SiCパワーデバイス|応用編
パッケージによるサージ発生の違い
2022.09.13
この記事のポイント
・SiC MOSFETのパッケージの種類によって、ドレイン-ソース間に発生するサージが異なる。
・TO-247-4LはTO-247Nに比べ、駆動回路の経路を変更することでスイッチング速度を速くしているため、サージが大きくなる傾向にある。
設計に関連して知っておくべきこととして、ドレイン-ソース間に発生するターンオフサージがSiC MOSFETのパッケージによって異なることを説明します。
- ドレイン-ソース間に発生するサージ
- スナバ回路の種類と選定
- Cスナバ回路の設計
- RCスナバ回路の設計
- 放電型RCDスナバ回路の設計
- 非放電型RCDスナバ回路の設計
- パッケージによるサージ発生の違い
SiC MOSFET:パッケージによるサージ発生の違い
SiC MOSFETのパッケージの違いによって、サージ発生が異なる例を紹介します。
図11は、SiC MOSFETの代表的なパッケージです。(a)は広く一般的に使用されているTO-247N(3端子)、(b)は近年採用が増えている駆動回路用ソース端子(いわゆるケルビン接続)を備えたTO-247-4L(4端子)です。

(b)のTO-247-4Lは(a)TO-247Nに比べ、駆動回路の経路を変更することでスイッチング速度を速くしたパッケージです。そのため、ターンオンサージやターンオフサージが(a)よりも大きくなる傾向にあります。
図12に、これら2つのパッケージ品のターンオフサージの比較波形を示します。測定回路は、「非放電型RCDスナバ回路の設計」で示した図9の(a)と同じです。VDS=800V、RG_EXT=3.3Ω、ID=65A時のターンオフ波形で、ドレイン-ソース間サージは(a)TO-247N(3L、青線)が957Vなのに対し、(b)TO-247-4L(4L、赤線)は1210Vと大きくなっています。
このサージによるVDSのリンギングは、「非放電型RCDスナバ回路の設計」の図7や図8で示したように、CDSのみならずCDGとCGSも経由して流れるため、MOSFETのゲート-ソース間電圧VGSに予期しないサージを発生させることがあり、VGSのサージ規格を超えてしまうことがあります。そのためVGSのサージ抑制方法について、Tech Web基礎知識の「SiC MOSFET:ゲート-ソース電圧のサージ抑制方法」、および別途アプリケーションノート(*2)で詳しく解説していますが、その対策だけではサージ抑制効果が不十分な場合、ドレイン-ソース間へのスナバ回路の付加がサージ抑制に対して有効な場合もあります。
*2:「ゲート-ソース電圧のサージ抑制方法」 アプリケーションノート(No. 62AN009J Rev.002)ローム株式会社, 2020年4月
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SiCパワーデバイス
基礎編
応用編
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