2022.03.29 Siパワーデバイス
LLCコンバータの基本動作
LLCコンバータにおける一次側スイッチング素子のリカバリー特性の重要性
この記事のキーポイント
・一般的にLLCコンバータは、Gainが1より大きくMOSFETターンONがZVS動作を行う領域(2)で動作する。
・領域(2)におけるLLCコンバータの回路動作は、10のModeに分類される。
前回の「LLCコンバータの動作の特徴」に続き、3つ目の「LLCコンバータの基本動作」を説明します。
LLCコンバータの基本動作
LLCコンバータは、前回示した図2の領域(2)においてMOSFETのターンONがZVS動作となるので、一般的にこの領域で使用されます。図3は領域(2)における動作波形です。Q1、Q2のドレイン電流波形(ID_Q1、ID_Q2)は、ターンON時にZVS動作していることを示しています。

図3.領域(2)におけるLLCコンバータの動作波形
領域(2)におけるLLCコンバータの回路動作は、図3の下部に示したように10のModeに分類されます。各Modeの動作を、以下の図4-1~10に示します。

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Mode(1)
- ・Q1はON状態、Q2がOFF状態。
- ・一次側には負荷電流、励磁電流の両方が流れる。
- ・二次側にはD1を介して電流ID1が流れる。このときLrとCrの共振による正弦波状の電流が流れる。
- ・ID1が0Aになると、次の動作モードに移行する。
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Mode(2)
- ・Mode(1)に引き続き、Q1はON状態、Q2がOFF状態。
- ・D1に流れる電流が0Aになると、一次側の負荷電流も0Aになるが、励磁電流は流れており、この励磁電流がCrを充電する。
- ・この充電期間が長いと充電電荷量が大きくなり、出力電圧が上昇する。
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Mode(3)
- ・Q1がターンOFFする。
- ・励磁電流が流れ、Q1の出力容量Coss_Q1を充電し始める。
- ・同時にQ2の出力容量Coss_Q2が放電を始める。
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Mode(4)
- ・Coss_Q1の充電、Coss_Q2の放電が完了した後、励磁電流はQ2のボディダイオードを介して流れる。
- ・ボディダイオードに電流が流れることでVDS_Q2がほぼ0Vとなる。これにより、MOSFETのターンON時のスイッチング損失もほぼ0になる。
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Mode(5)
- ・Q2がターンONする。
- ・ターンONの前に励磁電流がボディダイオードを流れているので、ターンONはZVS動作となる。
- ・Crは充電されたことにより、電源として機能する。これにより一次側に負荷電流が生じ、D2を介して二次側に負荷電流が流れる。
- ・励磁電流は負荷電流と逆方向に流れるが、トランス一次側に負電圧が印加されるので励磁電流は減少して行き、やがて負荷電流と同方向になる。
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Mode(6)
- ・Q1はOFF状態、Q2がON状態。
- ・一次側には負荷電流、励磁電流の両方が流れる。
- ・二次側にはD2を介して電流ID2が流れる。このときLrとCrの共振による正弦波状の電流が流れる。
- ・ID2が0Aになると、次の動作モードに移行する。
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Mode(7)
- ・Mode(6)に引き続き、Q1はOFF状態、Q2がON状態。
- ・D2に流れる電流が0Aになると一次側の負荷電流も0Aになる。このとき一次側には励磁電流が流れており、この励磁電流がCrを充電する。
- ・この充電期間が長いと充電電荷量が大きくなり、出力電圧が上昇する。
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Mode(8)
- ・Q2がターンOFFする。
- ・励磁電流が流れ、Q2の出力容量Coss_Q2を充電し始め、同時にQ1の出力容量Coss_Q1が放電を始める。
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Mode(9)
- ・Coss_Q2の充電、Coss_Q1の放電が完了した後、励磁電流はQ1のボディダイオードを介して流れる。
- ・ボディダイオードに電流が流れることでVDS_Q2がほぼ0Vになる。これにより、MOSFETターンON時のスイッチング損失もほぼ0になる。
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Mode(10)
- ・Q1がターンONする。
- ・Mode(5)と同様、ターンONの前に励磁電流がボディダイオードを流れているので、ターンONはZVS動作となる。
- ・Crは充電されたことにより、電源として機能する。これにより一次側に負荷電流が生じ、D1を介して二次側に負荷電流が流れる。
- ・励磁電流は負荷電流と逆方向に流れるが、トランス一次側に負電圧が印加されるので励磁電流は減少して行き、やがて負荷電流と同方向になる。
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図4-1~10:LLCコンバータの10の動作モード
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