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2017.02.14 AC/DC
今回は、この設計事例の基板レイアウトの例を示して、全体のまとめを行い、このAC/DCコンバータ 設計編 「AC/DC 非絶縁型バックコンバータの設計事例」の締めくくりにしたいと思います。
実装基板レイアウト例
スイッチングレギュレータ設計における基板レイアウトは、AC/DC、DC/DC問わずに非常に重要であると、他のコーナーでも述べてきました。ここでも、その繰り返しになりますが、一番言いたいことは、スイッチング電源はアナログ回路(近年は「デジタル電源」もありますが)で、自身でノイズを発しながらもノイズに敏感です。また、スイッチングノイズは、EMIとして他に影響を与えるため、極力ノイズを出さないレイアウトにする必要があるということです。
以下は、今回の設計事例の基板レイアウトです。今回は、「非絶縁」の回路設計ですが、基本的な考えは同じです。スイッチング電源回路には、大電流がスイッチする経路と、ノイズに敏感な制御信号経路があることを考慮する必要があります。基板配線レイアウトでは、大電流経路はなるべくノイズを出さないように、制御信号経路はなるべくノイズの影響を受けないようにします。
基板レイアウトに関してはその重要性から、電源ICのデータシートや設計資料で、基本的な基板配線レイアウトの例が提供されています。場合によっては、ガーバーファイルなど、そのまま利用できるデータが提供されていることも少なくありませんので、大いに利用してください。ただし、忘れて行けないのは、言うまでもありませんが、どんなに提示例通りに作ったとしても必ず実機で確認することです。
以下は、Tech Webで展開している「基礎知識」の基板レイアウト関連の記事です。合わせて参考にしてください。
●AC/DC PWM方式フライバックコンバータ設計手法:基板レイアウト例
●DC/DCコンバータの基板レイアウト
「AC/DC 非絶縁型バックコンバータの設計事例」のまとめ
これをもちまして、この章は終わりとなります。最後に、今までに上げてきた各項目のキーポイントをまとめました。
<AC/DC 非絶縁型バックコンバータの設計事例>
・非絶縁型のAC/DCコンバータの設計を解説。
・ダイオード整流または非同期整流方式のバックコンバータと呼ばれる回路を例に取る。
・降圧コンバータの動作には連続モードと不連続モードがある。
・DC/DC変換では連続モードが一般的だが、60W程度のAC/DC変換では不連続モードを利用することが多い。
・電源仕様を満足する電源ICを選択することが設計の開始になる。
・絶縁型との回路の違いを理解する。
・入力コンデンサには、最大入力電圧×1.41の電圧がかかることを考慮して耐圧を選定する。
・VCC用コンデンサは、VCCの安定以外に起動時間を決める役割があることに留意する。
・インダクタは、動作モードが不連続モードになるように設定する。
・インダクタンスは、VINの最小条件とtonの最大値から求める。
・インダクタ電流は、VINの最大条件と最小オン時間から求める。
・事例回路が必要とするスイッチ電流制限抵抗R1を求める。
・R1の算出には、インダクタ L1算出時の数値が必要となる。
・出力コンデンサは、設計目標の出力リップル電圧を満足するように、リップル電流とコンデンサのインピーダンスから選択する。
・アルミ電解コンデンサは寿命のある部品で、リップル電流が大きいと寿命が短くなる。
・通常、出力整流ダイオードは、スイッチングが高速なタイプを使う。今回はファストリカバリダイオードを使用。
・出力整流ダイオードは、基本的に耐圧と損失の検討により選択する。
・EMI対策には、入力フィルタ、スイッチ(D-S間)にコンデンサ、出力整流ダイオードにスナバを追加してみる。
・出力ノイズには出力にLCフィルタを追加。
・基板レイアウトの影響も大きいので、合わせて検討する。
・AC/DC、DC/DCにかかわらずスイッチング電源の設計において基板レイアウトは、性能やノイズに大きな影響を与える。
以上。