電気回路設計|基礎編
直列回路とは:接続の見分け方と電流・電圧・合成抵抗の計算
2026.10.19
直列回路は、複数の素子を分岐のない一つの電流経路上に接続した回路です。分岐のない直列区間では、各抵抗に同じ電流が流れます。電源電圧は各抵抗の電圧降下の和に等しく、合成抵抗は各抵抗値の和として求められます。
本記事では、ノードと分岐による直列接続の見分け方と、合成抵抗、回路電流、電圧降下、消費電力の計算方法について解説します。また、電源電圧と各抵抗値を入力することで計算結果が求められる「直列回路計算ツール」も紹介します。
直列回路計算ツール
電源電圧と各抵抗値を入力すると、直列回路の合成抵抗、回路電流、各抵抗の電圧降下、消費電力を計算できます。対象は、抵抗器を直列に接続した直流の定常回路です。
計算ツールを読み込んでいます。
分岐のない直列区間では、各抵抗に同じ電流が流れます。計算結果では、各抵抗の電圧降下の和が電源電圧に一致し、各抵抗の消費電力の和が電源の供給電力に等しくなります。式の導出と計算過程は、「直列回路の計算方法」で説明します。
計算結果は、配線抵抗と電源の内部抵抗を無視し、入力値を公称値とした理想回路に基づく値です。実回路へ適用する際は、電源電圧の変動、抵抗値の許容差、温度条件を確認します。
直列回路の構造と接続の見分け方
回路図から直列区間を見つけるには、隣接する素子が共有するノードと、そのノードから伸びる枝路の有無を確認します。分岐のない接続と負荷が追加された接続を比較し、同じ電流が流れる範囲を見分けます。
2端子素子間のノードに分岐がなければ直列
二つの2端子素子が一つのノードを共有し、その共有ノードから別の電流経路が分岐していなければ、二つの素子は直列です。ノードとは、導線で直接つながり、理想回路では同じ電位にあるとみなされる接続点です。
図1では、電源の正極から抵抗R1、接続点A、抵抗R2 を順に通って負極へ戻る閉じた経路が一つだけあります。図中の青い矢印は回路電流I の向きを示します。接続点Aに分岐がないため、R1 を通った電流はそのままR2 に流れます。
図1:分岐のない直列回路。電流I はR1 とR2 を順に流れる。
この経路上の部品や配線が開放すると、閉じた電流経路は成立しなくなります。理想回路では回路全体の電流が0 Aになります。
分岐がある場合は単純な直列として扱えない
二つの2端子素子の接続点から別の枝路が分岐している場合、その二つの素子に同じ電流が流れるとは限りません。そのため、この二つの素子を単純な直列接続としては扱いません。図2は、抵抗 R1 の後の接続点Aで電流がR2 側と負荷抵抗RL 側へ分岐する例を示しています。R1 を流れる電流I は、枝路電流I2 とIL の和になります。
図2:接続点Aで電流が分岐する回路。R1 とR2 だけを単純な直列として扱えない。
この回路では、R1 を流れた電流がR2 側と負荷抵抗RL 側に分岐します。R2 とRL は同じ二つのノードに接続されているため並列であり、R1 はその並列部分と直列です。R1 とR2 だけの抵抗値を加算するのではなく、回路の接続関係により等価抵抗を求めます。
反対に、回路図上で離れて描かれた素子でも、電流経路をたどったときに途中の分岐がなければ直列です。直列かどうかは、回路図の形や配置ではなく、ノードのつながり方で判定します。
直列回路の特性:電流・電圧・抵抗の関係
抵抗器を接続した直列回路では、「電流は共通」「電圧は分担」「抵抗は加算」という三つの関係が成り立ちます。これらは、オームの法則とキルヒホッフの法則を組み合わせて導かれます。
各抵抗を流れる電流は等しい
直列に接続された各抵抗には、同じ電流が流れます。図1のように、n個の抵抗R1~Rnが直列に接続されている場合、各抵抗を流れる電流は次の式で表されます。
\(I=I_1=R_2=⋯=I_n\)
途中に分岐がないため、各抵抗を流れる電流は等しくなります。抵抗値が異なる場合でも、各抵抗を流れる電流は共通であり、抵抗値の違いは各抵抗の電圧降下に反映されます。
各抵抗の電圧降下の和は電源電圧になる
抵抗Ri に電流I が流れる場合、両端の電圧降下Vi はオームの法則により求められます。
\(V_i=IR_i\)
一つの電源と複数の抵抗からなる閉回路では、各抵抗の電圧降下の和が電源電圧VS に等しくなります。
\(V_S=V_1+V_2+⋯+V_n\)
各抵抗には同じ電流が流れるため、電圧降下は抵抗値に比例します。抵抗Ri の電圧降下は、合成抵抗Rtotal を使用して次式でも表せます。
\(V_i=V_S\displaystyle \frac{R_i}{R_{total}}\)
この式は、対象となる抵抗列に同じ電流が流れている場合に適用されます。途中のノードに負荷を接続すると電流が分岐するため、負荷を含む回路として計算します。
合成抵抗は各抵抗値の和になる
直列回路全体を一つの抵抗に置き換えたときの抵抗値を、合成抵抗又は等価抵抗と定義します。各抵抗には共通の電流I が流れるため、電源電圧は次のように表されます。
\(V_S=IR_1+IR_2+⋯+IR_n\)
右辺をI でまとめると、
\(V_S=I(R_1+R_2+⋯+R_n)\)
となります。回路全体に対するオームの法則VS = IRtotal と比較すると、合成抵抗は次式で求められます。
\(R_{total}=R_1+I_2+⋯+R_n\)
正の抵抗値を持つ抵抗器を直列に追加した場合、合成抵抗は増加します。電源電圧が一定の場合、回路電流は減少します。電圧・電流・抵抗の関係は、「オームの法則|電圧・電流・抵抗の関係」で解説しています。
直列回路の計算方法
直列回路の計算では、まず、直列として扱える範囲を特定し、その範囲の合成抵抗から回路電流を求めます。続いて、各抵抗の電圧降下と消費電力を算出し、電圧と電力の収支によって計算結果を検算します。
合成抵抗、電流、電圧、電力の順に求める
直列回路の計算は、次の手順で行うと、各計算結果の関係を追いやすくなります。
- 各抵抗値を加算し、合成抵抗Rtotal を求める。
- 電源電圧VS を合成抵抗で割り、回路電流I を求める。
- 回路電流と各抵抗値から、各抵抗の電圧降下Vi を求める。
- 各抵抗の消費電力Pi を求める。
- 電圧と電力の収支により計算結果を検算する。
使用する式は次のとおりです。
\(R_{total}=R_1+R_2+⋯+R_n\)
\(I=\displaystyle \frac{V_S}{R_{total}}\)
\(V_i=IR_i\)
\(P_i=V_i I=I^2 R_i=\displaystyle \frac{V_i^2}{R_i}\)
計算前に、電圧・電流・抵抗の単位を統一します。
例示計算:12 V電源に3.3 kΩと6.8 kΩを接続する
この条件を直列回路計算ツールへ入力した場合の計算結果を例として以下に示しています。12 V電源に3.3 kΩと6.8 kΩの抵抗を直列に接続した回路について、合成抵抗、回路電流、各抵抗の電圧降下、消費電力を順に求めます。計算に用いる回路を図3に示します。ここでは、配線抵抗と電源の内部抵抗を無視し、抵抗値には公称値を使用します。
図3:例示計算で使用する12 V、3.3 kΩ、6.8 kΩの直列回路
合成抵抗は、まず一般式を示し、次に各抵抗値を代入します。
\(R_{total}=R_1+R_2\)
\(R_{total}=3.3 kΩ+6.8 kΩ=10.1 kΩ\)
回路電流は、オームの法則により電源電圧と合成抵抗から求めます。
\(I=\displaystyle \frac{V_S}{R_{total}}\)
\(I=\displaystyle \frac{12 V}{10.1 kΩ}≈1.188 mA \)
となります。以降の計算では、丸め誤差を抑えるため、この値を小数第3位まで保持します。各抵抗の電圧降下は、一般式Vi = IRi に回路電流と各抵抗値を代入して求めます。
\(V_1=IR_1 \)
\(V_1=1.188 mA×3.3 kΩ≈3.92 V \)
\(V_2=IR_2 \)
\(V_2=1.188 mA×6.8 kΩ≈8.08 V \)
となります。R2 は R1 より抵抗値が大きいため、電圧降下も大きくなります。
各抵抗の消費電力は、一般式Pi = I2Ri に回路電流と各抵抗値を代入して求めます。
\(P_1=I^2 R_1 \)
\(P_1=(1.188 mA)^2×3.3 kΩ≈4.66 mW \)
\(P_2=I^2 R_2 \)
\(P_2=(1.188 mA)^2×6.8 kΩ≈9.60 mW \)
となります。これらは公称値による計算値です。実際の回路では、電源電圧の精度や抵抗値の許容差などにより、電流、電圧、消費電力が変化します。
電圧と電力の収支で検算する
各抵抗の電圧降下の和が電源電圧に等しいことを確認します。
\(V_S=V_1+V_2 \)
\(V_S≈3.92 V+8.08 V=12.00 V \)
となり、電源電圧と一致します。
抵抗で消費される電力の合計は、一般式に各抵抗の消費電力を代入して求めます。
\(P_R=P_1+P_2 \)
\(P_R≈4.66 mW+9.60 mW=14.26 mW \)
電源が供給する電力は、一般式に電源電圧と回路電流を代入して求めます。
\(P_S=V_S I \)
\(P_S=12 V×1.188 mA≈14.26 mW \)
となります。丸め誤差を除き、抵抗の消費電力の合計と電源の供給電力は一致します。検算結果が一致しない場合は、接続関係、単位換算、電圧の符号、途中値の丸め方を確認します。
直列回路と並列回路の違い
直列回路では各素子に同じ電流が流れ、並列回路では各枝路の両端電圧が等しくなります。並列回路で電圧が等しくなるのは、各枝路の両端が同じ二つのノードへ接続されるためです。図4に、両者の接続と電流・電圧を示します。
図4:直列回路と並列回路の接続、電流、電圧の違い
| 比較項目 | 直列回路 | 並列回路 |
|---|---|---|
| 接続 | 素子間のノードに分岐がなく、一つの経路上に接続される | 各枝路の両端が同じ二つのノードに接続される |
| 電流 | 各素子を流れる電流が等しい | 全電流が各枝路へ分流する |
| 電圧 | 各電圧降下の和が電源電圧に等しい | 各枝路の両端電圧が等しい |
| 合成抵抗 | Rtotal = R1 + R2 +⋯ | 1/Rtotal = 1/R1 + 1/R2 +⋯ |
| 解放時の挙動 | 唯一の閉じた電流経路が開放されると、回路電流は0 Aになる | 一つの枝路が開放されても、他の枝路には電流が流れる場合がある |
直列部分と並列部分が混在する回路では、同じ電流が流れる直列部分と、同じ二つのノードを共有する並列部分を特定します。その上で、合成できる部分から順に等価抵抗へ置き換えます。ブリッジ回路など、単純な直列・並列合成だけでは等価抵抗を求められない回路もあります。
直列接続を利用する代表的な回路
直列接続は、抵抗値に応じて電圧を分ける回路や、素子へ流れる電流を制限する回路に利用されます。ここでは、抵抗分圧回路と低電力の表示用LEDの電流制限抵抗を例に、基本式を適用できる条件と、負荷や素子特性の影響を確認します。
抵抗分圧回路
抵抗分圧回路は、二つの抵抗を直列に接続し、抵抗値の比に応じた電圧を接続点から取り出す回路です。図5では、R1 とR2 を直列に接続し、R2 の両端電圧を出力電圧VOUT としています。出力に負荷を接続しない理想条件では、出力電圧は次式で求められます。
図5:抵抗分圧回路。VOUT はR2 の両端電圧として取り出す。
\(V_{OUT}=V_{IN}\displaystyle \frac{R_2}{R_1+R_2}\)
出力端と0 V基準間に負荷を接続すると、下側の抵抗 R2 と負荷が並列となり、無負荷時の分圧比から出力電圧が変化します。この場合は、負荷を含む等価抵抗を求めた上で、電圧を再計算します。
負荷の影響や抵抗値の決定方法は、「分圧の法則(分圧回路)とは何か?」の記事で解説しています。
LEDの電流制限抵抗
低電力の表示用LEDを定電圧源で駆動する基本回路では、LEDと直列に抵抗器を接続し、順方向電流を制限します。図6に、LEDを1個使用した基本回路を示します。LEDと抵抗器には同じ順方向電流 IF が流れ、抵抗器に印加される電圧の大きさは、電源電圧VS とLEDの順方向電圧VF の差になります。抵抗値の初期計算は次式で表されます。
図6:表示用LEDの直列抵抗回路。抵抗Rには VS–VF の電圧が加わる。
\(R=\displaystyle \frac{V_S−V_F}{I_F}\)
この式は、VS がVF より高く、差電圧を抵抗器に印加できる場合に適用されます。
VF は電流、温度、素子ばらつきによって変化するため、採用するLEDのデータシートで IF–VF 特性を確認します。電源電圧の変動が大きい場合や電流精度が必要な場合は、定電流駆動を検討します。LEDの順方向特性と回路構成は、「LED回路構成」で説明しています。
計算結果を実回路へ適用するときの確認項目
計算例は、電源電圧と抵抗値を一定とした公称条件での結果です。実際の回路では、電源電圧の変動と抵抗値の許容差を組み合わせ、回路電流、各部の電圧、消費電力の範囲を確認します。精度が必要な場合は、抵抗値の温度変化や配線抵抗も計算条件に含めます。
抵抗器の消費電力は発熱に直結するため、最大条件で求めたPi を採用部品の定格電力と照合します。周囲温度又は端子温度が規定条件を超える場合は、製品ごとの電力軽減曲線を確認します。
定格電力に加え、抵抗両端の印加電圧が定格電圧及び素子最高電圧の範囲内であることもデータシートで確認します。定格電力と温度条件の詳細は、「定格電力とは」で解説しています。
直列回路の計算では、まず、分岐の有無から同じ電流が流れる範囲を特定します。次に、合成抵抗、回路電流、各部の電圧降下、消費電力を求め、電圧と電力の収支によって検算します。負荷や枝路を追加した場合は、変更後の接続関係に基づいて回路モデルを再構成し、再計算します。
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