電気回路設計|基礎編

分圧の法則(分圧回路)とは何か?

2025.12.26

分圧回路は、抵抗などの素子を組み合わせて入力電圧を必要な出力電圧に変換する回路です。抵抗値の比率によって出力電圧を制御し、電子機器の動作電圧を調整するために広く利用されています。例えば、LEDやセンサに過剰な電圧が加わらないようにして安全に動作させるなどの用途があります。分圧回路は回路設計における基本要素の1つとされ、多様な場面で応用されています。実際には、アンプ回路やマイコンの入力部など、多くの分圧回路が存在し、信号処理やアナログ制御において重要な役割を果たします。

分圧回路の原理と基本式、計算ツール

ここでは、分圧回路において、抵抗値の比がどのように電圧配分を決定するのかを説明し、関連する式を段階的に導出します。

分圧計算ツール(2抵抗+負荷対応)

2本の抵抗による分圧に、下側抵抗R2と並列の負荷RLを加えた一般形をその場で評価できる計算ツールです。
出力電圧VOUTを主に表示し、分圧比がどの程度変化するかを示します。
使い方は簡潔です。

  1. 入力欄にVIN、上側抵抗R1、下側抵抗R2を入力します。必要があれば負荷RLも入力します。
  2. 単位はツールの設定に従って入力してください。
  3. 計算を実行すると、出力電圧VOUTの変化、分圧電流IR2RLの合成抵抗まで確認できます。

2抵抗+負荷対応

入力パラメータ

計算結果

オームの法則と直列回路

直列回路では、各素子を流れる電流は同一です。一方で、各抵抗にかかる電圧降下は、その抵抗値に比例します。オームの法則は下記の式で表されます。

\(V=I×R⟹I=\displaystyle\frac{V}{R}\)

2つの抵抗による分圧の導出

ここで、抵抗R1R2を直列につなぎ、入力電圧VINを印加し、R2の両端(グラウンド基準)で出力電圧VOUTを測定するとします。回路を流れる電流は上記のIとなります。R2にかかる電圧は以下のとおりです。

\(V_{OUT}=I×R_2\)

この式のIVIN /(R1+R2)を代入すると、次のようになります。

\(V_{OUT}=\displaystyle\frac{V_{IN}}{R_1+R_2}×R_2\)

これが分圧の基本式です。言い換えると、R1R2が直列に接続されている場合、R2にかかる出力電圧VOUTは、

\(\displaystyle\frac{R_2}{R_1+R_2}\)

の比率でVINから分けられた値とも言えます。一方、R1にかかる電圧は以下のとおりです。

\(V_{R_1}=I×R_1=\displaystyle\frac{V_{IN}}{R_1+R_2}×R_1\)

2つの抵抗による分圧の導出

3つ以上の抵抗による拡張

3つを超える複数の抵抗が直列に接続された場合も、同様の考え方が適用できます。例えば、抵抗R1, R2,⋯ RNが直列の場合、回路を流れる電流Iは次のように表されます。

\(I=\displaystyle\frac{V_{IN}}{R_1+R_2+⋯+R_N}\)

ある抵抗の途中点から特定の電圧を得たい場合、その途中点(タップ)以降に接続されたすべての抵抗の合計値RTを考えれば、出力電圧は一般式で以下となります。

\(V_{OUT}=\displaystyle\frac{R_{T}}{R_1+R_2+⋯+R_N}×V_{IN}\)

この式により、任意の数の抵抗からなる直列回路においても、簡単に分圧を計算できます。

各抵抗にかかる電圧は、

\(V_{R_1}=I×R_1, V_{R_2}=I×R_2,⋯\)

というように求められます。各抵抗を流れる電流は同一のため、電圧降下はそれぞれの抵抗値に比例します。回路の途中点で特定の電圧を得たい場合は、途中点以降の合計抵抗値の比率でVINが分割されると考えられます。

3つ以上の抵抗による拡張

分圧の法則

直列回路では、総抵抗値に対する各抵抗の比率によって、その抵抗にかかる電圧が決まります。この考え方は分圧の法則と呼ばれ、任意の抵抗が入力電圧のうちどれだけの割合を得るかを素早く計算できるようにします。これは分圧回路の大部分で用いられる基礎的な概念であり、単純な2抵抗の例から多段の抵抗ネットワークまで応用が可能です。

直列回路での分圧の法則

分圧回路の設計例と具体的な計算手順

ここでは、具体的な値を使って分圧回路を設計する手順をシミュレーションしながら示します。途中の計算を省略せず、分圧の考え方を段階的に確認できます。

2抵抗による基本的な分圧回路の例

抵抗による基本的な分圧回路の例

5Vが入力される回路で3Vに出力させたい場合を考えます。抵抗をR1R2の2本用い、R2端(グラウンド側)で出力VOUTを得る形です。基本式を用いて、

\(V_{OUT}=\displaystyle\frac{V_{IN}}{R_1+R_2}×R_2 ⟹ 3=\displaystyle\frac{5}{R_1+R_2}×R_2\)

となります。これを変形すると、

\(\displaystyle\frac{R_1}{R_2}=\displaystyle\frac{2}{3}\)

さらに、分圧回路に流れる電流を1mA程度に抑えたいと仮定すると、

\(I=\displaystyle\frac{V_{IN}}{R_1+R_2}⟹1×10^{−3}=\displaystyle\frac{5}{R_1+R_2}\)

よって、R1+R2=5kΩとなり、2:3の比率を満たすように具体的にR1=2kΩ, R2=3kΩを選べます。実際にはE24系列の近似値を使ったり、誤差も考慮する必要があります。

分圧回路設計の主な考慮事項

ただ抵抗を2つ以上直列につなぐだけでは不十分になることがあり、理想的な計算と実際の回路で一致しない原因として、抵抗値の公差や負荷変動、温度特性などが挙げられます。こうした要因を考慮しておくことで、最終的な分圧精度を高められます。このセクションでは、分圧比の安定性や消費電力、温度係数などを含む設計上の主要なポイントを説明します。

負荷の影響と負荷変動

分圧回路の出力端子に接続される機器や回路を、一般に「負荷」と呼びます。抵抗R1R2による分圧回路に負荷抵抗RLを並列に接続すると、R2RLが並列になり、抵抗の並列接続を表す記号として「‖」を使い表現します。例えば、抵抗R2と負荷抵抗RLが並列になっている場合、その合成抵抗は以下のように表されます。

\(R_2∥R_{L}=\displaystyle\frac{R_2×R_{L}}{R_2+R_{L}}\)

この合成抵抗によって想定していた電圧よりも低くなる可能性があります。

分圧回路での負荷の影響

ここで上述した2抵抗の分圧回路例で考えてみます。

  • VIN:5V
  • R1:2kΩ
  • R2:3kΩ

出力側に9kΩ程度の負荷がかかると仮定します。R2RLが並列になるため、合成抵抗R2RLは、

\(R_2∥R_{L}=\displaystyle \frac{3k×9k}{3k+9k}=2.25k\)

出力電圧VOUTは、

\(V_{OUT}=\displaystyle \frac{2.25k}{2k+2.25k}×5≈2.65\)

となり、出力させたい3Vを下回る結果となります。このように出力電圧が理想値よりも下がる理由は、負荷抵抗RLが抵抗R2と並列になり、合成抵抗値が元のR2単独の抵抗値よりも小さくなるためです。

負荷を考慮した分圧回路例

もし負荷が瞬時に切り替わるような回路を考えたとき、負荷抵抗RLが小さくなるほどR2RLが小さくなり、(R2RL) / (R1+(R2RL))の比が低下するため、VOUTは理想値より低下します。逆にRLが十分に大きければ(R2RL)≈R2となり、無負荷計算に近づきます。
分圧回路に接続される負荷抵抗が一定ではなく、機器の動作によってインピーダンスが変動する場合、出力電圧も大きく変わります。このため、分圧回路の出力をオペアンプなどの高入力インピーダンス回路でバッファしたり、負荷抵抗が十分に大きくなるように設計するなどの工夫が求められます。あらゆる動作条件をシミュレーションして適切に設計しなければなりません。
※後段「分圧回路と他の回路要素との組み合わせ」でオペアンプによるバッファリングを説明

抵抗値誤差

抵抗には±5%、±1%などの誤差グレードがあります。分圧比を決める比率R1R2が厳密に設定されていても、実際の部品誤差で数%のずれが起こることがあります。高精度が求められるなら、誤差の小さい金属皮膜抵抗や温度特性の良い部品を選択します。

R1 = 7.0kΩ ±1%、R2 = 5.0kΩ ± 1%で、12V→5Vの分圧を想定すると、R2が最大値、R1が最小値の場合などで5Vより上の値が得られる可能性があります。逆の場合は5Vより下がる可能性があり、出力電圧に幅が生まれます。精度を上げたいなら±0.1%など、更に厳しい公差の抵抗を選んだり、トリマーポットで微調整したりします。

分圧回路の抵抗値誤差

温度特性と環境

抵抗器には温度変化によって抵抗値が変化する特性があります。温度係数が大きいと、環境温度の変動によって分圧比が変化する可能性があります。分圧回路で厳密な電圧制御が必要な場合は、温度係数が小さい抵抗(例えば金属皮膜抵抗など)を選んだり、動作温度範囲を限定したりして安定した電圧を得る工夫を行います。

抵抗温度係数(TCR)例

R1R2の温度係数が+100ppm/℃の場合、25℃から35℃へ10℃上がると、それぞれ0.1%増加します。2つの抵抗が同じ程度の変化をするなら分圧比に大きな変化はありませんが、抵抗のばらつきや部分的な発熱状況で異なる変化が起こると出力が変動します。

消費電力と熱問題

分圧回路は常に電流が流れるため、抵抗には電力消費があります。オームの法則やジュール熱の関係から、

\(P=I^2×R\)

又は

\(P=\displaystyle \frac{V^2}{R}\)

で表されるように、抵抗で消費される電力を考慮する必要があります。

特に、高い電圧を分圧する場合や、大きな電流が流れる回路では消費電力が増大し、抵抗の発熱が問題になるかもしれません。抵抗器の定格消費電力を超えないよう注意が必要です。

可変抵抗(ポテンショメータ)を用いた分圧回路

ポテンショメータの構造と役割

ポテンショメータには3つの端子があり、両端が抵抗体の両端、中央には可動端子(ワイパー)が取り付けられています。両端に電圧を印加し、中央端子といずれかの端子の間で電圧を取り出すと、つまみの位置に応じて分圧比を連続的に変えられます。1つの抵抗素子だけで可変分圧を実現できるため、調整用の回路要素として幅広く利用されます。

ここで10kΩのポテンショメータがあると仮定します。端子A(左端)、W(ワイパー)、B(右端)を持ち、この場合A–B間の抵抗は常に10kΩです。ワイパーが角度θ[度]だけ回ると、A-W間の抵抗をR1θ)、W–B間をR2θ)とした場合、

\(R_1(θ)+R_2(θ)=10k\)

という関係が成り立ちます。理想的には、中央でワイパーが50%に位置する場合、R1θ)とR2θ)はおよそ5kΩずつとなります。

※実際のポテンショメータは許容差 ±20%が一般的で、ワイパー接触抵抗(数Ω~数十Ω)が直列に加わるため、精密計測用途では誤差補正が必要です。

ポテンショメータの構造と役割

ポテンショメータ分圧の計算

  • 入力VIN=5V
  • 10kΩポテンショメータ
  • ワイパー位置を0〜100%で変化させる

ポテンショメータの両端を5Vとグラウンドに接続し、中央(ワイパー)を出力VOUTとします。理想的には、ワイパーが0%(GND側)なら0V、100%(5V側)なら5Vとなり、その間を連続的に変化します。30%付近のとき、A–W間7kΩ、W–B間3kΩなら以下のように電圧が得られます。

\(V_{OUT}=5×0.3=1.5\)

ボリューム回路の実例

オーディオアンプの音量調整ノブはログカーブを持つポテンショメータが一般的で、人間の聴覚特性に合わせた変化を実現します。原理としては抵抗比による分圧で音声信号のレベルを絞っていますが、回路全体のインピーダンスが低いと期待どおりの特性にならない場合もあるため、次段アンプの入力インピーダンスとの兼ね合いを考える必要があります。

分圧回路の主な用途

分圧回路がどのように使われるかを知ると、回路設計全体の理解が深まります。ここでは、基本的なバイアス回路、センサ入力のスケーリングなど、代表的な用途を紹介します。

トランジスタ回路のバイアス

トランジスタを必要な動作点(バイアスポイント)に置くためには、ベース電圧やゲート電圧を安定して与える必要があります。抵抗R1R2を直列につないだ分圧回路で安定した分圧比を得て、トランジスタのベース(又はゲート)にかける方法はごく基本的です。ベース電流や温度変化などにより、理想値どおりにはならないこともありますが、アナログ回路では一般的に利用されています。

トランジスタ回路のバイアス

センサ出力のスケーリング

センサからのアナログ出力がマイコンの許容入力範囲を超える場合、分圧回路で安全なレベルに落とすことができます。例えば12Vを最大とするセンサの出力を、5V対応のADCに入力したいときは、R1R2の比を調整して

\(\displaystyle \frac{R_2}{R_1+R_2}×12=5\)

となるように設定すればよいでしょう。

センサー出力のスケーリング

その他の用途

電圧監視やメータ回路
電源の監視やメータ回路など、異なる電圧レベルを測定器やADCが扱える範囲に落とす際にも分圧回路が簡便です。例えば20Vを5Vに分圧する場合は、希望の比率になるように抵抗を選んで接続します。ただし、分圧後のインピーダンスや精度を確保するため、必要に応じてバッファ回路や高精度の抵抗を使用します。

容量性分圧回路
分圧回路は抵抗だけではなく、コンデンサを直列に接続して容量性分圧回路を構成することも可能です。これは、信号や電圧を周波数特性に応じて分割できる利点を持ち、高周波回路などで利用される場合があります。ただし、周波数によってコンデンサのリアクタンスが変わり、分圧比も変化するため、目的の周波数帯での特性を考慮した設計が必要です。抵抗性の分圧とは異なり、DC領域での電力消費は少なくなりますが、他の複雑な問題が発生する可能性もあります。

分圧回路と他の回路要素との組み合わせ

分圧回路は単体で使われるだけでなく、オペアンプやトランジスタなどの能動素子と組み合わせることで、より柔軟な設計が可能となります。ここでは、バッファ回路やフィードバック回路として分圧を利用する例を示します。

オペアンプによるバッファリング

分圧回路の出力をオペアンプの高入力インピーダンスな非反転入力に接続し、電圧フォロワ(バッファ)として動作させると、入力に流れる電流は数 pA~nA程度(入力抵抗換算で数 GΩ超)に抑えられます。したがって分圧点から見れば負荷はほぼ存在せず、流れるのは VIN /(R1+R2) に等しい静的電流と、ごく小さな入力バイアス電流だけです。これにより、負荷抵抗が分圧比に与える影響を大幅に低減できます。

オペアンプによるバッファリング

R1=2kΩ, R2=3kΩ, VIN =5Vで3Vを得たいが、RL=1kΩの負荷が直接かかると出力が大きく下がってしまう場合を考えます。ここにオペアンプの電圧フォロワをかませると、負荷電流はオペアンプが供給し、分圧回路自体の電流は非常に小さくなるため、VOUTをほぼ3Vに保ちやすくなります。

フィードバック回路と分圧

電源回路や制御回路など、目標電圧を設定するために出力電圧を監視・比較するフィードバック経路に分圧回路が使われることがあります。例えば、リニアレギュレータやスイッチングレギュレータでは、出力電圧を分圧して内蔵の基準電圧と比較することで、出力を一定に保つ仕組みが動作します。

代表的なリニアレギュレータでは、内部のフィードバックピンが1.25Vに維持されるため、下記の式により出力電圧VOUTを任意に設定できます。

\(V_{OUT}=1.25\begin{pmatrix}1+\displaystyle \frac{R_2}{R_1}\end{pmatrix}\)

フィードバック回路と分圧

例えば出力電圧を5Vに設定したい場合、

\(5=1.25\begin{pmatrix}1+\displaystyle \frac{R_2}{R_1}\end{pmatrix}⟹\displaystyle\frac{R_2}{R_1}=3\)

となります。このため抵抗の比率はR1R2=1:3(例えば10kΩと30kΩ)と選択できます。このように抵抗比によって分圧し、希望する出力電圧を設定できます。

ボルテージレギュレータにおける分圧

線形(リニア)・スイッチングを問わず、一部のボルテージレギュレータは外付け又は内部の分圧回路によって設定電圧を決めています。フィードバックピンやセンスピンと呼ばれる端子に、分圧された出力電圧が入力され、レギュレータはこの電圧と内部の基準値を比較し、出力を制御します。分圧抵抗に流れる電流が小さすぎるとレギュレータが安定動作しない場合もあるため、マニュアルに記載の推奨電流や抵抗値レンジを確認することが大切です。

分圧回路のまとめ

分圧回路は、抵抗値の比によって入力電圧を分割するシンプルな方法です。トランジスタのバイアス回路、センサ信号のスケーリング、高電圧の監視など幅広い分野で利用されています。実際の設計では、負荷の影響や温度係数、公差など、動作上の要素を十分考慮する必要があります。また、オペアンプでのバッファリングやフィードバック回路への組み込みによって、分圧回路の安定性や応答性を高めることもできます。単純な仕組みながらも用途は多岐にわたり、電子回路設計の基礎として欠かせない存在です。原理を正しく理解し、使用環境や目的に合った部品を適切に選定することが重要です。さらに、必要に応じて温度補償や絶縁技術などを併用することで、安全で安定した設計が可能となります。分圧回路をマスターすることで、より広い視野で回路全体を捉え、多様な場面に応用できるでしょう。

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