電気回路設計|基礎編
ノートンの定理:等価回路解析
2025.09.24
ノートンの定理:等価回路解析
ノートンの定理は、複雑な二端子回路を等価電流源と並列抵抗に置き換えることで解析を簡単にする手法です。このアプローチにより、電圧源や従属電源を含む状況でも負荷に流れる電流や電圧をすっきり求められ、複雑な回路設計の手間を削減できます。例えば、ノートンの定理は回路設計や学習の場面でよく扱うアンプ出力の評価や、フィルターや増幅回路の最適化にも応用しやすい点が特徴的です。
本記事ではノートンの定理の基本原理から具体的な求め方、そして他の手法との違いまでをわかりやすく紹介します。併せて、ノートンの定理の使い方に関するポイントも整理していきます。
ノートンの定理の基本原理
ノートンの定理は、「2つの端子から見たどんな複雑な線形回路も、1つの電流源(IN)と1つの抵抗(RN)が並列に接続された回路で置き換えることができる」と述べています。なお、ノートンの定理の証明は、テブナンの定理と表裏一体の関係にあり、両者は互いに変換可能である点が大きな特徴です。

「線形回路」とは、電圧と電流の関係が線形に保たれる回路で、典型的には抵抗や線形の独立電源、従属電源などを含むものを指します。ダイオードやトランジスタのような非線形素子が含まれている場合でも、特定の動作点付近では線形化した等価回路を用いて適用できる場合がありますが、この記事では主に線形素子に焦点を当てます。
ノートンの定理の利点の1つは、負荷が接続される端子にだけ注目して、複雑な回路全体をたった2つの要素に置き換えられることです。最終的には、負荷抵抗に流れる電流やその端子間にかかる電圧の計算が単純化され、設計者や学習者にとって便利になります。
ノートンの等価回路を構成する要素
ノートンの定理を有効に使うには、等価回路を構成する要素が何かを正確に理解しておく必要があります。ノートンの等価回路は、電流源と並列抵抗(RN)の2つだけで構成されます。この構造を把握しておくと、見た目が複雑に見える回路であっても本質を素早くつかめます。以下では、ノートンの定理において中心となるノートン電流やノートン抵抗といった要素、それらの相互作用について説明します。
ノートン電流
ノートンの定理を適用すると、最終的にINと呼ばれる理想的な電流源が得られます。定義上、INは2つのターゲット端子を短絡(直接接続)したときに流れる電流です。
具体的には、負荷抵抗を理想導体に置き換え、そこに流れ込む電流がどれだけかを計算又は測定します。
理想的な電流源は、端子電圧がどうであっても一定の電流INを供給します。実際の回路要素は無限大の内部抵抗を持っているわけではありませんが、この理想化によって計算を単純にでき、負荷との相互作用を明確に把握しやすくなります。
ノートン抵抗
電流源と並列に、ノートンの定理ではRNと呼ばれる1つの抵抗が含まれます。
RNを求めるには、回路内の独立電源をすべてゼロに(電圧源は短絡、電流源は開放)置き換えた状態で、同じ2つの端子間に見える抵抗値を測定又は計算します。もし従属電源が存在する場合は、それらは回路に残しておく必要があります。というのも、従属電源は回路の他の部分に依存して動作するからです。
RNは、電流源が負荷とどのように相互作用するかを決定する重要な要素です。なお、RNを逆数にするとアドミタンス(YN = 1/RN)として扱うこともでき、並列接続の合成などを考える際に便利です。さらに、ノートン抵抗RNの逆数GN = 1/RNを「ノートンコンダクタンス」と呼ぶ文献もあります。並列回路の計算をする際はコンダクタンスで考えると便利な場合がありますが、理論的にはRNでもGNでも同じことです。並列接続の観点から見ると、負荷抵抗はRNと並列に置かれ、このことが負荷電圧や負荷電流の計算に直接影響を与えます。
ノートンの等価回路の概略
ノートンの等価回路は、1つの電流源(IN)と1つの抵抗(RN)を並列接続し、その2つの要素の端子が元の回路の負荷接続端子に対応する形で表せます。

これは、電圧源VThと直列抵抗RThを使うテブナンの等価回路(形状的には直列)とは異なりますが、両者は相互に変換可能です。
ノートンの定理の適用:ノートン電流とノートン抵抗を求める手順
ノートンの定理を適用する際に最も重要なのは、ノートン電流(IN)とノートン抵抗(RN)をどのように計算するかです。短絡電流を求める方法や、電源をゼロ化して抵抗を求める手順を理解すれば、さまざまな線形回路を解析できます。ここでは、それらのステップを順に説明し、例を使って計算方法を示します。
ノートン電流を求める方法

- 解析対象の2つの端子を短絡する。
つまり、負荷抵抗RLを短絡させる。 - その短絡回路に流れる電流を回路方程式や回路解析で求める。
キルヒホッフの法則(KCL, KVL)やオームの法則、重ね合わせの理などを使うことができます。 - この短絡電流がINとなる。
これがノートンの等価回路における理想電流源の値になります。複数の電源がある場合は、それぞれが短絡ノードに送り込む電流を足し合わせた総和がノートン電流となります。
・例となる式(単一電圧源の場合)
例えば、電圧源VSと直列抵抗RSがあり、その先に負荷抵抗RLが接続されているというごく単純な回路では、RLの端子を短絡したときの短絡電流ISCは
\(I_{SC} = \displaystyle \frac{V_S}{R_S}\)
よって、
\(I_N=I_{SC}=\displaystyle \frac{V_S}{R_S}\)
このように、「回路が1つの電圧源と直列抵抗しかない」場合は短絡電流が単純にVS/RSとなります。しかし、複数の電源や複雑な抵抗ネットワークを含む回路では、同様に短絡しても解析手順が増え、重ね合わせの理を使って最終的な短絡電流を求める必要があります。
ノートン抵抗を求める方法

- 回路内の独立電源をすべてゼロにする。
電圧源は短絡、電流源は開放に置き換えます。
従属電源がある場合は、そのまま残します。従属電源は回路の他の信号に応じて動作するためです。 - 同じ2つの端子から見た抵抗を求める。
直列や並列の抵抗を組み合わせたり、ノード解析を行ったりして求めます。 - 求まった抵抗がRNである。
これがノートンの等価回路における並列抵抗になります。
・例となる式
前述の簡単な例では、電圧源VSを短絡すると(RSだけが見える状態になるので)、その2つの端子間に見える抵抗は
\(R_N=R_S\)
より複雑な抵抗ネットワークであっても、手順に従って直列・並列合成や解析を進め、最終的な抵抗値を求めます。
ノートンの定理を用いた回路解析の例題
ノートンの定理を概念的に理解するだけでなく、実際の計算やシミュレーションでどのように使われるかを見ることは重要です。本節では、複数の電源や抵抗が含まれる回路を例に挙げ、ノートン等価回路を求める手順を段階的に示します。これによって、さまざまな電圧源、電流源や負荷条件における負荷抵抗電圧を解析する際のイメージが明確になるでしょう。
回路解析の例題
-
電源と内部抵抗
- 電圧源V1と抵抗R1は直列に接続され、負極はノードBに接続
- 電圧源V2と抵抗R2も直列に接続され、負極は同じノードBに接続
-
ノードN(上部結合点)
- V1・R1とV2・R2の正極がノードNで合流する
-
抵抗R3
- ノードNから抵抗R3を介してノードAに接続
-
負荷抵抗RL
- RLはノードAとノードBの間に接続される
-
ノートン等価回路
- 解析時にはRLを取り外し、取り外したA-Bの2端子についてノートン等価回路を求める

ノートン電流を求める
1. ノートン 短絡条件の設定
負荷抵抗RLを取り外し,端子A–Bを完全に短絡する。
これにより端子Aは基準ノードBと同電位になり、
抵抗R3はノードNと基準ノード Bの間に挿入された単独抵抗になる。
2. ノード電圧VNを求める
ノードNの電位をVN[V]とおき、電流の正方向を「N→相手ノード」と定義すると
\(I_1=\displaystyle \frac{V_N-V_1}{R_1}, I_2=\displaystyle \frac{V_N-V_2}{R_2}, I_3=\displaystyle \frac{V_N-0}{R_3} =\displaystyle \frac{V_N}{R_3}\)
KCL(電流の正をN→相手ノードに取ると∑流出=0)より
\(I_1+I_2+I_3=0\)
\(\displaystyle \frac{V_N-V_1}{R_1} + \displaystyle \frac{V_N-V_2}{R_2} + \displaystyle \frac{V_N}{R_3} = 0\)
整理して
\(V_N \left(\displaystyle \frac{1}{R_1} + \displaystyle \frac{1}{R_2} + \displaystyle \frac{1}{R_3} \right) = \displaystyle \frac{V_1}{R_1} + \displaystyle \frac{V_2}{R_2}\)
\(V_N=\displaystyle \frac{ \displaystyle \frac{V_1}{R_1} + \displaystyle \frac{V_2}{R_2}}{\displaystyle \frac{1}{R_1} + \displaystyle \frac{1}{R_2} + \displaystyle \frac{1}{R_3}}\)
3. ノートン電流INを求める
短絡電流INはR3を流れる電流と等しい:
\(I_N=I_3=\displaystyle \frac{V_N}{R_3} = \displaystyle \frac{\displaystyle \frac{V_1}{R_1} + \displaystyle \frac{V_2}{R_2}}{R_3 \left(\displaystyle \frac{1}{R_1} + \displaystyle \frac{1}{R_2} + \displaystyle \frac{1}{R_3} \right)}\)
分母を整理すると
\(I_N=\displaystyle \frac{V_1 R_2+V_2 R_1}{R_1 R_2+R_2 R_3+R_1 R_3}\)
・正の向きはノードN→端子B。
・負号が付く場合は実際の電流向きが逆(B→A方向)です。
4. 利用上の注意
任意のRLを接続したときは、ノートン電流INと端子A–Bから見た等価抵抗はRN(= RTh) = R3 + (R1‖R2)(独立電源はゼロ化=電圧源は短絡、電流源は開放)を用いてノートン→テブナン変換すれば電流・電圧の分配が容易に算出できます。

ノートン抵抗を求める
RNを求めるには、独立電源V1とV2をゼロ化します(電圧源は短絡、電流源は開放)。そして、RLが接続されていた端子から回路を見返したときの抵抗を求めます。
- V1を短絡すると、R1の一方の端は接地される。
- V2を短絡すると、R2の一方の端は接地される。
- R3がどのように接地されているかも確認する。

接続状態を丁寧に辿れば、R1とR2が並列になるのか、あるいはR3と直列・並列で組み合わさるのかを見極められます。最終的に合成された抵抗値がRNになります。INとRNが求まれば、ノートン等価回路は
\(I_N || R_N\)
という形で表せます。
ノートンの定理とテブナンの定理の比較
ノートンの定理と並んで、テブナンの定理は回路簡単化の主要な手法です。一見すると両者は異なるように見えますが、実際には密接に関係しています。ここでは、ノートン等価回路とテブナン等価回路がどのように対応するかを確認し、どのような場合にどちらを使うと便利かを考えます。
ノートンの定理とテブナンの定理の関係

テブナンの定理は、「どんな2端子の線形回路も、1つの電圧源VThと直列抵抗RThで置き換えられる」と述べます。ノートンの定理は、同じ回路を電流源INと並列抵抗RNで表すものです。両者の関係は
\(I_N=\displaystyle \frac{V_{Th}}{R_{Th}} , R_N=R_{Th}\)
と書けます。
理論的には常にRTh = RNとなります。具体的な抵抗合成が並列、直列、その他複雑な合成の形になっていても、最終的な“値”としてはノートン抵抗とテブナン抵抗は等しくなります。
どちらを使うかの判断ポイント
両方の定理は回路を簡単化するのに役立ちますが、回路の状況によっては一方がより直感的な場合があります。
-
テブナン形:電圧源(VTh) + 直列抵抗(RTh)
- 電圧や電力に注目するときに有用。
- 負荷を変えたときに電圧がどう変化するかを見たい場合に便利。
-
ノートン形:電流源(IN) + 並列抵抗(RN)
- 電流がどのように分流するかを考えるのに適している。
- 並列接続が多い場合の解析を簡単にできる。
回路の配置によっては、どちらの形が自然に扱いやすいかが変わります。
従属電源や交流要素を含む回路におけるノートンの定理
実際の設計や研究レベルの回路では、従属電源や交流要素が含まれている場合が多々あります。それでも、線形性が保たれていればノートンの定理を適用できます。以下では、従属電源や周波数依存素子が含まれる回路でノートンの定理を使う際の注意点を述べます。
従属電源がある場合
従属電源(制御された電源)は、回路内の他の電気量に依存して値が決まる電圧源又は電流源です。回路全体として線形である限り、ノートンの定理は使えますが、独立電源をゼロ化するときにも従属電源は残しておく必要があります。
従属電源を回路から完全に取り除くことはできません。制御方程式を保ったまま、INやRNを計算する必要があります。
周波数成分

コンデンサやインダクタが含まれている場合、回路は周波数によって異なるインピーダンス特性を示します。ノートンの定理を交流解析に拡張するには、それぞれのコンデンサやインダクタを複素インピーダンスとして表します。
例えば、
\(Z_C=\displaystyle \frac{1}{jωC} , Z_L=jωL\)
というように表し、回路を複素数の領域で扱います。短絡電流を求める手順や電源のゼロ化は、複素数を用いて行う点以外は本質的に同じです。
ノートンの定理の応用:最大電力伝送や負荷調整
ノートンの定理は、回路の形を単純化するだけでなく、負荷条件が変わるときの電力伝送や負荷電流計算などを評価するのにも役立ちます。特に、よく知られた最大電力伝送問題は、ノートン等価を使うと直感的に理解できることがあります。本節では、ノートン形式が負荷条件を最適化したり電力を計算したりするときにどのように役立つかを示します。
最大電力伝送の条件
最大電力が負荷に伝送される条件は、交流(複素インピーダンス)の一般の場合には負荷インピーダンスが等価出力インピーダンスの複素共役になること、すなわちZL=Z*N(同時にRL=RN, XL=−XN)です。直流(純抵抗)に限れば、この条件はRL=RN に簡約されます。
設計上、RLを選択又は調整できる場合、ノートン等価を使うと解析が単純化されることがあります。例えば、アンプの出力段などで、負荷を出力インピーダンスに合わせて最大効率を狙う場合が典型例です。

負荷電流の変化を素早く評価する
INとRNがわかっていれば、RLが変化したときの負荷電流がどのように変わるかを簡単に把握できます。
\(I_L=\displaystyle \frac{I_N×R_N}{R_N+R_L}\)
これは並列回路での電流分割に相当し、負荷電圧は
\(V_L =I_L ×R_L\)
で求められます。テブナン形式を使っても同様の計算はできますが、電流分割に注目する場合はノートン形式のほうが手っ取り早いことが多いです。
ノートンの定理と関連する発展トピック
ノートンの定理を身に付けた後は、他の原理や定理と組み合わせて使うことが実務上は重要です。特に複数の電源や複雑な接続を含む回路では、ミルマンの定理や重ね合わせの理を利用すると段階的に問題を分解できます。本節では、ノートンの定理と密接に関連したいくつかの発展的トピックに触れ、理解を更に深めます。
ノートンの定理とミルマンの定理の関係
ミルマンの定理は、内部抵抗を持った複数の電圧源が並列に接続されたときの合成電圧を求める定理です。ノートンの定理を適用する過程でも、並列に接続された電流源や内部抵抗を合成する計算が頻繁に現れます。これはミルマンの定理が形式化しているアプローチと非常によく似ています。
ノートンの定理と重ね合わせの理の組み合わせ
前述のように、ノートン電流(IN)を求める際、独立電源が複数あるときには重ね合わせの理を用いることが多いです。各電源を単独で考えて短絡電流を求め、それらを合計してINを得ます。小規模な回路ではやや手間がかかりますが、手順が明確で、ノートンの定理との相性も良い手法です。
非線形素子の近似解析
この記事では線形回路を想定してきましたが、実際の半導体回路には非線形素子が含まれることが一般的です。それでも動作点付近で回路を線形化すれば、ノートンの等価を用いた近似解析が可能です。例えば、トランジスタのベース—エミッタ接合をダイオードとみなして小信号インピーダンスを求め、コレクタ電流を従属電源として扱う、などの手法があります。
ただし、動作点をまたいで複数の領域に跨るような大きな振幅の信号を扱う場合は、ノートンの定理を直接適用するのは難しくなります。そのような場合、シミュレーションや数値解析が主流となります。
まとめ
ここまで、ノートンの定理の基本的な概念、等価回路を導く方法、テブナンの定理との関係、さらに複雑な状況への応用などを紹介してきました。最後に、ノートンの定理を実際に活用する際の公式に注目し、重要なポイントを整理します。
-
ノートンの定理の公式
- INは端子を短絡したときの短絡電流IN = ISC
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RNは独立電源をゼロ化したときに見える端子間抵抗負荷電流:IL = IN×RN / (RN+ RL)負荷電圧:VL = IN×(RN×RL) / (RN+RL)
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最大電力伝送と負荷調整
-
最大電力伝送の条件(直流抵抗の場合)RL = RNで負荷が最大電力を受け取る(交流回路ではZL = Z*N)
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テブナンの定理との関係
- 計算式 VTh = IN×RN , RTh= RN
-
重ね合わせの理やノード解析を組み合わせる使い方
- 複数の電源がある場合は重ね合わせの理を使うと短絡電流を求めやすい
-
従属電源や交流要素にも適用可能(線形性が保たれる限り)
- 従属電源は残したまま解析
- 交流要素は複素インピーダンスで扱う
ノートンの定理は、テブナンの定理と並ぶ回路解析の基礎的手法です。
複数の電源や負荷を含む回路においても、ノートンの定理の使い方を習得しておくと電圧・電流をより明確に把握できるようになります。今後の回路設計や学習において、ぜひ活用してみてください。
【資料ダウンロード】 直流回路の基礎まとめ
電気回路設計
基礎編
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