SiCパワーデバイス|応用編
ドライバーソース端子の有無による違いと効果
2021.10.26
この記事のポイント
・ドライバソース端子を備えることで、VGS_INTに対するVLSOURCEの影響を排除できる。
・これによりターンオン速度を改善できる。
前前回、ドライバーソース端子の効果を解説する前提として、ドライバーソース端子を持たない従来パッケージMOSFET(以下、従来MOSFET)における、スイッチング動作中の電圧を確認しました。今回は、ドライバーソース端子を備えたMOSFETの動作とドライバーソース端子の効果を確認します。
ドライバーソース端子の有無による違いと効果
下の左図は、従来MOSFETの駆動回路、右下はドライバーソース端子を備えたMOSFETの駆動回路です。違いは、駆動回路のリターン線の接続であり、従来MOSFETではソース端子に接続され、ドライバーソース端子を備えたMOSFETではドライバーソース端子に接続されており、ソースは別途パワーソース端子となっています。また、各青色の矢印でスイッチング動作中の電圧を示してあります。

スイッチング動作中の電圧は、青色の矢印が示すようにどちらも同じように発生します。あらためて説明すると、VGが印加されMOSFETがターンオンするとIDは増加し、LSOURCEに図中(I)の方向にVLSOURCEが発生します。ゲート端子には電流IGが流入するため、RG_EXTで電圧降下VRG_EXT(I)が発生します。
このように、発生する電圧は同じですが、従来MOSFETの場合は、VLSOURCEとVRG_EXT(I)がターンオン時の駆動回路網に含まれるため、MOSFETのターンオン動作に必要なチップ上の電圧VGS_INTが減少して、結果としてターンオン速度の低下を招いています。対してドライバーソース端子を備えている場合は、IDはパワーソース端子に流れドライバーソース端子には流れず駆動回路網に含まれないため、VGS_INTに対するVLSOURCEの影響を排除できます。これを式で示します。

ドライバーソース端子を備えている場合は
の項(=VLSOURCE)を排除できるため、VGS_INTにこの分の電圧が影響しないことがわかります。これが、ドライバーソース端子の効果であり、これによりターンオン速度を改善できます。
次回は動作波形からドライバーソース端子の効果を確認する予定です。
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SiCパワーデバイス
基礎編
応用編
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