2015.06.09
ロームは多種多様なLDOリニアレギュレータICをラインアップしているが、先ごろリリースされた「BD4xxMxシリーズおよびBDxxC0Aシリーズ」は、車載向けに新規開発したとされる。車載用ICの規格として実質的な業界標準になっているAEC-Q100に対応しており、高い汎用性に加え、全43機種という豊富なバリエーションにより、様々な車載用途に対応するという。そのキーポイントについて、ロームのアプリケーションエンジニアである安武 一平(やすたけ いっぺい)氏 に聞いた。
-全43機種というLDOリニアレギュレータ(以下LDO)のシリーズがリリースされましたが、かなりのラインアップ数ですね。最初にこのシリーズを開発した目的を教えてください。
最新のニーズを反映させた車載機器向けのLDOのシリーズを構築することで、車載機器メーカーのお客様に一貫したポリシーと品質のLDOを、安心して様々な機器設計に使っていただこうと開発しました。それには、多種多様な入出力仕様やパッケージが揃っていることが必要で、43機種というラインアップになりました。
-簡単にいうと、「今回の設計でLDOを3個使うが、すべてこのシリーズにする」みたいなイメージですか?
そうですね。そうなってくれると、とてもうれしいです。
-それは、お客様にもメリットがあるのですか?
もちろんです。それが43機種というバリエーションを構築した理由でもあるのです。このLDOシリーズは、車載の前提で開発されています。ご存じだと思いますが、車載機器に使う部品は通常より厳しい条件をクリアする必要があります。そのためには、部品認証やメーカー認証といった作業が必要になることも多く、この作業は時間とコストがかかるものです。それに対し、同一メーカーの特定の管理下でシリーズ展開されている部品を使うことで簡略化できる作業があるはずです。
-つまり、先程の例だと、3種類のLDOを使う際にそれぞれ異なるメーカーのものを選ぶのと、単一メーカーの3機種を選ぶのでは、採用に関する手間が1/3になるということですか?
そこまで単純ではないと思いますが、目指すのはそういうことです。豊富なバリエーションを持ちながら統一性を持ったシリーズは、車載用LDOの標準品や共通部品になれると考えています。また、採用のための手間やコストだけではなく、発注管理に関するコスト削減にも貢献すると思います。
-それでは、このLDOシリーズのラインアップと概要を教えてください。
このシリーズは、大きく「BD4xxMxシリーズ」と「BDxxC0Aシリーズ」の2つから構成されており、さらに各々に仕様の違いによるシリーズがあります。機種が多いのでわかりやすいように表をお持ちしました。
共通の仕様として、車載対応ということで‐40℃~+125℃で動作が保証されています。この温度範囲において、出力電圧はBD4xxMxが±2%、BDxxC0Aは±3%と高い精度が確保されています。また、過電流と過熱に対する保護も搭載しています。
まず、「BD4xxMxシリーズ」ですが、出力電流200mAのBD4xxM2シリーズ8機種、出力電流500mAのBD4xxM5シリーズ8機種の全16機種で構成されています。ともに45V耐圧で出力電圧は3.3Vと5Vの2種類です。
-45V耐圧は車載対応を意識した耐圧だと思いますが、出力電圧は2種類ですか?
このシリーズは、出力電圧を3.3Vと5Vに絞り、主にボディ系、パワートレイン系のマイコン用電源として使ってもらうことを想定しました。もちろん用途が限定されているわけではないので、システム電圧など様々な用途に対応できます。
-機能面に違いはありますか?
それぞれに、シャットダウンありとなしのバージョンが用意されています。
-パッケージもいろいろあるという話でしたが。
パッケージはBD4xxM2シリーズが2種類、BD4xxM5シリーズは4種類になります。電気的仕様が同じでも違うパッケージを用意したのは、実装基板のスペースや形状に合わせて選択できるようにするためです。
● BD4xxM2シリーズ(45V耐圧200mA)
出力電圧 | パッケージ | シャットダウン | |
---|---|---|---|
3.3V | 5V | ||
BD433M2WFP3-C | BD450M2WFP3-C | SOT223-4 | あり |
BD433M2WEFJ-C | BD450M2WEFJ-C | HTSOP-J8 | |
BD433M2FP3-C | BD450M2FP3-C | SOT223-4 | なし |
BD433M2EFJ-C | BD450M2EFJ-C | HTSOP-J8 |
● BD4xxM5シリーズ(45V耐圧500mA)
出力電圧 | パッケージ | シャットダウン | |
---|---|---|---|
3.3V | 5V | ||
BD433M5WFPJ-C | BD450M5WFPJ-C | TO252-J5 | あり |
BD433M5WFP2-C | BD450M5WFP2-C | TO263-5 | |
BD433M5FP-C | BD450M5FP-C | TO252-3 | なし |
BD433M5FP2-C | BD450M5FP2-C | TO263-3 |
-「BDxxC0Aシリーズ」についても同様にポイントをお願いします。
「BDxxC0Aシリーズ」は、35V耐圧、出力電流1A、出力電圧は3.3V/5V/8V/9V/可変の5種類、シャットダウンありとなし、そしてパッケージは5種類で、全27機種となっています。可変タイプを始め8Vや9Vといった機構部品やディスプレイなどのカーインフォティメント系も意識した多彩なラインナップとなっています。
● BDxxC0Aシリーズ(35V耐圧1A)
出力電圧 | パッケージ | シャットダウン | ||||
---|---|---|---|---|---|---|
3.3V | 5V | 8V | 9V | 可変 | ||
BD33C0AWFP-C | BD50C0AWFP-C | BD80C0AWFP-C | BD90C0AWFP-C | BD00C0AWFP-C | TO252-5 | あり |
BD33C0AFP-C | BD50C0AFP-C | BD80C0AFP-C | BD90C0AFP-C | – | TO252-3 | なし |
BD33C0AWHFP-C | BD50C0AWHFP-C | BD80C0AWHFP-C | BD90C0AWHFP-C | BD00C0AWHFP-C | HRP5 | あり |
BD33C0AHFP-C | BD50C0AHFP-C | BD80C0AHFP-C | BD90C0AHFP-C | – | HRP5 | なし |
BD33C0AWFP2-C | BD50C0AWFP2-C | BD80C0AWFP2-C | BD90C0AWFP2-C | BD00C0AWFP2-C | TO263-5 | あり |
BD33C0AFP2-C | BD50C0AFP2-C | BD80C0AFP2-C | BD90C0AFP2-C | – | TO263-3 | なし |
リニアレギュレータの基礎として、動作原理、分類、回路構成による特徴、長所・短所を理解するためのハンドブックです。加えて、リニアレギュレータの代表的な仕様(規格値)と、効率と熱計算に関しても解説しています。
リニアレギュレータの基礎として、動作原理、分類、回路構成による特徴、長所・短所を理解するためのハンドブックです。加えて、リニアレギュレータの代表的な仕様(規格値)と、効率と熱計算に関しても解説しています。