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2021.03.30 SiCパワーデバイス

正電圧サージ対策

SiC MOSFET:ゲート-ソース電圧のサージ抑制方法

この記事のキーポイント

・ゲート-ソース間電圧の正電圧サージ対策によって、LSオン時のHS誤オンを防止する。

・方法は各回路に示した対策回路の付加による。

・ミラークランプによる抑制はゲート駆動ICにその制御機能がない場合は困難。

・ミラークランプの代替策として、誤オン抑制コンデンサを追加する方法での対処が可能。

前回は、ゲートーソース電圧に発生するサージの抑制回路例を示しました。今回は、正電圧サージの対策とその効果の例を示します。

なお、ゲート-ソース間電圧に発生するサージについては、先に掲載したTech Web基礎知識 SiCパワーデバイス 応用編の「SiC MOSFET:ブリッジ構成におけるゲート-ソース間電圧の挙動」で詳しく解説していますので参照してください。

正電圧サージ対策

右図は、以前にも示した同期方式Boost回路におけるLSターンオン時のゲート-ソース電圧の挙動です。HS(非スイッチング側)のVGSの正サージである事象(II)を抑制するためには、前回表にまとめたように、サージ抑制回路のミラークランプ用MOSFET Q2、もしくは誤オン抑制コンデンサC1が効果的です(以降の検証回路参照)。

同期方式Boost回路におけるローサイドスイッチターンオン時のゲート-ソース間電圧挙動

抑制回路の効果を検証するため、SiC MOSFET(SCT3040KR)の駆動回路に抑制回路を個別に実装し、その波形を観測しました。参考までに使用したSiC MOSFETの外観と主な仕様を示します。

左:SiC-MOSFETサージ抑制回路の検証に使用するローム製SiC MOSFET SCT3040KRの仕様/右:SiC-MOSFETサージ抑制対策の評価にダブルパルス試験回路を使用

以下の回路は検証のための抑制回路で、(a)抑制回路なし、(b)ミラークランプ用MOSFET(Q2)のみ、(c)クランプ用ショットキーバリアダイオードD2、D3、C2のみ、(d)誤オン抑制コンデンサC1のみの4種類で、ダブルパルス試験にてVGSのサージ電圧を確認しました。

SiC-MOSFETサージ抑制対策の検証用回路

各検証回路を使ったダブルパルス試験の波形を示します。以下はターンオン時の波形で、上からスイッチング側ゲート-ソース電圧(VGS_HS)、非スイッチング側ゲート-ソース電圧(VGS_LS)、ドレイン-ソース電圧(VDS)、ドレイン電流(ID)を示しており、上記の抑制回路(a)、(b)、(c)、そして、前回示した正電圧抑制回路(b)の波形を(e)として、4つの波形を重ねて表示しています。(e)の回路は上記(b)~(d)のすべての抑制回路を備えた回路になります。

左:SiC-MOSFETサージ抑制検証回路のダブルパルス試験での波形/右:ダブルパルス試験回路

上記波形図から明らかなように、対策回路がない(a)およびクランプ用SBDのみの(c)においては、正サージ電圧を押さえ込むことができずにVGS_LSが盛り上がり、ゲートオンのしきい値を大きく超え、IDも他の回路比べて大きくなっていることがわかります。つまり、非スイッチング側のMOSFET(この場合はLS)が誤オンしていることになります。

この誤動作を防止するためには、ミラークランプ回路を備えた対策回路(b)が必須になります。ミラークランプ回路を実装するには、ミラークランプ用MOSFETを駆動する制御信号が必要になります。この信号は、VGS電圧をモニタリングしながら駆動タイミングを制御する必要があり、一般的に駆動ICにその機能が備わっていることが多いため、この制御機能を備えていない駆動ICを使う場合は、この対策回路を実装することが困難になります。

その場合、検証回路(d)に示すように、MOSFETのゲート-ソース間に誤オン抑制コンデンサC1を接続し、サージ対策回路とすることが可能です。以下に、誤オン抑制コンデンサC1を接続した場合のターンオン波形を示します。波形(a)はC1なし、波形(b)、(c)、(d)はC1を2.2nF、3.3nF、4.7nFとした場合の波形です。C1のない(a)に比べ、C1を備えた(b)、(c)、(d)ではVGS_LSの盛り上がりが小さくなり、IDのターンオンサージも小さくなっていることがわかります。

SiC-MOSFETサージ抑制検証回路、誤オン抑制コンデンサを追加した場合のダブルパルス試験での波形

ただし、IDの波形からもわかるように、誤オン抑制コンデンサC1を接続すると、その容量に応じてターンオン動作が遅くなり、そのためスイッチング損失が増加します。したがって、C1の容量は必要最小限の値にする必要があります。今回の評価では、波形(b)を示した2.2nFが適正と言えます。

次回は、負電圧サージの対策を予定しています。

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