2018.11.13
この記事のポイント
・ブラシ付きDCモーターのPWM駆動は、電圧印加と電流回生を繰り返す。
・Hブリッジによる電流回生方法は複数あり、回生電流経路によって損失が異なる。
前回のブラシ付きDCモーターのPWM駆動原理の説明においては、電流回生方法としてモーター両端のショートという方法に基づきましたが、電流回生方法には他の方法もあり、それぞれに検討事項があります。
以下はPWM駆動原理の説明に使った模式図です。記載の必要ないトランジスタは省略してあります。(a)は電圧印加時、(b)はモーター両端のショートによる電流回生です。
現実的な考慮事項として、Hブリッジの切り替えにはトランジスタ(この例ではMOSFET)を使用しているので、それぞれの経路にはトランジスタのオン抵抗を損失として加味する必要があります。これは後述の電流回生方法でも同じです。
さて、電流回生方法には(b)以外に3つの方法があります。(c)は、電圧印加時の状態からQ1をオフするだけ(Q2、Q3はオフのまま、Q4もオンのまま)の方法です。この場合の回生電流は、オフしているQ2の寄生(ボディ)ダイオードを経由して(b)と同じように流れます。この場合、経路にはオン抵抗だけではなく寄生ダイオードの順方向電圧VFが含まれます。そのため、電流が速く減衰します。また、等価的なモーターへの平均印加電圧は、デューティ比分の電圧よりVF分が損失し小さくなります。
(d)は、すべてのトランジスタをオフする方法です。この場合の回生電流は、オフしているQ2とQ4の寄生ダイオードを通って流れます。この経路ではQ2とQ3の寄生ダイオード2個分のVFが損失になります。
また、電流経路に電源Eaが入り、逆方向に電流を流すように働くため回生電流の減衰が極端に速く、ONデューティに対する等価のモーターへの平均電圧は極端に低くなります。50%デューティで駆動した場合、等価的な平均印加電圧はゼロに近くなります。この場合、ダイオードがあるので電流がゼロになると回生が止まり、逆方向には電流は流れません。
(e)は、電圧印加時と逆のトランジスタをオンにする、つまり、Q1、Q4オンQ2、Q3オフの電圧印加状態から、Q1、Q4オフ、Q2、Q3オンの状態にする方法で、逆のバイアス状態になります。
これも電流経路に電源Eaが入り、逆に電流を流すように働くため回生電流の減衰が極端に早く、ダイオードを通じて回生電流が流れる場合は電流がゼロになると回生は止まりますが、トランジスタがオンしているので電流が逆に流れてしまいます。
このため(d)同様に50%デューティで駆動した場合は、等価的なモーターへの平均印加電圧はゼロになります。100%デューティでは等価的な平均印加電圧は最大になり、デューティが100%から50%の間でデューティに比例して最大電圧印加からゼロ電圧印加を制御できることになります。また、デューティ50%から0%では100%から50%と逆方向の電流が流れます。以下に、この条件でのPWMの電圧と電流波形を示します。
上記説明で触れた損失に関しては、別途、次回に説明を予定しています。
ブラシ付きDCモーターは最も汎用的なモーターで、非常に多くのアプリケーションに利用されています。このハンドブックでは、ブラシ付きDCモーターの基礎として、構造、動作原理、特性、駆動方法を解説しています。
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