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2021.04.13 Siパワーデバイス

重負荷時におけるスイッチング素子の動作に関する注意点

位相シフトフルブリッジ回路の電力変換効率向上

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この記事のキーポイント

・重負荷時にtrrが長い場合、進みレグのターンOFF時に寄生バイポーラトランジスタが誤ONして、MOSFETが破壊する可能性がある。

・PSFB回路は、リカバリー中のBody Diodeのバイアスがほぼ0Vなため電荷放出が遅くなり、結果としてtrrが長くなる。

・PSFB回路ではtrrが小さいMOSFETを使用することが重要。

・高速リカバリー型SJ MOSFETであってもメーカーやシリーズによって性能に差異があるので、選択には十分な検討が必要。

重負荷時においてMOSFETのBody Diodeのリカバリー時間trrが長く、電流が残っている場合、進みレグのMOSFETのターンOFF時に寄生バイポーラトランジスタが誤ONしてしまい、MOSFETが破壊する可能性があります。これは、ターンOFF時に発生する、ドレイン-ソース間容量CDSへの充電電流によって寄生バイポーラトランジスタが自発的にON(誤ON)してしまい、瞬間的に大電流が流れることによって起こります。

インバータ回路などでは、MOSFETのBody Diodeに順方向電流が流れている状態で、高電圧の逆バイアスを印加することにより強制的にBody Diode内の電荷(Qrr)を急速に放出します。この放出に要する時間がtrrなので、結果としてtrrが短くなります。

一方、PSFB回路では、リカバリー中のBody Diodeにかかるバイアスがほぼ0Vであるため、電荷放出が遅くなり、結果としてtrrが長くなります。下図に、進みレグのMOSFETのVDS、ID、リカバリー電流の概略図を示します。

trrが長くなると、リカバリーによって発生する電流は図の赤点線のようにシフトしていきます。つまり、ターンOFF時にMOSFET中に電荷が残存していることになり、より電流が流れやすく、寄生バイポーラトランジスタの誤ONが発生しやすくなります。

PSFD回路、進みレグのMOSFETのVDS、ID、リカバリー電流の概略図

t0~t1: MOSFETの出力容量から放電し、Body Diodeに順方向電流が流れ始める。
t1~t3: Body Diodeが導通している期間。
t1~t5: MOSFETがターンONし、ON状態の期間。
t3~t4: Body Diodeのリカバリー電流が流れる期間。trrが長いと、この期間は長くなる。
t5~t6: MOSFETがターンOFFする。この時、trrが長いと寄生バイポーラトランジスタが誤ONしやすくなり、MOSFETが壊れる。

このような理由からPSFB回路では、trrが小さいMOSFETを使用する必要があります。単純にはtrrが小さければ小さいほど有効性は高まります。市場にはtrrが小さい高速リカバリーを特徴としたSJ MOSFETが流通していますが、メーカーやシリーズによってtrrや関連するパラメータに差異があります。したがって、選択には十分な検討が必要です。

遅れレグのMOSFETでも、ターンOFF時に発生する寄生バイポーラトランジスタの誤ONは起きる可能性があります。しかし、PSFB回路の動作で説明したように、進みレグに比べIDが正である期間が長いためtrrによる影響を受けにくくなり、遅れレグのほうが寄生バイポーラトランジスタの誤ONによるMOSFETの破壊は発生しにくくなります。進みレグと同じく、リカバリー電流の概略図を示します。

PSFD回路、遅れレグのMOSFETのVDS、ID、リカバリー電流の概略図

t0~t1: MOSFETの出力容量から放電し、Body Diodeに順方向電流が流れ始める。
t0~t2: Body Diodeが導通している期間。
t1~t4: MOSFETがターンONし、ON状態の期間。
t2~t3: Body Diodeのリカバリー電流が流れる期間。trrが長いと、この期間は長くなる。
t4~t5: MOSFETがターンOFFする。進みレグと比較してリカバリーによる影響を受けにくいため、寄生バイポーラトランジスタの誤ONは発生しにくい。

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