IGBTパワーデバイス|基礎編

実際のIGBT IPMの例:仕様と機能の概要

2022.10.11

この記事のポイント

・ローム第3世代IGBT IPMであるBM6337xS-xx/BM6357x-xxシリーズを例に、実際のIGBT IPMついての解説。

・データシートに記載されている製品概要、特長、ブロック図などから、IGBT IPMの基本仕様を確認する。

ここまでIGBT IPMの基礎として、以下を説明してきました。

今回から、実際のIGBT IPMの仕様や機能などを、いくつかの項目に分けて説明して行きます。IGBT IPMの例として、ローム第3世代のIGBT IPMである、BM6337xS-xx/BM6357x-xxシリーズを用います。

実際のIGBT IPMの例:仕様と機能の概要

BM6337xS-xx/BM6357x-xxシリーズの概要として、用途、シリーズラインアップ、機能・特長、そして従来品との相違点を説明します。右の写真はBM6337xS-xx/BM6357x-xxシリーズの外観で、2種類のパッケージがあります。

IGBT IPMのメリット」で説明したように、IGBT IPMはメジャーなアプリケーションやおおよその用途を想定して仕様を設定してあるので、用途に合う仕様のものを選択するのが本来の使い方になります。したがって、まずはデータシートなどからその仕様や特長をよく理解することが、設計のスターティングポイントになります。

ローム第三世代IGBT IPMのBM6337xS-xx/BM6357x-xxシリーズの外観

BM6337xS-xx/BM6357x-xxシリーズの用途

BM6337xS-xx/BM6357x-xxシリーズは、主に以下の用途を想定して仕様が設定されています。

  • ・AC100~240Vrms(DC400V以下)系モータ制御用インバータ装置
  • ・白物家電(エアコン、洗濯機、冷蔵庫)モータ制御用インバータ装置

基本的にはモータ制御用インバータ装置向けとなりますが、扱う電力によってシリーズのラインアップを使い分けます。

BM6337xS-xx/BM6357x-xxシリーズのラインアップ

機能と定格によって、BM6337xS-xx/BM6357x-xxシリーズには以下のラインアップがあります。

機種 定格 付加機能
BM63373S-VA/BM63373S-VC 10A/600V 温度出力機能 および 過熱保護機能付き
BM63374S-VA/BM63374S-VC 15A/600V
BM63375S-VA/BM63375S-VC 20A/600V
BM63377S-VA/BM63377S-VC 30A/600V
BM63573S-VA/BM63573S-VC 10A/600V 温度出力機能付き
BM63574S-VA/BM63574S-VC 15A/600V
BM63575S-VA/BM63575S-VC 15A/600V
BM63577S-VA/BM63577S-VC 20A/600V

※ -VA:長尺タイプ、-VC:制御側千鳥タイプ

BM6337xS-xxシリーズは、温度出力機能および過熱保護機能を備えており、BM6357x-xxシリーズは温度出力機能のみになります。また、機種ごとに2つのパッケージタイプがあり、注記にもあるように「-VA」は長尺タイプ、「-VC」は制御側千鳥タイプとなります。パッケージの詳細については後述します。

機種名にデータシート他、製品情報にアクセスできるリンクを貼ってあります。ちなみに、データシートは「-VA」、「-VC」共通になっています。

BM6337xS-xx/BM6357x-xxシリーズの機能と特長の概要

以下にBM6337xS-xx/BM6357x-xxシリーズの機能の特長、そしてブロック図を示します。モジュール内の機能ブロックは、ハイサイドゲートドライバ、ローサイドゲートドライバ、3相構成にて各サイドにIGBTが3個ずつ、ハイサイドにブートストラップダイオードが示されていますが、各ゲートドライバには駆動回路や保護回路が含まれています。

  • ■DC入力、3相AC出力IGBTインバータ
  • ■600V/10A、15A、20A、30A
  • ■下側IGBTオープンエミッタ
  • ■ブートストラップダイオード内蔵
  • ■ハイサイドIGBTゲートドライバ(HVIC)
    ̵ SOI(Silicon On Insulator)プロセス採用
    ̵ 駆動回路
    ̵ 高圧レベルシフト回路
    ̵ ブートストラップダイオード電流制限回路
    ̵ 制御電源電圧低下時誤動作防止回路(UVLO)
  • ■ローサイドIGBTゲートドライバ(LVIC)
    ̵ 駆動回路
    ̵ 短絡電流保護回路(SCP)
    ̵ 制御電源電圧低下時誤動作防止回路(UVLO)
    ̵ 熱遮断回路(TSD)※BM6337xS-xxのみ
    ̵ アナログ温度出力回路(VOT)
  • ■エラー出力(LVIC)
    ̵ 下側IGBT用SCP、TSD、UVLO動作時エラー出力
  • ■入力インタフェース3.3V/5V系対応
  • ■UL認証取得:UL1557 File E468261

ローム第三世代IGBT IPMのBM6337xS-xx/BM6357x-xxシリーズのブロック図

前世代品とBM6337xS-xx/BM6357x-xxシリーズの相違点

BM6337xS-xx/BM6357x-xxシリーズは、ローム第3世代のIGBT IPMとなります。前世代である第2世代品との主な相違点を参考までに示します。仕様・機能の集約や追加、精度などの違いがあります。

仕様・機能 第2世代IGBT IPM 第3世代IGBT IP
PWM周波数ラインナップ Low Speed Switching 品 < 6kHz ≤ 20 kHz
High Speed Switching 品 ≤ 20kHz
電流ラインナップ Low Speed Switching 品 10A / 15A 10A/15A/20A/30A
High Speed Switching 品 10A/15A/30A
温度モニタ精度 VOT=2.77±0.14V (LVIC温度=90℃) ±6℃相当 VOT=2.77±0.05V (LVIC温度=90℃) ±2℃相当
温度保護機能 TSD品 または VO品 TSD & VOT品 または VOT品
保護機能要因識別 なし (最小FO信号出力時間 SCP: min 20µs UVLO: min 20µs TSD: min 20µs) あり (最小FO信号出力時間 SCP: min 45µs UVLO: min 90µs TSD: min 180µs)
IGBT(low-side)オフ期間拡張機能 (Fault pulse tuning) なし あり
製品識別機能 なし あり (HVCC未投入時、HINU-GND, HINV-GND, HINW-GNDのインピーダンスで識別)
絡電流保護トリップ電圧 0.48V±0.025V (VOT品) 0.48V±0.025V
0.48V±0.05V (TSD品)

※VOT:温度出力、TSD:熱遮断、SCP:短絡電流保護、UVLO:制御電源電圧低下時誤動作防止、他ブロック図参照

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IGBTは代表的なパワーデバイスの1つで、モーター駆動を始めとした幅広いアプリケーションで利用されています。このハンドブックでは、IGBTの基礎的な理解として、IGBTの特徴を基にした適用範囲とアプリケーションのイメージ、構造と動作原理、他のパワーデバイスとの比較および使い分けについて解説します。