-13.56MHzワイヤレス給電チップセットを開発した理由がわかりましたので、ここからは、具体的なチップセットやその特長などを伺って行きます。まず、チップセットの関係というか、各役割も含めてどんな感じのものなのかが知りたいのですが。
わかりました。それでは、ターゲットアプリケーションの1つである「電子ペン」を例に話を進めて行こうと思います。電子ペンは「デジタルペン」とも呼ばれていて、スマートフォンやタブレットなどの画面で文字を書く、指より細かい作業をするといった用途から、手書き入力のテキストデータ化やSNSでの手書きメッセージの流行など、近年その用途と可能性が広がっています。
この図は、ワイヤレス給電用LSIのML7631とML7630を使った、電子ペンのワイヤレス充電のイメージです。ML7631が送電用、ML7630が受電用となります。
既存のほとんどの電子ペンは、ペンの側面や端にMicroUSBのコネクタがあるかアタッチメントを利用して、USB電源から有線で充電する方法を採っています。それに対してワイヤレス給電ならば、ML7631と送電用アンテナが組み込まれたペン立てから送電し、ML7630と受電用アンテナが組み込まれた電子ペンで受電する方法が考えられます。この方法だとMicroUSBコネクタやアタッチメントが不要になります。また、送電アンテナとML7631を組み込んだタブレットPCやラップトップPCと受電機能を搭載した電子ペンならば、PC本体と電子ペンをマグネットなどで固定する方法なども考えられます。
-「充電のためにコネクタを抜き差しする」といった煩わしさがなくていいですね。使い終わったらペン立てに立てるか、PCにマグネットで固定すれば充電できるということですよね。
そうですね。充電という面ではそういったイメージになります。他にもメリットや機能拡張がありますが、詳細は後でまとめて説明します。
これは、ML7631とML7630の仕様の概要と機能ブロック図です。
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あらためてですが、ML7631は13.56MHzワイヤレス給電送電用デバイスで、ML7630は13.56MHzワイヤレス給電用受電デバイスです。ML7631とML7630を組み合わせることで、ワイヤレス給電システムを構成し、0.2Wの充電が可能です。
ML7631は、ML7630と通信するための通信コマンド生成機能、0.2Wを給電するための送電機能、送電電力を最適化するために送電量を可変制御する機能、受電用デバイスML7630の着脱や給電中の異物検知機能などのワイヤレス給電用送電機能などを備えています。パッケージは、5mm角の32ピンWQFNです。動作電圧を5Vとしており、モバイルバッテリも含めたUSB電源からの駆動が可能です。
ML7630は、電圧電流制御が可能な充電制御LDOを内蔵しており、使用するバッテリ充電ICに合わせた設定が可能です。また、LSIに内蔵している10ビット逐次比較型ADCと外付けサーミスタによる電池温度監視機能、さらにNFC Forum Type3 Tag機能も超小型の2.59mm角WL-CSP(Wafer level Chip Size Package)に搭載しています。
-NFC Forum Type3 Tag機能とはどんな機能ですか?
例えば、QRコードの代わり、スマホなどの端末との通信が可能で、このLSIのキーポイントの1つになります。詳細は、後ほど説明させてください。
概略ではありますが、ML7631とML7630はおおよそこのようなLSIです。詳細については、各データシートやホームページの特設サイトを参照してもらえるとありがたいです。
-送電用ML7631と受電用ML7630のLSIとしての概略を伺ったわけですが、このチップセットを開発した理由は、電子ペンやウェアラブル機器などの非常に小型の機器には、既存のワイヤレス充電ソリューションでは内蔵するのが困難という課題へのチャレンジであると最初に説明いただきました。続いて、このチップセットがどうしてその課題を解決できるのかを説明してください。
わかりました。特に受電デバイスには、従来のワイヤレス充電ソリューションはサイズ的に内蔵できず、現状ではMicroUSBなどのコネクタを接続して充電する方法を採っています。電子ペンを例にして、実際の課題、それを解決するML7631とML7630のチップセットのアドバンテージと事例を説明させていただきます。