電気回路設計|基礎編

はんだ付けの7つ道具

2024.09.04

電子回路は、試作や実験を繰り返して磨きをかけていくものです。その過程において欠かせない技術が、手作業によるはんだ付けです。その技術のレベルは、最終的な仕上がりが大きく変わります。

場合によっては、納品する基板を手作りで納品したり、お客さまからあずかった基板に手を入れたりすることもあるでしょう。

はんだ付けには、道具が必要です(図1)。本稿では、はんだを溶かす「こて」や接合材「はんだ」、部品のリード線を切断するニッパーなど、はんだ付けとリワークに使うお勧めの工具一式を紹介します。野球選手も書道家も医者も、その道の一流は道具にこだわるものです。

(図1)はんだ付けやリワーク用の道具(図1)はんだ付けやリワーク用の道具

7つの必需道具

その1 こて

こて先の造りや材質は、国産が優れています。メジャーな国産メーカーは、白光(HAKKOブランド)と太洋電機産業(gootブランド)の2社です。

こてやこて台のキットが便利

ホームセンターにはさまざまな種類のこてが並んでいます。オーソドックスなこてには次の2種類があります。

  • 1. ニクロム線ヒーター型
  • 2. セラミックヒーター型

セラミックヒーター型はニクロム線ヒーター型より少し高価です。ビギナーにお勧めなのは、セラミックヒーター型のこてと、こて台などが一式になったセット商品X-2000E(goot製)です。

お勧めは「温度調整機能付きのセラミック型」

ニクロム線ヒーター型は、適正な温度に維持できません。予算に余裕があれば、温度調節機能を備えたセラミック型を強くお勧めします。

温調機能があると、常にはんだ付けが容易な温度で作業できます。図面に向かい悩みながらの断続的な作業が多いときでも、ストレスなくはんだ付けを再開できます。

代表的な製品は、FX600(HAKKO製)やPX201(goot製)です。温度は、360℃に設定すると良いでしょう。私は、PX-335/PX-338を好んで利用しています。ダイヤルで温度を連続調節できる機能よりも、加熱温度を一定に保てる機能の方が重要です。

2本あるとチップ部品も怖くない

チップ部品を取り外すときは、こてが2本ほしくなります。チップの2つのパッドにこて先を当てて温めることができます。

ベタ・パターンの熱吸われ対策用に40W級のニクロム線タイプを1本

こての熱が奪われる面積の大きいベタ・パターンに、部品をはんだ付けしたり、取り外したりするときは、熱容量が大きい(約40W)ニクロム線タイプが1本あると便利です。

こて先は、常にきれいな状態を保ってください。そうすれば1年以上使い続けることができます。

はんだこては使っているうちに、熱をもつ部分、特にこて先が酸化して黒くなってきます。

その2 こて台とクリーナー

安価な製品でかまいませんが、熱の逃げやすいこて台を使うと、たとえ温度調整機能を備えた立派なはんだこてでも、温度が維持されずせっかくの高性能が台なしです。

ニクロム線タイプ、セラミックタイプ、それぞれ専用のこて台があり、クリーナーが備えつけられています。

その3 クリーナー

次の2種類があります。

  • 1. 水を含ませながら使う黄色いスポンジ
  • 2. 水を使わない金たわし

私は、こて先を掃除するときにこて台が動いてしまわなように、重量のあるスポンジタイプを使っています。水を含ませながら利用してください。

その4 ニッパー

部品のリード線を基板に挿入した後、切断するときに利用する必須工具です。100円ショップでも入手できます。工具メーカーの「精密ニッパー」はホームセンターに並んでいます。

優れたニッパーは、先端が鋭く尖っていて切れ味が良く、基板に部品のリード線が張り付いていても、見事に切断してくれます。先端の刃は非常に繊細ですから、硬い針金を切ったりしないでください(図2)。

(図2)刃こぼれしてしまったニッパー(図2)刃こぼれしてしまったニッパー

人気があるのは、MN-A05(マルト長谷川工作所、KEIBAブランド)やフジ矢製のニッパーです。

その5 はんだ吸い取り器、はんだ吸い取り線

どちらも、部品を取り外したり、盛りすぎたはんだを除去したりするときに使う必需品です。

はんだ吸い取り器は、スルーホールのあるプリント基板のリワーク作業に欠かせません。性能や使い勝手は、メーカーによる差はあまり感じません。

はんだ吸い取り線は、表面実装部品を取り外すときによく使いますが、製造しているメーカーは多くありません。幅の広いタイプには熱容量の大きいはんだこてが必要なため、幅の細いタイプがよいでしょう。はんだ吸い取り線は消耗品です。

その6 はんだ

鉛フリータイプと鉛入り(有鉛)タイプがあります。実験には、作業性の良い鉛入りがお勧めです。

必ず、プリント基板用として売られている「やに(フラックス)入りはんだ」を選んでください(図3)。板金工作用は選ばないでください。

(図3)Φ0.6のやに入りはんだ“SE-56006”(goot製)の断面(図3)Φ0.6のやに入りはんだ“SE-56006”(goot製)の断面

鉛入りタイプを使うなら、混合比が鉛60%+錫40%のタイプが入手しやすく使いやすいです。

鉛フリータイプは、少量では入手しやすい製品が多くありません。ホーザン社の、Φ0.3、Φ0.6、Φ1.0というふうに、サイズ別で100~400gのボビンで取り扱っています。

太さは細いものでΦ0.3、太いものでΦ1.0です。私は、Φ0.6を使って、表面実装部品もはんだ付けしています。Φ0.8とΦ0.3を使い分ける人も多いです。

その7 ピンセット

これも必需工具です。100円ショップでも手に入ります。とにかく手に馴染むものを使いましょう。

ステンレスの非磁性タイプで、先端が尖っている製品が使いやすいです。閉じたとき、先端の左右がピタリと合うことが必須条件です。高価な完全非磁性のチタン製を選ぶ必要はないと考えています。

高価なものから廉価なものまでさまざまなピンセットを試しましたが、私が最終的に行きついたのは、K-10(KFI製)です。

先端は非常に繊細です。力を加えると簡単に曲がって使えなくなります。まして、落としたりしてはいけません。毎日顕微鏡を使う生物学の研究者は、先端を丁寧に研いでから使うようです。

その他の工具

ルーペやドライバー、ワイヤーストリッパーなども、必要に応じて揃えておくと良いでしょう。

リード挿入型の電子部品のはんだ付け

プリント基板にICソケットを実装する場合のはんだ付けの手順です(図4)。

(図4)実装前のICソケットとプリント基板(図4)実装前のICソケットとプリント基板

まず、プリント基板にICソケットを実装します(図5)。

(図5)ICソケットを基板に挿入する(図5)ICソケットを基板に挿入する

こて先で、プリント基板のパッドと部品のリードを1~数秒間加熱して、温めます(図6)。円錐形のこて先の先端の温度はあまり上がらないので、腹の部分(側面)を当てます。もし、うまくはんだが付かないときは、マイナスドライバー型のこて先で試してみてください。

(図6)こて先で基板のパッドと部品のリードを数秒温める(図6)こて先で基板のパッドと部品のリードを数秒温める

はんだこての先端は常にきれいな状態を保ってください。こて先は酸化するとはんだが溶けにくくなります。一部でも酸化していたら新品と交換しましょう。

そのままはんだこてを動かさないようにして、パッドと部品のリードの中間の位置に、はんだ線を近づけます(図7)。

(図7)パッドと部品のリードの中間にこてとはんだを近づける(図7)パッドと部品のリードの中間にこてとはんだを近づける

加熱されたパッドと部品のリードに、溶けたはんだが吸い込まれていく様子を見ながら、はんだ線を供給し続けます(図8)。この間も、はんだこては動かさずに、はんだが自然に流れるままにまかせます。はんだ線に含まれるやに(フラックス)の働きで、溶けたはんだは自然に広がります。こて先を動かして、べたべたと塗り拡げないでください。

(図8)パッドとリードがはんだを吸い込み始めたら、そのままはんだを供給し続ける(図8)パッドとリードがはんだを吸い込み始めたら、そのままはんだを供給し続ける

はんだの供給を急ぎすぎると、はんだがボール状になって飛散します。やに(フラックス)が急激に加熱されて破裂し、小さな球状のはんだのかすが飛び散ります。

スルーホールの中がはんだで満たされ、はんだがこて先に山のように盛り上がったら、供給量は十分です(図9)。

(図9)スルーホールの中がはんだで満たされ、はんだが盛り上がったらはんだ線を引く(図9)スルーホールの中がはんだで満たされ、はんだが盛り上がったらはんだ線を引く

はんだ線を引いて供給を止めます。この間も、はんだこては動かしてはいけません。

最後に、はんだこてを真上にもちあげます(図10)。はんだの温度が適正ならば、はんだがこてに引き寄せられずにその場で冷えて固まります。はんだが富士山の形になり、艶が出ていたら成功です(図11)。艶は、鉛入りはんだは出ますが、無鉛はんだは出ないものが多いようです。

(図10)こてを真上にもちあげる(図10)こてを真上にもちあげる

(図11)はんだが富士山の形になり、艶が出ていたら成功(図11)はんだが富士山の形になり、艶が出ていたら成功

冷えて固まったはんだに角(つの)がついていたら、こて先の温度が適正ではないか、フラックスの活性が失われています。はんだを除去し温度を調整した後、こて先を清掃してもう一度作業してください。

複数あるICソケットは、1回の作業ですべての端子をはんだ付けしてはいけません。まず、1つの端子をはんだ付けします。そして、ソケットが浮いていないかどうか、目視で確認します。ソケットが基板に密着せず、浮いたままはんだが冷えて固定されていたら、基板面に対して垂直になるように軽い力を加えます(図12)。指でソケットに力を加えながら、こてではんだを温めて溶かして、ソケットが動くようにします。ソケットの浮きがなくなったのを確認したら、残りの端子をはんだ付けします。

(図12)ICソケットが基板から浮いていたら、はんだを溶かしながら指で抑えつけて密着させる(図12)ICソケットが基板から浮いていたら、はんだを溶かしながら指で抑えつけて密着させる

チップ部品のはんだ付け

図13に示すようなチップ部品をプリント基板にはんだ付けする方法を説明します。

(図13)よく使われている1608サイズの抵抗、キャパシタ、LED(図13)よく使われている1608サイズの抵抗、キャパシタ、LED

図14に示すのは、はんだ付け前のプリント基板です。

(図14)はんだ付け前の実装用パッドとチップ部品(図14)はんだ付け前の実装用パッドとチップ部品

まず、一方のランドにごく少量のはんだを盛ります(図15)。チップ部品の場合、はんだの量は少しでOKです。山なりになるほど盛らないでください。

(図15)一方のパッドに少量のはんだを盛る(図15)一方のパッドに少量のはんだを盛る

サイズが1608(1.6×0.8mm)以上のチップ部品なら、はんだ付けは難しくありません。

はんだが盛られたパッドにこてを当てて温め、はんだを溶かします。同時に、もう一方の手にもったピンセットで、チップ部品を適正な位置に移動させます(図16)。

(図16)こてで少量盛ったはんだを温めて溶かし、片方の手にもったピンセットでチップ部品を位置決めする(図16)こてで少量盛ったはんだを温めて溶かし、
片方の手にもったピンセットでチップ部品を位置決めする

チップ部品に接触しているはんだこてとピンセットを順に離します(図17)。

(図17)位置決めできたら、こて→ピンセットの順に離す(図17)位置決めできたら、こて→ピンセットの順に離す

チップ部品が仮留めされたら、もう片方のパッドをはんだ付けします(図18)。図19のように仕上がればOK です。

(図18)はんだを盛っていない方のパッドにこてとはんだ線を当てて温める(図18)はんだを盛っていない方のパッドにこてとはんだ線を当てて温める

(図19)一方のパッドにはんだを盛り終えたところ(図19)一方のパッドにはんだを盛り終えたところ

最後に、少量のはんだで仮留めした端子にはんだを追加します(図20)。

(図20)位置決めのために少量はんだを盛った端子にはんだを盛る(図20)位置決めのために少量はんだを盛った端子にはんだを盛る

図21にチップ部品のはんだ量の適正量を示します。パッドと端子端面がしっかり濡れていて、凹型のフィレットが形成されているのが理想です。

メーカーは、リフロー装置を使ってチップ部品をはんだ付けしています。リフローでチップ部品に付くはんだの量は非常にわずかで、手作業で同じ状態を実現することは困難です。

こてを使ってはんだ付けを行うチップ部品のフットプリントのデータは大きめに作りましょう。作業が簡単で確実です。フットプリントは大きければ良いというものではなく、リフロー実装すると、はんだがうまく載らなくなります。

量産用と手はんだ用のフットプリントの2種類を準備すると良いでしょう。

(図21)チップ部品のはんだ量の適正量パッドと端子端面がしっかり濡れていて、凹型のフィレットが形成されていること(図21)チップ部品のはんだ量の適正量
パッドと端子端面がしっかり濡れていて、凹型のフィレットが形成されていること

表面実装ICのはんだ付け

表面実装IC(図22)も、チップ部品と同様の手順で実装します。図23に示すのは、ICを実装する前のパッドです。

(図22)表面実装ICの外観(8ピンSOC)(図22)表面実装ICの外観(8ピンSOC)

(図23)はんだ付け前の8ピンの表面実装IC用のパッド(図23)はんだ付け前の8ピンの表面実装IC用のパッド

一番端のパッドに、はんだを少量盛ります(図24)。図25のような仕上がりになればOKです。

(図24)1番端子のパッドにはんだを少量供給する(図24)1番端子のパッドにはんだを少量供給する

(図25)1番端子にはんだを盛り終えたところ(図25)1番端子にはんだを盛り終えたところ

こてを当ててはんだを溶かし、ピンセットでICをつまんで実装位置を調節して(図26)、こてを離します(図27)。

(図26)少量のはんだを盛った1番端子を温めて溶かし、ピンセットで操ってICを適切な位置に移動する(図26)少量のはんだを盛った1番端子を温めて溶かし、
ピンセットで操ってICを適切な位置に移動する

(図27)ピンセットとこてをICから離すICが仮留めされる(図27)ピンセットとこてをICから離す
ICが仮留めされる

続いて、残りのピンをはんだ付けします(図28)。

(図28)残りの端子を順番にはんだ付けする(図28)残りの端子を順番にはんだ付けする

隣のピンとブリッジしていないことを確認します(図29)。図30に示すように、横からも目視で確認します。

(図29)はんだ付け完了(上から見たところ)(図29)はんだ付け完了(上から見たところ)

(図30)はんだ付け完了(横から見たところ)(図30)はんだ付け完了(横から見たところ)

コラム 鍛えるほど便利になる最重要ツール「手」

はんだ付けをしていると、もう1本手が欲しくなりますが、人間の手は2本しかないので、早めに諦めましょう。

バイスや万力、目玉クリップ、洗濯ばさみなど、積極的にいろいろな道具を試してください。慣れれば、補助道具がなくても作業できるようになるでしょう(図31)。

(図31)線材、はんだ、こてを操って、線材に予備はんだをする(図31)線材、はんだ、こてを操って、線材に予備はんだをする

参考文献

[1] 善養寺薫;[VOD]動画で一緒にプリント基板開発KiCad 超入門【KiCad 6対応完全マニュアル】、ZEPエンジニアリング。

[2] 善養寺薫;[VOD]動画で一緒にプリント基板開発KiCad 超入門【KiCad 6対応プロの仕上げ技101】、ZEPエンジニアリング。

著作者名:善養寺 薫
企画・制作者名:ZEPエンジニアリング

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