、電極どうしを機械的に接触させる部品です。代表的なのは、USBや電源プラグです。

導電性ゴム

液晶パネルでは、機械的に押しつけると導通するゴムを使っています。

実験用の「共晶」と量産用の「鉛フリー」

共晶はんだ

通常、はんだは錫と鉛でできています。錫の融点は231.9℃、鉛の融点は327.5℃です(図3)。これらを混合してその比をうまく調整すると、融点は183℃~184℃まで下がり加工しやすくなります。

鉛と錫の割合と合金の融点図3:鉛と錫の割合と合金の融点
引用元:FCT Solder社ホームページ

最も融点が低い混合比(共晶条件)は、錫63%+鉛37%(Sn63-Pb37と表記される)です。その合金を「共晶合金」と呼びます。

混合比が共晶条件から外れた、錫60%+鉛40%、錫50%+鉛50%などの共晶はんだもあります。鉛の含有量が多いほど、融点が高く溶けにくく、強度が上がります。重い部品や高温になる部品の接合や「液垂れ」を回避したいときは、鉛を多く含んだはんだを使います。プリント基板のスルーホールには、はんだが流れ込みにくいので適しません。

銅が少量(約0.5%)添加されたはんだも市販されています。はんだに含まれる錫によって銅が侵食されるのを回避できます。極細の銅線やプリント基板上の銅パターンに利用します。

同様の目的で、銀の食われの対策として、銀が少量(~2%ほど)添加されているはんだも市販されています。

プリント基板に一番よく利用されているはんだの混合比は、錫60%+鉛40%(融点199℃)です。私もこのタイプを愛用しています。鉛フリーはんだを除いて、ほかの混合比のはんだはほぼ利用していません。

鉛フリーはんだ

「鉛」の規制

鉛は、自然界に豊富で、共晶はんだのように扱いやすい性質があります。しかし鉛は、中毒性や発がん性があり、環境への負荷も大きいため、2000年ごろから世界中で規制が始まりました。

特にEUは、2006年7月にRoHS(ローズ)指令を施行し、鉛を1000ppm以上含む製品をEU圏内で販売してはいけないという法律を定めました。RoHS指令の規制対象は、鉛、水銀、カドミウム、六価クロムなどです。

鉛フリーはんだの特徴

環境の持続性が叫ばれる中、国産の家電製品の多くが鉛フリーはんだを使っています。

「鉛フリー」という言葉は「鉛をいっさい含まない」という意味ではなく、「鉛をほとんど含まない」という意味です。

鉛フリーはんだは、成分によって次のような種類があります。

  • 1. 錫95%以上+銀又は銅(融点217℃)
  • 2. 錫+亜鉛(融点200℃)
  • 3. 錫+銅(融点227℃)

錫+鉛の共晶はんだより融点が高く、ぬれ性も悪いため、はんだ付けの作業効率がよくなく、仕上がりもざらつき光沢もありません。

作業効率改善のために研究が続けられています。

はんだに求められる性能は「低融点」と「高強度」です。融点が低いほど基板や部品に与えるダメージが小さいです。そして、強度が高いほど良いのはいうまでもありません。

取り外し用の低融点はんだ

「低融点はんだ」は、基板にはんだ付けされた部品を取り外すときに利用するもので古くからあります(図4)。

市販されている低融点はんだキットの例。図4:市販されている低融点はんだキットの例。
出典:https://shop.sunhayato.co.jp/products/smd-21

ビスマスなどが含まれており、融点は、100℃以下(40~95℃)です。はんだが長時間固まらず、液体の状態が続くため、多ピンICも落ち着いて取り外せます。ただし、接着強度が弱く脆いため接合には使えません。

コラム:はんだ付けの改良は続く

文献によっては「合金層の厚みは9μm程度」と記述があります。一般的なプリント基板の銅の厚みの“35μm(1oz)”と比べると大きすぎる気がしたので調べてみました。

稿末の論文[1]では、溶融したはんだ合金へ銅板を浸漬させ、はんだを付着させた後に引き出し、断面を観察しています。実際のはんだ付けの条件下では、拡散層の厚みは、温度や時間に依存せず、混合比が錫60%+鉛40%のはんだの場合、合金層の厚みは約3μmだったと報告しています。拡散層を構成する合金の正体は、錫を主体とする微量な銅と鉛の合金であるとも説明しています。

稿末の論文[2]は、同じ研究グループによる続報です。はんだの対流による影響をなくすために、銅板にはんだを乗せて加熱する実験です。こてを使った実際のはんだ付けに近い条件です。

電子部品の小型化により、拡散層周辺のボイド(気泡のようなもの)が問題視されており、金属メーカーをはじめ、多くのメーカーや研究グループが着目しています。次世代の鉛フリーはんだの提案も活発です。

参考文献

[1] 善養寺薫;[VOD]動画で一緒にプリント基板開発KiCad 超入門【KiCad 6対応完全マニュアル】、ZEP エンジニアリング。

[2] 善養寺薫;[VOD]動画で一緒にプリント基板開発KiCad 超入門【KiCad 6対応プロの仕上げ技101】、ZEP エンジニアリング。

著作者名:善養寺 薫
企画・制作者名:ZEPエンジニアリング

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