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2022.01.11 SiCパワーデバイス

ブリッジ構成時のゲートーソース間電圧の振る舞い:ターンオン時

ドライバソース端子によるスイッチング損失の改善

この記事のキーポイント

・ドライバソース端子を持つTO-247-4LやTO-263-7LパッケージのSiC MOSFETと、ドライバソース端子を持たないTO-247Nパッケージ品とはゲート-ソース間電圧の挙動が異なる。

・ゲート-ソース電圧のサージ対策を的確に実施するためには、各々の挙動を理解しておく必要がある。

パワースイッチングデバイスの最も一般的なアプリケーションとして、前回示したダブルパルス試験回路と同様のブリッジ構成があります。ブリッジ構成時のゲート-ソース間電圧の挙動については、Tech Web 基礎知識 SiCパワーデバイスの「SiC MOSFET:ブリッジ構成におけるゲート-ソース間電圧の挙動」や、この記事のもとになっているアプリケーションノート「ブリッジ構成におけるゲート-ソース電圧の振る舞い」で、相互に影響し合う動作についての説明がなされています。

しかしながら、ドライバソース端子を持つTO-247-4LやTO-263-7LパッケージのSiC MOSFETと、ドライバソース端子を持たないTO-247Nパッケージのものでは挙動が異なるところがあり、ゲート-ソース電圧のサージ対策を的確に実施するためには、その挙動を理解しておく必要があります。

今回から、ドライバソース端子付きTO-247-4LパッケージのSiC MOSFETをブリッジ構成にした場合のゲートーソース間電圧の振る舞いについて、LS側(ローサイド)MOSFETがターンオンした場合とターンオフした場合の2回に分けて解説します。

ブリッジ構成時のゲートーソース間電圧の振る舞い:ターンオン時

ブリッジ構成におけるLS側(ローサイド)のMOSFETがターンオンした時の挙動について、ドライバソース端子を持たないTO-247Nとの違いを中心に説明します。

以下の波形図はターンオン時の各スイッチング波形を示しており、左側がドライバソース端子を持たないTO-247Nパッケージ品、右側がドライバソース端子付きTO-247-4Lパッケージ品です。各横軸は時間を表し、時間領域Tk(k=7、8、1~3)の定義は記した通りです。また、右下の回路図には、TO-247-4Lパッケージ品のブリッジ回路におけるゲート端子の電流を示してあります。波形図および回路図には、各々の時間領域で発生する事象を(I)~(III)で示してあります。事象(III)は、期間T2が終了した直後に発生しています。

ブリッジ構成におけるLSのSiC MOSFETターンオン時の各スイッチング波形:ドライバソース端子を持たないTO-247Nパッケージ品

ドライバソース端子を持たないTO-247Nパッケージ品

ブリッジ構成におけるLSのSiC MOSFETターンオン時の各スイッチング波形:ドライバソース端子を持つTO-247-4Lパッケージ品

ドライバソース端子を持つTO-247-4Lパッケージ品

ブリッジ構成におけるLSのSiC MOSFETターンオン時の各スイッチング波形

<時間領域Tkの定義>

  • T7:HSがONしている期間(同期整流期間)
  • T8:HSがOFFしLSがONするまでのデッドタイム期間
  • T1:LSがONしMOSFETの電流が変化している期間(事象(I)が同時に発生)
  • T2:LSがONしMOSFETの電圧が変化している期間(事象(II)が同時に発生)
  • T3:LSがONしている期間

TO-247-4L:リッジ構成におけるLSターンオン時のゲート端子の電流

TO-247-4L:LSターンオン時のゲート端子の電流

波形図の比較では、TO-247-4Lの事象(I)がTO-247Nと大きく異なり、非スイッチング側(HS)のVGSに正サージが観測されています(TO-247Nは負サージ)。これは、ゲート端子の電流を示した図中(I)の、電流ICGDが流れることで発生しています(HS側、緑のライン)。この電流はゲート-ドレイン間容量CGDを経由して流れています。

この電流が流れる理由は、スイッチング動作前にはHS側SiC MOSFETのボディダイオードにソースからドレインに向かって転流電流ID_HSが流れていますが、その後スイッチング動作が開始すると、まずスイッチング側(LS)の電流ID_LSが増加していくためID_HSは減少していきます。一方、一般的にSiC MOSFETのボディダイオードの順方向電圧VF_HS(TO-247-4L波形図の破線丸部分)は電流依存が大きいため、スイッチングが高速になるとdID_HS/dtが大きくなりdVF_HS/dtも大きくなります。そして、このdVF_HS/dtは結果的に転流側SiC MOSFETのdVDS_HS/dtでもあるため、ドレイン端子からゲート端子へCGDを通してICGDが流れ込み、ゲート-ソース間電圧の上昇を招きます。従来のTO-247Nでは、ID_LSの変化が遅く、事象(I)のICGDはほとんど流れていないことが考えられます。

TO-247Nのターンオン動作の詳細は、冒頭で紹介したTech Web SiC パワーデバイス基礎知識の記事「ローサイドスイッチターンオン時のゲート-ソース間電圧の挙動」か、アプリケーションノートの「ターンオン時のゲート信号の振る舞い」の項を参照願います。

右に示すVDS波形は、TO-247NとTO-247-4Lの比較です。転流側SiC MOSFETのVDS_HSにおいて、スイッチング動作が開始した直後に、TO-247-4LのVDS_HSが急激に上昇していることがわかります。これは、前回説明したように、ドライバソース端子を備えたことによる高速化の結果です。

また、事象(II)も高速になっていることから、先の回路図に示したHS側からLS側へ流れるHS側CDSへの充電電流も大きくなっているので、スイッチング側のみならず非スイッチング側のドレイン-ソース間サージ対策も必要となる場合があります。

TO-247-4とTO-247-4Lのターンオン時のVDS波形比較
TO-247-4とTO-247-4Lのターンオン時のVDS波形比較

次に示すのは、TO-247-4LのVGS波形です。サージ対策の有無での比較になっています。サージ対策をしていない場合(Non-Protected)は、これまで説明したようにサージが発生しています。サージ対策を実施(Protected)すると、VGSサージが抑えられていることがわかります。

これらのサージを抑えるためには、先に説明したゲートーソース間電圧の振る舞いを理解するとともに、対策としてSiC MOSFETの直近にサージ抑制回路を接続することが必須となります。

詳細はアプリケーションノート「ゲート-ソース電圧のサージ抑制方法」、またはTech Web基礎知識SiCパワーデバイスの「SiC MOSFET:ゲート-ソース電圧のサージ抑制方法(連載中)」を参照して下さい。

TO-247-4Lのターンオン時のVGS波形(対策有無)
TO-247-4Lのターンオン時のVGS波形
(対策有無)

次回は、ターンオフ時の振る舞いについて説明をします。

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