電気回路設計|基礎編
メッシュ解析とは
2025.10.27
メッシュ解析(メッシュ電流法、ループ電流法)は、配線が交差しない平面回路の各メッシュに電流を未知数として設定し、キルヒホッフの電圧法則(KVL)で連立方程式を立てて電圧・電流を求める基本解析手法です。ノード解析と並ぶ代表的な回路解析手法で、特に電圧源が多い回路を効率よく解くことができます。両手法を自在に使い分けられると、より幅広い電気ネットワークに対応できます。以下ではメッシュ解析の原理、基本手順、複数源・依存電源を含む複雑回路への拡張方法を解説します。
メッシュ解析の概要
メッシュ解析は、対象回路が平面回路であることが前提です。各閉ループであるメッシュに未知数としてメッシュ電流を割り当て、回路要素・電源とKVLに基づいて連立方程式を作成します。多くの例題回路は平面回路となっているため、この手法を適用しやすいのが特徴です。

キルヒホッフの法則との関係

回路解析の根幹はキルヒホッフの電圧法則(KVL)とキルヒホッフの電流法則(KCL)です。メッシュ解析では主としてKVLを用いて各ループの式(ループ電流方程式)を立てます。独立した閉経路であるメッシュごとに、回路要素での電圧降下/上昇をメッシュ電流やメッシュ電流の差で表現していきます。なお、上図は 電源を含まないループでKVLの書き方だけを示す例であり、ここでi1=0となるのは電源がないためです。電源Eを含む一般形ではR∑i1=Eなどの形になり、以降の例題ではその場合を扱うことに注意してください。例えば2メッシュ回路でメッシュ電流をI1、I2と名付けると、各ループにKVLを適用して2本の連立方程式が得られます。
メッシュ解析の利点と適用範囲
メッシュ解析は、特に複数の電圧源を含む平面回路で未知量を削減できることが多い点が利点です。閉ループを特定してメッシュ電流を設定するこの直感的なアプローチは、初学段階や設計初期に習得しやすい手法でもあります。
一方、立体配線などの非平面回路ではメッシュ定義が困難若しくは不可能になります。このような場合は、ノード解析など他手法の使用が適切です。
基本手順と例題
メッシュ解析では、閉ループの周りを流れるメッシュ電流を定義し、各ループについてKVLを適用します。以下のStepでは、抵抗と電圧源のみの簡単なケースを用いた標準的な手順を説明します。
Step 1:メッシュ電流の割り当て
まず回路が平面回路であることを確認し、基本メッシュ(他のループを内包しない最小閉経路)ごとにメッシュ電流を任意方向に設定します。慣例として全メッシュを時計回りと決めると符号管理が容易です。
Step 2:各メッシュにKVLを適用
各メッシュについてKVLを回し、要素ごとの電圧降下/上昇をメッシュ電流で表します。メッシュ間で要素を共有する場合、その要素の電圧はメッシュ電流の差で表現します。
各メッシュについて、ループの周りにKVLを適用していきます。各回路要素に電流がどのように流れるか、ループ内に電圧源がある場合は、その極性に注意してください。2つのメッシュが回路素子を共有している場合、その素子の電圧降下を、2つのメッシュ電流がその素子内で異なる方向に流れる場合の差で表す必要があります。
例えば、メッシュ電流I1とI2を持つ2ループ回路を考えます。第1のループには抵抗R1、R2、電圧源E1があり、第2のループはR2を第1のループと共有し、抵抗R3があるとします。各ループについてKVLを書くと、次のような方程式が得られます:
\(R_1 i_1+R_2 (i_1-i_2 )-E_1=0\)
\(R_2 (i_2-i_1 )+R_3 i_2=0\)

具体例:2ループ回路
- メッシュ 1:抵抗R1=10Ω、共有抵抗R2=20Ω、電圧源E1=5V
- メッシュ 2:共有抵抗R2=20Ω、抵抗R3=30Ω
- メッシュ電流i1、i2を時計回りに定義

メッシュ 1にKVL:
\(R_1 i_1+R_2 (i_1-i_2 )-E_1=0\)
数値代入:
\(10i_1+20(i_1-i_2 )-5=0⟹30i_1-20i_2=5\)(1)
メッシュ 2にKVL:
\(R_2 (i_2-i_1 )+R_3 i_2=0\)
数値代入:
\(20(i_2-i_1 )+30i_2=0⟹-20i_1+50i_2=0\)(2)
Step 3:未知変数の数を確認
独立メッシュがn個なら通常n本のメッシュ電流とn本のKVL式が得られます。依存電源があれば制御関係式を追加して、未知量と独立式が一致することを確認します。
Step 4:連立方程式を解く
解の例
(1)(2)を解くと
\(i_1≈0.23A, i_2≈0.091A\)
共有抵抗R2の電流はi1−i2≈0.14A、電圧降下は約2.73Vとなります。
小規模なら代数的消去・代入で十分ですが、メッシュ数が多い場合は行列形にまとめて線形代数手法(あるいは回路シミュレータ)で解くと効率的です。
行列形式によるメッシュ解析
複数の電圧源や3つ以上のループがある場合、すべての連立方程式を手作業で解くのは難解になります。このような場合、方程式を行列形式で書き換え、標準的な線形代数手順(又は回路シミュレーション・ソフトウェア)を適用することで、解析がよりシステマティックになります。以下に、メッシュ解析の行列表現の導き方と解き方について説明します。

行列形式の設定
行列形式の一般形は以下となります。
\(Ax=B\)
- A:各メッシュの合成抵抗と共有要素を含む係数行列
- x=(i1, i2, …, in)T:メッシュ電流ベクトル
- B:電圧源など定数項ベクトル
2 メッシュ例では以下のように変換していきます。

方程式:
\(30i_1-20i_2=5\)(1)
\(-20i_1+50i_2=0\)(2)
行列の形:
\(\begin{pmatrix} 30 & -20 \\ -20 & 50 \end{pmatrix}\begin{pmatrix} i_1 \\ i_2 \end{pmatrix}=\begin{pmatrix} 5 \\ 0 \end{pmatrix}\)
一般式A、X、B:
\(A=\begin{pmatrix} 30 & -20 \\ -20 & 50 \end{pmatrix}\), \(X=\begin{pmatrix} i_1 \\ i_2 \end{pmatrix}\), \(B=\begin{pmatrix} 5 \\ 0 \end{pmatrix}\)
-
Aの行列式を求める:
\(det(A)=30×50-(-20)×(-20)=1500-400=1100\)
-
Aの逆行列を求める(2×2は容易です):
\(A^{-1}=\displaystyle\frac{ 1 }{1100} \begin{pmatrix} 50 & 20 \\ 20 & 30 \end{pmatrix}\)
-
X=A−1Bを計算:
\(i_1≈0.23A, i_2≈0.091A\)
既に算出した解と一致しました。
3ループ以上のメッシュ解析
特定の共有素子と電圧源を持つ3ループ回路は、i1、i2、i3について解くことができる行列方程式を生成します。そこから、回路内の任意の分岐電流又は電圧降下を求めます。

大規模な回路や複雑な回路は、回路シミュレータなどのソフトウェア(MATLAB、Pythonなど)で扱う方が簡単です。行列式の展開や消去法のような系統的な方法などその時々の最適手法で解くことができます。
AC回路への拡張
抵抗Rを複素インピーダンスZR=R、インダクタLをZL=jωL、コンデンサCをZC=1/jωCに置き換えれば、同じ行列表現で周波数応答を求められます。
スーパーメッシュの概念
電流源のような回路要素が2つのメッシュの境界にある場合、それらのメッシュに対してKVL方程式を直接書くことは困難です。このような場合、一般的にはスーパーメッシュ解析手法を用います。スーパーメッシュは、2つのメッシュを電流源の分岐を通らない1つの大きなループに結合することで形成されます。ダイオードやトランジスタなどの非線形素子を含む場合は、動作点で線形化しループ行列を都度更新し収束させる手法(ニュートン–ラフソン法)などを利用します。
スーパーメッシュとは
電流源のような要素が2つのループの間に位置する場合に発生します。その電流源にかかる電圧降下は未知である可能性があるため(単純なオームの法則の関係で直接与えられない)、一時的に2つのメッシュを電流源の分岐を除いた1つの拡張ループとして扱い、その大きな閉じたパスの周囲でKVLを行います。さらに既知の電流源ISの値に関係付ける制約式(例ではIS=i1–i2)を加え、未知電流を求めます。同様の考え方は複数・依存電流源にも拡張できます。図示の都合で一方のメッシュ電流を反時計回りに描く場合は、表記がi1+i2=ISと見えることがありますが、これはi2の向きを統一して書き直せばi1–i2=±ISと同値です。
スーパーメッシュの使用例
メッシュ1とメッシュ2の間に電流源ISがある場合を考え、メッシュ電流i1とi2を定義します。電流源の分岐をスキップして、ループ1とループ2を組み合わせたスーパーメッシュを作成します。このスーパーメッシュに対してKVL方程式を1つ書き、2つのメッシュ電流の差がISに等しいことを利用します。これにより、i1とi2を解くのに必要な連立方程式が得られます。

依存電源を含む回路への適用
メッシュ解析は、純粋な抵抗回路や電圧源ベースの回路に限定されません。回路が平面のままであるか、スーパーメッシュの考え方を用いて処理できる限り、電流源、依存電圧源、依存電流源を持つ回路も扱うことができます。
独立電流源
独立した電流源が完全にループ内にある場合、ノード解析に切り替えるか、そのループを別の方法で扱う方が便利な場合があります。ソースが2つのメッシュで共有されている場合、スーパーメッシュ解析が必要になることがよくあります。あるいは、ノード解析によって未知数の数を減らせるかどうかを検討することもできます。最終的に未知のメッシュ電流やループ方程式がいくつになるか、また独立した方程式がいくつ必要になるかによって決定します。
依存電源
依存電源には、電圧制御電圧源(VCVS)、電流制御電圧源(CCVS)、電圧制御電流源(VCCS)、電流制御電流源(CCCS)の4種類があります。どのような状況でも出力は、回路内の他の場所で測定された電圧又は電流に依存します。
- VCVS、CCVS(依存電圧源):ループ式にα×ixやβ×vxを加える
- VCCS、CCCS(依存電流源):スーパーメッシュや制御変数式を追加
これらの関係は、連立方程式又は行列形式に明示的に挿入する必要があります。この方法は有効ですが、符号の規則と制御変数に注意してください。
ノード解析との比較
メッシュ電流解析とノード解析は、しばしば「どのような場合にどちらかを使うのか?」と疑問が生じることがあります。
ノード解析はキルヒホッフの電流則(KCL)に基づいて未知のノード電圧を設定し、メッシュ解析はキルヒホッフの電圧則(KVL)に基づいて未知のループ電流を設定します。
メッシュ電流方程式を解くと、一般的に、同じ複雑さの回路に対して、ノード電圧法よりも少ない方程式で済みます。特に、電圧源が広く存在し、回路レイアウトが整然とした平面の場合です。

電源の種類と配置、判断基準
| 視点 | メッシュ解析 | ノード解析 |
|---|---|---|
| 基礎法則 | KVL | KCL |
| 未知変数が少なくなる典型 | 電圧源が多い平面回路 | 電流源が多い回路、非平面回路 |
| 使用が難しいケース | 非平面回路、多数の分布電流源 | 電圧源直列接続が複雑な場合 |
- 電圧源が多く平面 → メッシュが有利
- 電流源が多岐に渡る/非平面 → ノードが有利
これらのガイドラインは絶対的なものではなく、メッシュ解析とノード解析のどちらを選択するかは、それぞれのアプローチで解かなければならない未知数の数、電圧源と電流源の配置、回路が平面かどうかを比較して最適手法を選択します。
まとめ
メッシュ解析は、配線交差のない平面回路で特に有効で、電圧源主体の回路では未知量を削減できることが多い手法です。行列形式にすると規模の大きな回路や複雑回路でも体系的に解けます。一方、電流源が多数ある場合や非平面回路ではノード解析ほかの手法が適切です。メッシュ解析とノード解析の両方を習得することで、基礎理論の学習から実際の設計・シミュレーションまで、回路解析の選択肢を大きく広げられます。
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電気回路設計
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