AC-DC コンバータ|評価編

絶縁型フライバックコンバータの性能評価とチェックポイントとは

2024.08.07

絶縁型フライバックコンバータの性能評価は、効率的で信頼性の高い電源設計のために重要です。性能評価には、使用する電源ICの特性を把握し、設計目標に基づいた回路構築が必要です。また、設計した回路が仕様を満たしているか確認するためには、詳細な測定と分析が必要です。
この記事では、絶縁型フライバックコンバータの性能評価のポイントとチェック項目について詳しく説明します。

はじめに

「絶縁型フライバックコンバータの性能評価とチェックポイント」と題して、絶縁型フライバック方式のAC-DCコンバータ回路の性能評価のための測定方法と、実測データ例を示します。また、評価する際に性能面だけではなく、正常動作しているかどうかを確認するための重要チェックポイントについて説明していく予定です。

性能評価では、最初に評価を行う回路を構成するための電源ICの特徴を理解することから始めます。「設計編」の「AC-DC PWM方式フライバックコンバータ設計手法」でも説明したように、昨今の電源設計においては使う電源ICの理解が必須だからです。

続いて、電源としての設計目標、例えば出力電圧精度などの仕様を決めて、それを実現するための回路設計を行います。この章の目的は評価方法を知っていただくことなので、設計自体の説明は割愛しますが、評価を行う電源回路を確認します。

最後に、その回路を使った電源IC評価用のボードを使って、設計目標を達成できているかどうかを確認します。

次の項として、設計した回路が正常に動作しているかどうかを確認するためのチェックポイントと測定方法を説明します。基本的に設計目標を満足していれば大方は問題ないのですが、マージンや潜在的な問題などをチェックしなければ、量産、そして出荷することはできません。チェックポイントは、一種のノウハウです。経験や実績に基づき、的確かつ短時間で潜在的な問題を発見することが可能になります。

性能評価事例に用いた電源ICの概要と押さえるべき特徴

設計した絶縁型フライバックコンバータの性能をどのように評価するかを説明していきます。そのためには、どのような設計目標や仕様で、どのような絶縁型フライバックコンバータが設計されたかがわかっている必要があります。もちろん、実際には設計が先に行われているので、その設計情報を基にすれば良いのですが、ここでは電源仕様を確認するところから始めます。

この設計事例でも、電源用ICを利用して電源回路を構築します。随所で述べてきましたが、近年の電源設計は、基本的に電源用ICの性能や機能に大きく依存します。必要な電源仕様を実現するには、それが実現可能な電源用ICを探し、そのICの設計例に従って設計を進めることになります。それでは、使用する電源用ICに関する確認から始めます。

PWM制御 AC-DC コンバータIC:BM2P014

評価用回路には、BM2P014という、AC-DCコンバータ用のICを使います。下の図は、IC内部の機能ブロックと絶縁型フライバックコンバータを構築した場合の外付け部品と結線です。ICの概要は以下のとおりです。

  • ・650V スイッチングMOSFET内蔵
  • ・PWM 周波数65kHz
  • ・電流モード、サイクルごとの過電流リミッタ機能
  • ・軽負荷時バースト動作/周波数低減機能
  • ・\(V_{CC}\)端子の低電圧保護/過電圧保護
  • ・SOURCE端子の短絡/開放保護、Leading-Edge-Blanking機能
  • ・ソフトスタート機能
  • ・2次側過電流保護(絶縁構成の場合)
  • ・動作電源電圧範囲:\(V_{CC}\):8.9V~26.0V、DRAIN: ~650V
  • ・動作電流:通常時 0.950mA(Typ)、バースト時 0.400mA(Typ)
  • ・動作温度範囲:-40℃ ~ +105℃
  • ・パッケージ:DIP7 9.20×6.35×4.30mm

PWM制御 AC-DC コンバータIC:BM2P014

せっかくなので、これらの特徴や図から読み取れるポイントを挙げておきます。

  • ・高耐圧のMOSFETを内蔵しているので、設計に際してMOSFETの選定や定数の設定をする必要がない。
  • ・構成例から外付け部品が非常に少ないことがわかる。
  • ・軽負荷時の効率維持のためのバースト動作や待機時電力低減機能を備えている。
  • ・必要となる各種保護機能を備えている。
  • ・動作温度範囲は産業用途にも対応できる範囲。

今回の事例では、この様な特徴をもったICを使って、絶縁型のAC-DCフライバックコンバータを設計します。

さらなる電源ICの詳細を知りたい方は、データシートを参照してください。

性能評価事例の設計目標と回路

設計する電源回路の仕様、つまり設計目標とそれを達成するための回路を確認します。設計に関して詳細を知りたい場合は、「設計編」を参照願います。

設計目標(電源仕様)

必然的なプロセスとして、電源の設計に入る前には(電源だけではありませんが)、設計目標として設計する電源の仕様を決定します。仕様は、電力を供給する先の要求に基づくのはいうまでもありません。ここでは、以下を設計目標とします。

パラメーター Min Typ Max 単位 条件
入力電圧 90 264 VAC
無負荷時入力電力 50 mW 入力:100VAC/230VAC
出力電圧 11.4 12 12.6 V
出力電流 1.5 A
出力リップル電圧 100 mV 帯域幅20MHz
効率 80 % 出力:12V/1.5A

入力電圧は、ユニバーサル入力とも呼ばれる世界のほとんどの国の電源に対応する仕様です。±10%のマージンを設定してあります。

無負荷時入力電力は、待機時電力のことです。Energy Starなどでは厳しい目標値が設定されています。ここでは、Energy Starに該当しませんが、十分小さな値を設定しています。

出力リップルは、この類の仕様ではかなり小さな100mVを最大値とします。

効率は80%を最小値として、高効率なAC-DCコンバータを目指します。

設計回路と部品

評価用回路には、設計目標を満たすであろう以下の回路を使います。参考までに部品の一覧も示します。

設計回路と部品

設計回路と部品

トランスは、YPP1183となっていますが、念のため詳細を提示します。

設計回路と部品

設計回路と部品

実際の回路基板

上記の回路と部品で作った実際の回路基板の写真を示します。AC-DCコンバータゆえ高圧部品を含むので、近年の全表面実装DC-DCコンバータとは少しイメージが違いますが、写真のとおり非常にコンパクトです。この回路基板を使って評価を行い、設計目標を満足するかを確認します。

実際の回路基板

評価ボードを使った性能評価:測定方法と結果

上記で確認した回路と実装基板を使って、設計目標をクリアしているかの評価を行うための測定方法と測定結果を示します。実装基板は、実際にはBM2P014という電源ICの評価用のもので、販売もされています。

この表は、前項で示したものと同じで、今回の設計目標です。

パラメーター Min Typ Max 単位 条件
入力電圧 90 264 VAC
無負荷時入力電力 50 mW 入力:100VAC/230VAC
出力電圧 11.4 12 12.6 V
出力電流 1.5 A
出力リップル電圧 100 mV 帯域幅20MHz
効率 80 % 出力:12V/1.5A

記載のあるパラメーターを測定します。以下は、測定方法及び条件と使用する測定器です。また、測定ポイントも示します。

パラメーター 条件 計測
入力電圧 昇降圧変圧器にて90VAC、100VAC、230VAC、264VACを印加 電圧計(AC)、電力計
入力電流 各入力電圧、出力負荷電流時に測定 クランプ電流計、電力計
入力電力 入力電力を測定 電圧計(AC)、電力計
クランプ電流計(AC)
出力電圧 各入力電圧、出力負荷電流時に測定 電圧計(DC)
出力電流 可変負荷装置などにて0A~1.5A 電流計(DC)
出力リップル電圧 オシロスコープにて波形観察 オシロスコープ
効率 上記測定結果から計算 出力電力÷入力電圧(%)

絶縁型AC/DCコンバータ

パラメーターは見てのとおり、基本的には電圧と電流です。マルチメーターと電力計があれば、簡単に測れます。交流の測定には、やはり電力計が便利です。もちろん、クランプ電流計でも対応できます。

出力リップル電圧は、オシロスコープで出力波形を観察します。出力リップルは、ピーク電圧を知る必要があるので、オシロスコープでの観察は必須です。

条件設定のために必要になるのは、入力として、100VACから90VAC~264VACを発生させるための昇降圧可能な変圧器と、出力の負荷電流を設定するための可変負荷装置です。

注意事項は、高電圧を扱うことです。入力電圧は最大264VACを扱います。また、1次側の整流電圧は372VDCになります。いうまでもありませんが、生命にかかわります。短絡や接触には最大の注意を払い、必ず安全対策をして測定を行ってください。
以下に実測値を示します。

参考実測値

最低入力電圧、公称入力電圧、最大入力電圧で、負荷電流をゼロから10mA、100mA、500mA、1A、1.5Aまでの6条件で測定しました。効率は計算で求めます。円で囲んだ数値は、設計目標に該当するものです。出力リップル電圧は、以下の波形でした。オシロスコープのプローブですが、標準のクリップ付グランド線でグランドを取ると、波形に実際には存在しない乱れやスパイクが乗ることがあります。プローブを直接差し込む専用コネクタを使用するが一番ですが、写真のようにできるだけグランド線を短くして測定するだけでもかなり効果はあります。

出力リップル電圧

それでは、測定結果をまとめます。

パラメーター Min Typ Max 単位 結果
入力電圧 90 264 VAC この範囲において正常動作
無負荷時入力電力 50 mW 入力100VAC時:32mW
入力230VAC時:36mW
出力電圧 11.4 12 12.6 V 最低:12.08V
最大:12.09V
出力電流 1.5 A 1.5Aで正常動作
出力リップル電圧 100 mV 74.0mVp-p
効率 @1.5A 80 % 最小:83.8%
最大:84.4%

結果は、各パラメーターの最大値、最小値を満たしており、設計目標を達成しています。もちろん、使った回路、部品、基板は評価用のものなので、この設計目標を達成するように調整や修正が済んでいます。実際の設計においては、満足しない項目が出てきます。この作業の目的はデバッグなので、問題を見つけて、その原因を突き止め、処置をすることにあります。

また、測定においては、設定条件ちょうど、例えば入力は90VAC~264VACの範囲だけではなく、部品のマージンを考慮した上で、多少条件を厳しくしてみて傾向も確認しておくべきです。この場合であれば、90VAC~264VACは±10%のマージンなので、±15%ぐらいまでは確認してみます。「±10%では良好だったが±11%にしたら急に動作しなくなった」ということがあるかもしれません。これは、マージンがないという判断になり、通常は見直しに入ります。

もし、この設計目標値を電源の保証値とするのであれば、どのくらいのマージンをもたせるか、別途基準を決めておく必要があります。

重要チェックポイント:MOSFETの\(V_{DS}\)と\(I_{DS}\)、出力整流ダイオードの耐圧

絶縁型フライバックコンバータの机上の設計から始まり、試作をして評価に入り、設計目標つまり出力電圧や効率という、電源としての仕様を満たしているかどうかの評価の話をしてきました。ここからは、仕様以外に確認しておくべき重要チェックポイントについて説明をしていきます。

最初に、通常の仕様の評価と、これから説明するチェックポイントの違いを説明しておきます。以下の表は、例題として使っている回路の設計目標で、何度かでてきているものです。これらの項目や数値は、電源の仕様としては一般的なもので、その測定方法などは既に説明しました。例えば出力電圧は、条件を設定して、まずは電圧計で電圧を測定して、測定値が設定した上限と下限の内側に入っていれば、仕様を満たしているという判断ができます。

しかしながら、実際にはもう少し詳しく、若しくは別の見方で評価して、事前に潜在的な問題やマージン的なものを確認して、量産がスムーズに進むようにしておくことは非常に重要です。このレベルの評価には、「何をどう見るか」という経験とノウハウが必要です。

パラメーター Min Typ Max 単位 条件
入力電圧 90 264 VAC
無負荷時入力電力 50 mW 入力:100VAC/230VAC
出力電圧 11.4 12 12.6 V
出力電流 1.5 A
出力リップル電圧 100 mV 帯域幅20MHz
効率 80 % 出力:12V/1.5A

MOSFETのドレイン電圧と電流

下の図は、例題に使っているMOSFET内蔵の電源IC、BM2P014の出力段の内部ブロックと、フライバックコンバータ構成時の外付け回路の一部です。

内蔵のMOSFETは、ICのDRAIN端子にドレインが、SOURCE端子にソースがつながっています。このMOSFETはトランスの1次側をスイッチして2次側にエネルギーを伝達する役目をしており、電源としての出力を生成する重要な機能を担っています。

当然のことながら、ここでのスイッチング動作や波形がおかしければ正常な出力は得られません。

MOSFETのドレイン電圧と電流

以下に、このMOSFET(IC)の\(V_{DS}\)と\(I_{DS}\)を示します。

MOSFETのドレイン電圧と電流

左は、起動時の波形で、右は定常動作での波形です。起動時は、入力電圧が動作電圧に達するとスイッチング動作が始まり、\(V_{DS}\)は基本的に\(V_{IN}\)+\(V_{OR}\)とGND電位のスイッチ波形を示します。\(I_{DS}\)はそれに連動します。この波形は、おおよそ良好な例です。その理由としては、起動後特に乱れがなく定常動作に移行していることと、スイッチングに関連して発生しているスパイクが出てはいますが、突飛なものは見られず、MOSFETの定格(650V)以内であることが挙げられます。

右の定常時の波形は時間軸を拡大してあり、スイッチにともなう\(V_{DS}\)と\(I_{DS}\)の関係がわかります。ここでは、各波形が回路構成から想定できるものであること、異常なスパイクやリンギング、果ては発振などが生じていないことを確認します。(回路動作や波形の詳細は、「AC-DC PWM方式フライバックコンバータの設計手法」を参照ください。)

基本的に、\(V_{DS}\)と\(I_{DS}\)がスパイクやリンギングを含めて定格を超えていないことを確認します。条件として、入力電圧、負荷電流、温度に関して、上限と下限での測定マトリクスを組みます。これで、各条件に対する特性の変動傾向を観察でき、それを回路動作と部品の特性から裏付けまでを行うと、以後のノウハウとなります。

以下に、MOSFETのチェックポイントと条件設定をまとめます。

MOSFETのチェックポイント チェック時の条件設定
  • ・起動がスムーズに行われているか
  • ・異常なスパイクやリンギングがないか
  • ・波形は回路動作の想定と合致するか
  • ・\(V_{DS}\)、\(I_{DS}\)は想定どおりで、定格を超えていないか
  • ・入力:最小値~最大値まで
  • ・負荷電流:最小値~最大値まで
  • ・温度:最小値~最大値まで
  • ・この測定マトリクスを組み、傾向を観察する

出力整流ダイオードの耐圧

先に示した回路図の2次側にある、出力整流ダイオードに印加される\(V_R\)、逆電圧に問題がないか確認します。このダイオードには、\(V_{IN}\)×巻線比+\(V_{OUT}\)の最大値が逆電圧としてかかります。実際に印加されている電圧が、\(V_R\)の定格を超えていないか、異常な波形になっていないかを観察します。(回路動作や波形の詳細は、「絶縁型フライバックコンバータの基本」を参照ください。)

出力整流ダイオードの耐圧

上の波形は、出力整流ダイオードの\(V_R\)の波形の一例になります。

実際に観察される波形や電圧、電流は、全くの計算値どおりで、教科書にあるような理想的なものとは異なります。特に波形については、寄生容量やインダクタンスなど外乱要因があり、測定方法の影響も受けます。観察しているものが良いのか悪いのかは経験がないと判断が難しいと思います。その際に役に立つのは、メーカーが提供している評価ボードです。多少回路は違っても、基本的には理想に近い動作状態にあるので、それと自身のものを比較するのは現実的な良い方法だと思います。

以下に、出力整流ダイオードのチェックポイントと条件設定をまとめます。

出力整流ダイオードのチェックポイント チェック時の条件設定
  • ・異常なスパイクやリンギングがないか
  • ・波形は回路動作の想定と合致するか
  • ・\(V_R\)は想定どおりで、定格を超えていないか
  • ・入力:最小値~最大値まで
  • ・負荷電流:最小値~最大値まで
  • ・温度:最小値~最大値まで
  • ・この測定マトリクスを組み、傾向を観察する

重要チェックポイント:トランスの飽和

トランスの飽和

ここで説明するトランスT1の飽和は、フライバック動作を司る一次巻線と二次巻線に関するものです。T1には、電源ICの電源\(V_{CC}\)を生成する第三巻線(端子4、5)が付属していますが、これに関しては、別途\(V_{CC}\)の生成が設計どおりに行われていることをチェックします。

トランスの飽和

最初に、トランスの飽和についておさらいしておきます。トランスに使用される磁性材料(鉄、フェライトなど)には、飽和磁束密度という特性があります。トランスの一次巻線に流れる電流を増やしていくと磁界強度が大きくなりますが、磁束密度は無限に大きくなるわけではなく、電流の増加に対して磁束密度がほとんど増加しなくなる限界があります。この状態を飽和磁化といい、このときの磁束密度が飽和磁束密度です。

この限界を超えて飽和磁化状態になることを、トランスの飽和といいます。これは、インダクタでも同じです。トランスの飽和は、磁束密度が増えないだけではなく、厄介なことにインダクタンスが急激に減少します。

インダクタンスが減少すると、直流に対する抵抗分はトランスの巻線の抵抗分だけになってしまいます。つまり、トランスが飽和すると大電流が流れてしまいます。これが、電源設計においてトランスの飽和が問題になる理由です。これは、インダクタについても同様です。

トランスの飽和

上の波形データは、トランスの一次側をスイッチする内蔵MOSFETの\(I_{DS}\)で、緑のラインが正常、つまりトランスは飽和していない状態です。それに対し赤の破線は、トランスが飽和した場合の典型的な波形を示しています。

上述のように、トランスが飽和状態になると大電流が流れてしまうので、\(I_{DS}\)に電流スパイクとも言える急激な電流増加が生じます。この電流が過大であれば、MOSFETが破壊に至ることがあります。

トランス設計の際は、一次側の最大電流\(I_{ppk}\)が計算され適切なトランス設計が行われているはずですが、波形データのようなIDS電流波形が観察された場合には、トランス設計を見直す必要があります。トランス設計に関しては、こちらを参照してください。

以下に、トランスの飽和のチェックポイントと条件設定をまとめます。

トランスの飽和のチェックポイント チェック時の条件設定
  • ・ドレイン電流\(I_{DS}\)の電流波形をオシロスコープと電流プローブなどを利用して観察する
  • ・トランスが飽和している場合は、\(I_{DS}\)の上昇の傾きが変化して、急激に\(I_{DS}\)が上昇する
  • ・この電流上昇は、MOSFETなどの破壊を引き起こすことがある
  • ・トランスの飽和が確認された場合、\(I_{ppk}\)など関連する実際の状態を確認する
  • ・場合によってはトランスの設計を見直す必要がある
  • ・入力電圧:最小値、最大値(電源起動時、定常時)
  • ・負荷電流:最大値
  • ・環境温度:温度条件の上限お及び下限温度

重要チェックポイント:\(V_{CC}\)電圧、\(V_{CC}\)回路、\(V_{CC}\)要件

\(V_{CC}\)電圧

\(V_{CC}\)電圧は、電源ICが動作するための電源です。この回路では、トランスを利用して、入力電圧を降圧して電源ICの\(V_{CC}\)電圧を生成しています。

VCC電圧

最初に、この回路についておさらいしておきます。基本的にどのようなICでも、動作するために電源は必要です。もちろん、他のデバイスのための電源となる電源ICも同じです。DC-DCコンバータの場合、入力電圧はDC電圧で、一般的には入力源が高電圧であっても100VDC以下です。ところが、AC-DCコンバータの場合は、まず、入力はAC電圧です。そして、国内仕様でも入力は100VAC、ユニバーサル入力では許容差を入れると85~264VACが入力になります。この設計では入力は後者になりますが、いずれにせよ通常のAC-DCコンバータ用の電源ICは、このAC電圧を\(V_{CC}\)として直接利用することはできません。

この回路では、\(V_{CC}\)に適するDC電圧を生成するために、トランスの一次巻線と二次巻線に加えて第三の巻線(補助巻線)を設け、入力AC電圧を降圧及び整流して低DC電圧に変換する方法を取っています。

第三巻線に発生する電圧はダイオードD4によって整流しますが、大きなリップル含んでいるのでコンデンサC5により平滑します。R5はサージによる\(V_{CC}\)電圧上昇を制限する抵抗です。

さて、ここからが本題です。この電源ICの\(V_{CC}\)電圧は、8.9V~26Vが推奨動作範囲になっています。もちろんDC電圧です。ここでのチェックポイントは、この\(V_{CC}\)電圧が適正であるかどうかという点になりますが、電圧上昇を制限するR5が適正で十分に機能しているかに注目する必要があります。

通常動作において、MOSFETがオンからオフになった瞬間に、トランスのリーケージインダクタンスによりサージ電圧が発生します。このサージ電圧は第三巻線により誘起され、結果的に\(V_{CC}\)電圧を上昇させます。リーケージインダクタンスは、トランス仕様により異なるので、やはり実測により、R5が実際に発生する電圧上昇を許容範囲に抑えているかをしっかり確認する必要があります。電圧上昇により許容範囲を超える場合はR5の値を少し増やしますが、あまり大きくすると損失が増えるので、通常は5~22Ω程度が適切な範囲です。

\(V_{CC}\)電圧はオシロスコープを使って、電圧波形を確認するべきです。その際には、第三巻線でのAC波形やサージの大きさなども見て、あまりにサージが大きい場合は、その原因が何かを確認したほうが良いでしょう。

条件に関して、推奨動作範囲は8.9V~26Vなのに対して、最小電圧を9.7Vとしています。これは、\(V_{CC}\)が降下して9.7Vを切ると、\(V_{CC}\)充電機能が起動し、VH端子から起動回路を介して\(V_{CC}\)を充電し\(V_{CC}\)を上昇させる動作を無用に作動させないためです。この機能はこの電源ICが持つ起動を確実にするためのもので、これが働くこと自体は問題ありません。しかし、起動後に安定状態になると起動回路をオフにして無駄な電力消費を押さえるようにしているため、本来の障害以外でこの回路を作動させる必要はありません。そういった意味で、\(V_{CC}\)充電機能が作動する9.7Vを切らないようにR5を設定します。この電源ICの\(V_{CC}\)充電機能については、データシートの9ページを参照ください。なお、推奨動作範囲の最小電圧8.9Vは、VCC降下時のUVLO作動電圧の最大値です。

チェックポイントと条件
  • ・入力電圧:最小及び最大、負荷:最小(無負荷)時に\(V_{CC}\)電圧が9.7V以上であること
  • ・入力電圧:最小及び最大、負荷:最大時に\(V_{CC}\)電圧が26V未満であること

重要チェックポイント:出力過渡応答と出力電圧立ち上がり波形

出力過渡応答

出力電圧の重要な特性の一つに過渡応答特性があります。この過渡とは出力電流、つまり負荷電流が急激に変動することを意味していますので、正確に表現すると出力電圧負荷過渡応答特性となります。英語の用語でカタカナ語を使うこともあり、過渡応答はトランジェントレスポンス(transient response)と呼ばれています。

この特性が重要な理由は、負荷電流に対する出力電圧の安定性にかかわる項目であること、外付け回路の部品定数によって最適化が可能である、言い換えれば特性を確認してより良い特性に調整できるからです。

過渡応答の確認は、以下の条件の組み合わせにおいて電圧波形を観察します。オシロスコープ、負荷装置、そして負荷電流波形も確認すべきなので、電流プローブも必要です。

出力過渡応答

チェック時の条件設定
  • ・入力電圧:最小、最大
  • ・負荷電流:最小→最大、最小←最大
  • ・環境:温度条件の上限及び下限

負荷の切り替えを連続的に行うと、左上の波形図のような波形が観察されるはずです。負荷電流が急激に減少すると出力電圧は一瞬持ち上がり、ある時間をもってほぼ設定電圧に戻ります。負荷電流が急増した場合はこの逆で、出力電圧は一瞬低下して、ほぼ元に戻ります。観察のポイントは、
1)出力電圧の変動がどのくらいの時間で安定状態に回復する(戻る)のか、
2)出力電圧の変動にリンギング、オーバーシュートやアンダーシュートなどの波形の乱れがないか、
の2点になります。

1)に関しては、変動電圧が小さく、安定状態に戻る時間が速い方が望ましい特性、つまり過渡応答が高速で、変動の収束が速いと言えます。2)に関しては、波形図で説明されているように、リンギングなどがないのがベストです。左上の波形図は良好な例です。

もし、過渡応答特性が要求を満たさない場合は、帰還ループの位相余裕とゲイン余裕を調整することになります。具体的には、右上の回路図で示した関連する外付け回路の部品定数を調整します。これらの部品を試行錯誤で調整することも可能ですが、経験がないと何をどのくらい調整すると良いのか見当が付きにくいと思います。定量的に位相とゲインの状態を測定し、余裕度を確認して調整していくのが最初のうちは確実な方法だと思います。測定には、FRA(周波数特性分析装置)を使うのが便利で簡単です。

調整においては、一般に応答速度を速めると安定性が低下する傾向にありますので、位相余裕を維持しながら最も速い応答が得られるように調整することになります。念のために申し上げますが、負荷過渡による出力変動をゼロにすることはできません。

出力電圧立ち上がり波形

こちらも出力電圧波形の確認になりますが、入力電源をオンにしたときの出力電圧の立ち上がり特性を観察します。方法や測定器は過渡応答特性とほぼ同じなので、一連の確認としてセットにすると能率の良い評価ができます。違いは、出力負荷電流を連続して切り替える必要がないことになります。

出力電圧立ち上がり波形

チェック時の条件設定
  • ・入力電圧:最小、最大
  • ・負荷電流:最小、最大
  • ・環境:温度条件の上限及び下限

※リンギング、オーバーシュートやアンダーシュートがないか確認する。

確認は上記条件の組み合わせになります。例えば、入力電圧最小、負荷電流最大、温度下限という条件をセットして、入力電源をオンしたときの出力電圧波形を確認します。これはワンショットで確認すべきです。観察するポイントは、出力波形にリンギング、オーバーシュートやアンダーシュートが発生しているか否かになります。これらが発生すると、出力電圧が安定するまでに必要以上の時間を要するだけではなく、あまり大きな変動があると、給電されるデバイスが誤動作したりリセットがかかる可能性があります。

実は、これも出力の応答特性の一つと考えることができます。そういう意味でも過渡応答との兼ね合いがあるので、これら一連の確認であるといえます。リンギング、オーバーシュートやアンダーシュートの最適化は、過渡応答と同じように位相とゲインの余裕を調整することで得られます。それとは別にソフトスタートや負荷容量の関係で立ち上がり波形は変わってくるので、何によって観察される波形がそうなっているかということも検討する必要があります。

示した波形図は良好な特性を示しています。

重要チェックポイント:温度測定と損失の測定

この項では、温度と損失の測定と算出方法を説明します。目的は、電源ICのジャンクション(接合部)温度\(T_j\)が、実動作の最大温度条件においても最大定格\(T_{jmax}\)を超えていないかを確認することです。最大定格は絶対に超えてはいけない値ですので、これを超えるような状態があってはなりません。もし、超えるようなことがあれば、著しく寿命が短くなったり、破壊に至ったりする可能性があります。 また、温度と損失の測定は、定格を超えないことの確認の他に、信頼性の観点から実際の\(T_j\)を知ってディレーティングを行うことにもつながります。

合わせて、損失のチェックが必要なのは、損失=発熱となるからです。許容損失の観点から見れば、実際の損失が許容損失以下であることがチェックポイントになりますが、最終的には\(T_j\)がどのくらいかという原点に行きつきます。関連して、損失要因を把握することで、場合によっては損失を改善し、発熱を低減できます。もちろん、これは効率改善にもつながります。

温度測定と損失のチェックポイント チェック時の条件設定
  • ・電源ICの\(T_j\)が最大定格を超えていないか
  • ・損失がデータシートに示されている許容損失以下か
  • ・入力電圧:最大
  • ・負荷電流:最大
  • ・環境:温度条件の上限

温度測定

今回の事例に使った電源ICはパワートランジスタ内蔵タイプなので、電源用ICのジャンクション温度を測定します。なお、パワートランジスタが外付けのものは、第一の発熱源は外付けのパワートランジスタなのですが、コントローラICのパワートランジスタゲートドライブ用の電流が小さくない場合があるので要注意です。

さて、ジャンクション温度\(T_j\)を知る必要があるのですが、ICチップは大抵パッケージの中に樹脂封止されているので、直接的に測定することはできません。そこで、周囲温度\(T_a\)やケース(パッケージ)温度\(T_c\)の実測値と熱抵抗に基づいて\(T_j\)を算出します。下の図は、熱抵抗と温度の関係を示しています。熱抵抗\(\theta_{ja}\)はジャンクション(チップ)から雰囲気中までの全熱抵抗であり、\(T_j\)は\(T_a\)+自己発熱、発熱は熱抵抗×電力、という基本から成り立つ以下の式で、\(T_j\)を求められます。

基本式:

\(T_j = T_a + P \ast \theta_{ja}\) 及び \(\theta_{ja} = \theta_{jc} + \theta_{ca}\)

\(\theta_{jc} = ({T_j – T_c}) / P\) [℃/W]

\(T_j = T_c + P \ast \theta_{jc}\)

例:BM2P014の場合

1層基板:\(\theta_{ja}\) = 125.0 [℃/W]、 \(\theta_{jc}\) = 29 [℃/W]

2層基板:\(\theta_{ja}\) = 62.5 [℃/W]、 \(\theta_{jc}\) = 16 [℃/W]

(条件:70mm 基板)

例:BM2P014

熱抵抗に関しては、ICメーカーが提供しているものを参照します。データシートなどに記載がない場合は、問い合わせてみてください。

\(T_a\)若しくは\(T_c\)を実測するわけですが、\(T_a\)の測定は意外と大変です。測定は熱電対で周囲の雰囲気温度を測れば良いのですが、発熱体の近くと発熱体から離れた場所ではかなり温度が違います。また、実機では筐体の中だったり空冷ファンが回って空気が動いていたりなど、どの条件での雰囲気温度を\(T_a\)とするかという問題があります。経験則を用いて解決できないわけではありませんが難問です。

それに対して\(T_c\)の測定は、近年、サーモグラフィや放射温度計などが普及したので、比較的簡単にできるようになりました。もちろん、熱電対を使って測定することも可能ですが、熱電対をパッケージに接触させる必要があり、熱電対による放熱が起こるなど、正確な測定はけっこう大変です。間違っても、熱電対の先をテープでパッケージ上面に貼り付けて測定しないでください!昨今の事情を考えると、赤外線を利用した非接触温度計を使うのが良策です。

もう一つ、パッケージのどこの温度を、この計算で使う\(T_c\)とするかという問題があります。上のパッケージの図を見ていただければ容易に想像できると思いますが、パワートランジスタの真上とあまり電力を消費しないコントロールチップの上では\(T_c\)は異なります。基本的には、パッケージ表面温度が一番高い所の値を使います。そういう意味では、サーモグラフィは便利です。また、熱電対の場合は他に細かい条件がありますが、パッケージの中央で測るというのが一般的だと思います。

損失の測定

熱抵抗、\(T_c\)若しくは\(T_a\)のデータが得られれば、上記の式での計算に必要なのは\(P\)、つまり消費電力=損失(電力)となります。損失は単純には電圧×電流で求められます。例えば、LDOリニアレギュレータでは、(入力電圧-出力電圧)×(出力電流+自己消費電流)が損失している電力になりますが、スイッチングレギュレータの場合は、スイッチングにより電力を切り出しているので、平均の消費電力を求める必要があり、その算出は少し複雑になります。以下に原則的な算出式を示します。

\(P = \displaystyle \frac{\int_{0}^{t} I(t) V(t) \, dt}{T}\)[W]

基本的に、平均電力\(P\)は、電流と電圧の積を時間で積分した値を、時間\(T\)で割り算したものになります。これを実際のスイッチングに当てはめます。考え方として、1周期には大まかに、オフ→オン(\(T1\)~\(T2\))、オン期間(\(T2\)~\(T3\))、オン→オフ(\(T3\)~\(T4\))、オフ期間(\(T4\)~\(T5\))の4つの状態があるとして、以下のように4つの区間に分けて計算します。実際の積分計算は、積分公式を用います。

損失の測定


$$
P = \displaystyle \frac{\int_{t_1}^{t_2} IV \, dt + \int_{t_2}^{t_3} IV \, dt + \int_{t_3}^{t_4} IV \, dt + \int_{t_4}^{t_5} IV \, dt}{T}
$$
[W]

この計算を行うためには、上述の4つの区間の時間と電圧/電流が読み取れる波形データが必要で、特に遷移時の波形は立ち上がり/立ち下がり時間とセトリングの時間の電圧/電流との関係がよく分かる波形を取得する必要があります。これは、読み値を上記に式に代入して計算するためです。

損失の測定

測定と計算によって求められた\(P\)、損失(消費電力)を、上記の\(T_j\)の算出式に代入して、\(T_j\)を求めます。\(T_j\)の最大定格は、150℃なので、それ以下であることを確認します。

\(T_j = T_a + P \ast \theta_{ja}\) 又は \(T_j = T_c + P \ast \theta_{jc}\)

許容損失は、下のグラフ(BM2P013のデータシートから抜粋、PCB:74.2mm×74.2mm×1.6mm ガラスエポキシ 2 層基板実装時)から求めます。ICとしては、\(T_a\) = 105℃が動作温度範囲ですので、その際に約750mWを許容できるのがわかります。電源としての動作温度の最大値を使う場合には、IC近辺の\(T_a\)が必要になります。いずれの温度条件でも、損失が許容損失以内であるのが最低条件です。

損失の測定

この項では、理論的な説明を中心にしましたが、実際の温度や損失の計算方法や計算例がロームのウェブサイトから提供されていますので、是非とも参照願います。

重要チェックポイント:アルミ電解コンデンサ-寿命計算と劣化症状「容量抜け」

昨今、電解コンデンサというと、アルミ電解に加えてタンタルや機能性高分子の電解コンデンサが存在しますが、ここでの話は、基本的に最も標準的なアルミ電解コンデンサをイメージしていただければと思います。アルミ電解コンデンサは比較的安価で大容量を得られるので、特にAC-DCコンバータの場合の入出力の大容量コンデンサには、標準的な選択肢だと思います。そういった意味で、あまり細かい検討がなされず使用されるケースがありますので、ここで注意すべき事項を確認します。

アルミ電解コンデンサは寿命を意識して使う部品

どのような部品にも寿命はあるのですが、例えばICなどの半導体部品は、突発的なものを除けば、その寿命予測からは特に寿命を意識しなくても機器の耐用年数を十分に満足します。ところが、一般にアルミ電解コンデンサの寿命は比較的短く、稼働中の電源に経年変化による性能劣化が発生する可能性があります。

アルミ電解コンデンサの寿命は温度による加速が大きく、一般には「10℃ 2倍則」とも呼ばれている「アレニウスの法則」に則ります。これは、温度が10℃上がると加速係数は2倍になり、寿命は1/2になるという意味です。もちろん、その逆に10℃下げることができると寿命は2倍になるという意味でもあります(実際の個別寿命算出は、コンデンサメーカー提供の計算式などにて算出願います)。

コンデンサにリップル電流が流れると、内部インピーダンスによる損失のため発熱が起こります。アルミ電解コンデンサは比較的ESRが大きく、流れるリップル電流が大きな場合はそれなりの発熱が生じることを認識しておくことが重要です。
例えば、「105℃/2000時間」という予測寿命のアルミ電解コンデンサを、75℃で使うことができれば16,000時間の寿命予測となりますが、95℃になれば4000時間の寿命を想定する必要があります。また、この予測寿命時間を見て、ICなどに比べるとはるかに短いことがわかると思います。

アルミ電解コンデンサが劣化すると

さて、アルミ電解コンデンサが寿命により劣化するとどうなるのか、ということですが、基本的には静電容量が低下します。これを液漏れや容量抜けなどということもあります。電源回路としてみれば、容量が低下すると本来必要だった容量が得られないので、以下のような症状が発生し、給電されているデバイスの動作に問題が生じます。

  • ・入力コンデンサの場合⇒リップル電圧の上昇、保持時間の低下(蓄電できる電荷が少ないため)
  • ・出力コンデンサの場合⇒リップル電圧の上昇、出力制御ループの安定性低下(応答に影響が出る)

注意点

基本的には、なるべくコンデンサの温度を低く抑えることになりますが、大原則として以下を押さえてください。

  • ・使用するコンデンサのリップル電流定格を確認し、回路のリップル電流を十分カバーする定格のものを選択する。
  • ・評価時には下図のように実際のリップル電流を確認する。
  • ・同様に、コンデンサの温度も十分に確認して寿命予測を行う。
  • ・条件によっては、ディレーティングや、実装は発熱体から遠ざけるなど、少しでも温度を下げる対策を講じる。
  • ・寿命予測を行い、それに基づく予測寿命の提示や保守保全を行う。

以上、アルミ電解コンデンサに関する注意点を記しました。電源設計者にとっては既知の内容かもしれませんが、設計ではこれらを考慮した部品を使ったのに、量産時に同じ容量の汎用アルミ電解コンデンサに変更されてしまい、市場において問題が発生したというような話は聞かないでもありませんので要注意です。扱いなれた部品でも、注意が必要なことは多々ありますので、ここで取り上げました。

注意点

絶縁型フライバックコンバータの性能評価とチェックポイント ーまとめー

本記事では、絶縁型フライバック方式のAC-DCコンバータ回路の性能評価のための測定方法と実測データ、そして、評価する際に性能面だけではなく、正常動作しているかどうかを確認するための重要チェックポイントについて説明してきました。

性能評価に関しては、評価を行う回路を構成するための電源ICの特徴や特性を十分に理解することが重要です。何度か話に出しましたが、近年の電源設計においては電源ICを使うことが一般的で、それゆえに電源ICの理解なしに設計は不可能だからです。また、基本的に使う電源ICのデータシートに基づいて設計を行い、示されている特性や機能がそのとおりかどうかを確認していきますので、その重要性は理解いただけたと思います。また、評価の基準として、電源ICメーカーが提供している評価用ボードを利用することも非常に有効な手段であることも記しました。

実際の評価に関しては、設計した回路が正常に動作しているかどうかを確認するためのチェックポイントと測定方法を説明しました。手順として、電源ICのデータシートに示されている特性グラフや評価ボードの特性と、自身が設計した回路の特性を比較していくわけですが、マージンや潜在的な問題などをチェックしなければ、量産、そして出荷することはできません。そのためのチェックポイントや判断基準は、まさに電源設計のノウハウです。社内に継承された技術情報や、個人の経験や実績に基づき、的確かつ短時間で潜在的な問題を発見して確実な設計と製造を行うことが重要です。

当然ながら、これらのノウハウを自身のものにするには、何より設計をして評価を行うことを繰り返すことになります。特にAC-DCコンバータは高電圧を扱いますので、測定に関してまずは安全を確保するための知識と経験が必要です。


【資料ダウンロード】 絶縁型フライバックコンバータ 性能評価とチェックポイント

電源ICを使った絶縁型フライバック方式AC-DCコンバータの性能評価方法を、実測データ例を交えて解説したハンドブックです。また、重要チェックポイントについても説明します

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