電気回路設計|基礎編
プリント基板のリワーク技術7選
2024.09.04
プリント基板のリワーク技術は、既存基板の修理、改修、アップグレードを行うプロセスです。リワーク技術では、故障した部品の交換や設計変更による機能追加が主な目的であり、精密なはんだ付け作業が必要です。この技術により、プリント基板の寿命が延び、コスト削減と資源の有効利用が実現します。この記事では、具体的なリワーク手法について詳しく説明します。
プリント基板のリワーク術
電子回路設計は試行錯誤と課題解決の連続です。プリント・パターンや回路図に一か所でもミスがあると、回路は正しく動きません。たとえミスがなくても、ノイズや放熱への対応が不十分だと、お客様が期待するパフォーマンスや長期の安定動作は得られません。出来の悪い基板はさっさと捨てて、一から作り直したいところですが、コストや工数がかさみます。そのようなときは、手持ちの道具と技術で部品交換や配線の修正を行い、問題を解決した基板に改造します。
その1:電子部品の取り外し
盛られたはんだにこてを当てて温めながら溶かします(図1)。次に、はんだ吸い取り線やはんだ吸い取り器を使って、溶けたはんだを吸い取ります(図2)。端子がぐらぐらになるぐらい完全に除去します。
こつは、よくはんだを溶かすことです。うまく吸い取ることができなかったら、はんだを盛り直して作業をやりなおしてください。
(図1)最初に対象の箇所をこてで十分に加熱する
(図2)こてではんだを加熱し、はんだ吸い取り器ではんだを吸い取る
はんだ吸い取り器先端の樹脂は溶けない
その2:スルーホール基板からリード付きトランジスタを取り外す
多層基板のスルーホール(貫通穴)に実装された部品のリード線は、貫通穴の内壁に入り込んだはんだでしっかり接着していため、慣れるまでははんだを完全に吸い取ることができず、簡単には取り外せません。
電動の自動はんだ吸い取り器(2~3万円)を使って、強制的にはんだを吸い出すのが楽です(図2)。
ディスクリート・トランジスタなど、足の少ない部品の場合は、こて先を足の並びと平行に当てて、すべての端子を一度に温めてはんだを溶かし、固まる前にペンチでトランジスタのボディをつかんで一気に引き抜きます。その後、こてとはんだ吸い取り器を使って、スルーホールの中に入り込んでいるはんだをきれいに除去します。樹脂でできているはんだ吸い取り器の先端は、こてで溶けることはありません。完全にはんだが吸い出すと、部品のリード線がぐらぐらと動きます。フラックスで周囲の基板が汚れるので、エタノールや綿棒を使ってきれいに清掃します(図3)。
(図3)リード線が自由に動くまではんだを吸い出す
フラックスで汚れた面をエタノールと綿棒でふき取る
その3:チップ部品を取り外す
チップ抵抗やチップ・コンデンサは、こてを2本利用して、2つのパッドを同時に温めて取り外します(図4)。チップ部品と平行にこてを当てて、両側のパッドを一度に加熱します(図5)。
(図4)こてで2つのパッドを同時に温める
(図5)はんだが溶けたら、パッドから部品の端子を遠ざけるように横にずらす
部品を持ち上げずに、パッドから端子を遠ざけるように横にずらします(図6)。高価ですが、効率良く作業できるピンセット型のこて「ホット・ピンセット」(ホット・ツイーザ)があると作業が楽になります。
(図6)チップ部品がパッドから取り外される
部品を取り外したら、再実装に備えて、パッド上のはんだを吸い取り線で除去します(図7)。はんだ吸い取り線には、あらかじめごく少量のはんだを吸い込ませておくと、作業効率が良いでしょう。
(図7)パッド上のはんだを吸い取り線で除去する
はんだ吸い取り線にこての熱が奪われないよう、短くニッパーで切り、ピンセットでつまんで利用する場合もあります。
はんだを吸い取った後、基板に付着した吸い取り線に含まれるフラックスをエタノールできれいにふき取ります(図8)。
(図8)基板に付着したフラックスをエタノールでふき取る
その4:表面実装ICを取り外す
端子が2列しかないICは、取り外しが比較的楽です。はんだブリッジを気にしないで、両側の端子にはんだを多く盛って、2本のこてではんだ温めて取り外します。ICを持ち上げないで、パッドから端子が遠ざかるように横にずらします。
4方向に端子があるQFP(Quad Flat Package)の取り外しは少し厄介です。
まず、はんだブリッジを気にせずに、4列の端子に多量にはんだを盛ります。こてを使って、4列の端子のはんだがすべて溶けるように熱を加えます。はんだが溶けたら、ICをパッドからずらします。
はんだはすぐに冷えて固まりやすいため、この作業には慣れが必要です。最初は、低融点はんだ(サンハヤト製)を利用するのが楽でしょう。
ICの再利用を考えていないなら、ICの端子をナイフで切断してパッケージを取り除いた後、吸い取り線で端子とはんだを除去します。
▶ 裏面パッドのあるICの取り外し
最近増えている裏面に放熱用パッドをもつICは、リワーク用のヒート・ガンで加熱して取り外しますが、ICや基板へのダメージが大きいためあまりお勧めしません。軟膏状の硬目のフラックスを塗布してから加熱するのがこつです。
その5:プリント・パターンを切断する
プリント基板の配線(プリント・パターン)を切断する方法を説明します。
表面と裏面を走るプリント・パターンは、文房具のカッターナイフで簡単に切断できます。他のプリント・パターンをナイフで傷つけないように、プリント・パターンが密集していない場所を選んで切断します(図9)。
(図9)プリント・パターンの密集していない箇所で切断する
カッターナイフは、V字になるよう2方向から切り込みを入れます(図10)。一番多いガラス・エポキシ基板(FR-4)は思いのほか硬いので、力の加え方に慣れが必要です。深目に切り込みを入れてもかまいません。
(図10)目標箇所にカッターナイフでV字状に切り込みを入れる
切断した後は、銅箔下の白色の基材が見えるはずです(図11)。目視だけでなく、導通がなくなっていることをテスタで確認します。
(図11)基材の白色が見えたら切断成功
その6:プリント・パターンの途中から配線を引き出す
プリント・パターンの途中に、配線をはんだ付けできたら、信号を別の経路に流すことができます。
ICやコネクタの端子など、たいてい配線経路のどこかにパッドを見つけられますが、まれに、どこにも配線をはんだ付けする箇所が見当たらないことがあります。部品のない裏面で配線して表面の見てくれをよくしたいこともあるでしょう。
線材は、太さがAWG30の単線「ラッピング・ワイヤー」をお勧めします。部品屋の線材コーナに必ずあります。「潤フロン線の30番」として販売されています。色は赤や緑が定番です。
まず、配線を追加する箇所は、プリント・パターンの密集していない場所を選びます(図12)。
(図12)配線を追加する場所を選ぶ
プリント・パターンが密集していない箇所が良い
カッターナイフの先端部(刃でない先端面)で、基板表面をこすってレジストを削り(図13)、銅箔を露出させます(図14)。銅箔はこすったぐらいでは削れません。
(図13)カッターナイフの先端でレジストを削る
(図14)十分な面積の銅箔を露出させる
線材の被覆を剥いて、はんだを付けます(図15)。いわゆる「予備はんだ」という作業です。
(図15)追加線材の被覆を剥いてはんだを付ける
露出させた銅箔にも予備はんだを施します(図16)。このとき、山なりになるくらい多くのはんだを盛ります(図17)。
(図16)露出させた銅箔に予備はんだをする
(図17)銅箔には山なりになるくらい多くのはんだを盛る
ピンセットで線材をつまんで、はんだが固まるまで押さえつけます(図18)
(図18)ピンセットで線材をつまんで、はんだが固まるまで押さえる
はんだが固まったら(図19)、線材を引っ張ってもとれないことを確認します。
(図19)ルーペで目視したり、引っ張っても外れないことを確認する
その7:端子と端子を線材で接続する(布線)
パッドAとパッドBの2点を線材で接続する方法を説明します。
線材には、AWG30の単線を使います。
ニッパーやワイヤーストリッパーで、線材の被覆を30~50mmほど剥いておきます(図20)。布線する2つのパッドにはんだを盛ります(図21)。
(図20)ニッパーやワイヤーストリッパーで追加線材の被覆を30~50mmほど剥く
(図21)布線するパッドに予備はんだする
片方のパッドに線材をはんだ付けします(図22)。
(図22)一方のパッドに追加線材をはんだ付けする
布線に必要な長さ分だけ被覆をカットし(図23)、ピンセットで先端までずらします(図24)。被覆のカットにはワイヤーストリッパーを使いますが、作業場所が狭いときは先の小さいニッパーが便利です。
(図23)布線に必要な長さだけ被覆をカットする
(図24)剥いた被覆をピンセットで先端に移動させる
もう一方の端子へジャンパ線をはんだ付けして(図25)、ニッパーやカッターナイフでワイヤーをカットします(図26)。
(図25)もう一方のパッドに追加配線をはんだ付けする
(図26)ワイヤーをカットする
線材はピンと張った状態にするか、90°に曲げます。
配線距離が長いときは、こてで加熱溶解させる樹脂「ハックルー」で、線材を基板と接着させて固定します。グルー・ガンやエポキシ接着材でも良いでしょう。グルー・ガンは、再度剥離させる可能性がある場所に、エポキシ接着材は2度と剥離しない場所に利用します。ポリイミド・テープ(カプトン・テープ)で基板に簡易的に固定する方法もあります。
参考文献
[1] 善養寺薫;[VOD]動画で一緒にプリント基板開発KiCad 超入門【KiCad 6対応完全マニュアル】,ZEPエンジニアリング
[2] 善養寺薫;[VOD]動画で一緒にプリント基板開発KiCad 超入門【KiCad 6対応プロの仕上げ技101】,ZEPエンジニアリング
企画・制作者名:ZEPエンジニアリング
電気回路設計
基礎編
-
交流(AC)の基礎
- 交流回路とは:動作原理や基本的な要素について解説
- 交流回路と複素数の関係
- リアクタンスとは? 「電気回路の流れにくさ」
- インピーダンスとは?交流回路の解析と設計の基礎
- インピーダンス測定とは:方式の選び方と精度向上のポイント
- インピーダンスマッチングとは?電力伝送と信号反射を防ぐ理由・原理
- 共振回路:共振周波数の計算方法、Q値の求め方を解説
- RLC回路とは?直列・並列配置それぞれの特徴も解説
- 交流電力の三要素を解説 | 有効・無効・皮相電力とは?
- 力率とは?:計算と効率改善
- PFC(力率改善)とは-原理と回路:シングル/インタリーブ、BCM/CCM
- 臨界モード(BCM)PFC:ダイオードによる効率向上の例
- 電流連続モード(CCM)PFC:ダイオードによる効率向上の例
- LED照明回路 : MOSFETによる効率向上とノイズ低減の例
- エアコン用PFC回路 : MOSFETとダイオードによる効率向上の例
- はんだの種類と接合のメカニズム
- はんだ付けの7つ道具
- プリント基板のリワーク技術7選
- 直流(DC)の基礎