モーター|基礎編
ステッピングモーター:マイクロステップ動作原理
2019.04.16
この記事のポイント
・ステッピングモーターは、マイクロステップ駆動により、より細かいステップ角制御が可能。
・マイクロステップ駆動のメリットは、微少角の位置制御が可能になることと、低速域での振動や騒音の低減が可能なこと。
ステッピングモーターは、マイクロステップと呼ばれる駆動方法により、より細かいステップ角制御が可能です。今回は、その動作原理を説明します。
ステッピングモーター:マイクロステップ動作原理
前回、「ステッピングモーターの基本回転原理」で、2相バイポーラタイプのコイルを1相ずつ励磁する例を示しました。この例では、組みになっているコイルの一方に電流を流し他方には電流を流さないというステップごとに、モーターが90°ずつ回転すること説明しました。これに対してマイクロステップ駆動は、より細かいステップ角でモーターを回転させることができます。
マイクロステップ駆動のメリットは、主に2つあります。1つは、微少角の位置制御が可能になることです。もう1つは、低速域での振動や騒音の低減が可能になることです。ステッピングモーターは、ステップごとに減衰振動をともなって所定の位置に停止します。つまり、停止位置に対して行き過ぎ、戻り過ぎを何度か繰り返して完全に停止します。ステッピングモーターの回転が低速の場合、この減衰振動が振動や騒音の原因になる場合があります。減衰振動はステップ角を細かくすることで低減可能で、マイクロステップ駆動により低速域での振動や騒音の低減が可能です。
以下の図を使って、マイクロステップ動作の原理を説明します。この図は2相バイポーラ構成で、単純なコイルの切り替えでのステップ角は90°ですが、それを4分割する1/4マイクロステップ駆動の例です。モーターを90°の1/4=22.5°ずつ回転させる際の、各コイルの電流と磁界を①~⑤の順に示してあります。

- ①
- ・コイル1の左側から電流を流入させ、コイル1の右側から電流を流出させる。
- ・コイル2には電流を流さない。
- ・この時、左側コイル1の内側はNに右側コイル1の内側はSになる。
- ・中央の永久磁石* はコイル1の磁界に引かれ、左をS、右をNにして止まる。
- ・コイルの電流がIoの時に、磁界の大きさM0が発生したとする。
* 図が煩雑になるため①~⑤の図中には示していないので右図を参照。
- ②
- ・①より22.5°(90°の1/4)時計まわりに回転させるには、磁界の大きさM0は維持し、永久磁石が該当位置に停止する磁界を発生させる。
- ・そのためには、コイル1でM0×cos(22.5°)≒M0×0.924の磁界を、コイル2でM0×sin(22.5°)≒M0×0.383の磁界を発生させればよい。
- ・それにはコイル1の電流をIo×cos(22.5°)≒Io×0.924に、コイル2の電流をIo×sin(22.5°)≒Io×0.383に制御する。
- ③
- ・さらに22.5°進み①より時計まわりに45°回転させるには、該当する磁界M0を発生させる。
- ・そのためには、コイル1でM0×cos(45°)≒M0×0.707の磁界を、コイル2でM0×sin(45°)≒M0×0.707の磁界を発生させればよい。
- ・それにはコイル1の電流をIo×cos(45°)≒Io×0. 707に、コイル2の電流をIo×sin(45°)≒Io×0.707に制御する。
- ④
- ・③よりさらに22.5°進んだ67.5°回転させるには、同様に該当するM0を発生させる。
- ・そのためには、コイル1でM0×cos(67.5°)≒M0×0.383の磁界を、コイル2でM0×sin(67.5°)≒M0×0.924の磁界を発生させればよい。
- ・それにはコイル1の電流をIo×cos(67.5°)≒Io×0.383に、コイル2の電流をIo×sin(67.5°)≒Io×0.924に制御する。
- ⑤
- ・さらに22.5°進み①から90°回転させるには、コイル2に電流Ioを流し、コイル1の電流は0にする。
このように、磁界の大きさは一定で、角度に応じて各コイルに流れる電流を制御して磁界を合成し、任意のステップでロータを回転させ停止させる動作をマイクロステップ動作と呼びます。
この図では90°を4分割した1/4ステップ駆動の例を示しましたが、現状1/32ステップ駆動までが可能になっています。先にも述べたように、マイクロステップ駆動を使用すると微少角の位置制御、騒音や振動を低減することが可能です。
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