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2020.07.28 Siパワーデバイス

ダブルパルス試験によるリカバリ特性評価

ダブルパルス試験によるMOSFETのリカバリ特性評価

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今回は、何種類かのMOSFETを用いたダブルパルス試験の結果を基に、リカバリ特性の考察をします。この評価における試験回路は、前回示した基本回路図を用いています。また、確認のための動作も同様に前回示したものに基づくので、前回の記事を参照しながら読み進めてください。

ダブルパルス試験によるリカバリ特性評価

MOSFETのリカバリ特性の評価を行うため、4種類のMOSFETを使って実際にダブルパルス試験を実施しました。MOSFETはすべてSuper Junction MOSFET(以下SJ MOSFET)で、高速リカバリタイプと通常タイプを使って比較を行いました。

最初に、高速リカバリ特性を備えたSJ MOSFETのR6030JNZ4(PrestoMOS™)と、通常特性のSJ MOSFETであるR6030KNZ4の試験結果を示します。これらのSJ MOSFETはリカバリ特性以外の電気的仕様はほぼ同様で、試験ではQ1、Q2の両方をそれぞれのSJ MOSFETに変更しています。

図1は、前回示した動作③におけるターンON時のID_Lの波形で、図2はターンON損失Eon_Lの波形です。

高速リカバリタイプPrestoMOSと通常タイプSJ MOSFETのドレイン電流ID_Lの波形。
図1:高速リカバリタイプPrestoMOS™と通常タイプSJ MOSFETのドレイン電流ID_Lの波形

高速リカバリタイプPrestoMOSと通常タイプSJ MOSFETの電力損失Eon_Lの波形。
図2:高速リカバリタイプPrestoMOS™と通常タイプSJ MOSFETの電力損失Eon_Lの波形

図1からは、高速リカバリタイプR6030JNZ4(PrestoMOS™)のQ1のリカバリ電流Irrとリカバリ電荷Qrrが、通常型のR6030KNZ4より大幅に小さいことがわかります。

図2は、Qrrの大きい通常タイプのターンON損失Eon_Lが高速リカバリタイプより大きいことを示しており、結果としてQ1のQrrが大きいと、スイッチング損失が増大することがわかります。

次に、同じ条件での、高速リカバリタイプR6030JNZ4(PrestoMOS™)と他の高速リカバリタイプSJ MOSFETとの比較結果を示します。図3は図1と同様のID_L波形の比較、図4は図2と同様のEon_Lの比較です。

高速リカバリタイプR6030JNZ4と他の高速リカバリタイプSJ MOSFETのドレイン電流ID_Lの波形。
図3:高速リカバリタイプR6030JNZ4と他の高速リカバリタイプSJ MOSFETのドレイン電流ID_Lの波形

高速リカバリタイプR6030JNZ4と他の高速リカバリタイプSJ MOSFETの電力損失Eon_Lの波形。
図4:高速リカバリタイプR6030JNZ4と他の高速リカバリタイプSJ MOSFETの電力損失Eon_Lの波形

図3が示すように、R6030JNZ4(PrestoMOS™)は、他の高速リカバリタイプのSJ MOSFETよりIrrとQrrが小さいことからID_Lのピークが小さくなり、その結果図4が示すようにEon_Lが小さいことがわかります。

これらの結果から、MOSFETのボディーダイオード特性におけるリカバリ電流Irrとリカバリ電荷Qrrを低く抑えたMOSFETは、ターンON損失Eon_Lが小さいことがわかります。これは、高速リカバリタイプ同士の比較でも同様です。したがって、設計において損失低減を目指す場合には、MOSFETのリカバリ特性をこのような方法で評価して、最適なMOSFETを選択する必要があります。

最後に、1つ留意事項があります。今回の考察では、リカバリ特性が高速なMOSFETは損失を低減できるとしましたが、リカバリ特性が高速でもターンON損失を低減できない場合があります。その原因の1つとして、セルフターンオンという現象があります。これはMOSFETのゲート容量に起因した現象です。セルフターンオンについては次回詳細を説明する予定です。

キーポイント:

・MOSFETのリカバリ電流Irrとリカバリ電荷Qrrを低く抑えたMOSFETは、ターンON損失EON_Lが小さい。

・これは、高速リカバリタイプ同士の比較でも同様。

・損失低減にはMOSFETのリカバリ特性の評価が重要。

・セルフターンオン現象によって、リカバリ特性が高速でもターンON損失を低減できない場合があることに留意する。

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