IGBTパワーデバイス|応用編
IGBT IPM:保護機能と動作シーケンス 保護機能と動作シーケンス -まとめ-
2023.07.25
保護機能と動作シーケンス -まとめ-
ここまで6回に分けて、ローム第3世代のIGBT IPMであるBM6337xS-xx/BM6357xS-xxシリーズを例として、以下のIGBT IPMの保護機能と動作シーケンスについて説明してきました。加えて、外付け部品定数の計算方法なども示したので、設計の際には参考にしていただければと思います。
もし、ディスクリート(単体)IGBTをベースにこれらの保護機能を外付け回路で実現するとすれば、高度で複雑な回路設計と多大な構成部品と基板面積、そして実証実験や評価に膨大な労力が必要となり、実際のところ現実的な選択肢とは言えません。アプリケーションにおいて必要となる基本的な機能が搭載され、かつコンパクトなパッケージで提供されるのがIPMであり、これがIPMを使用する非常に大きなメリットになっています。
- 短絡電流保護機能(SCP)
- 制御電源電圧低下時誤動作防止機能(UVLO)
- 熱遮断保護機能(TSD)*BM6337xSのみ搭載
- アナログ温度出力機能(VOT)
- エラー出力機能(FO)
- 制御入力(HINU、HINV、HINW、LINU、LINV、LINW)
まとめとして、今回例として使用したBM6337xS-xx/BM6357xS-xxシリーズの一覧と、該当製品データシートへのリンクをあらためて記します。また、上記の記事のベースとなったアプリケーションノートとそのダウンロードURLもあわせて記します。
| シリーズ | 機種 | 定格 |
|---|---|---|
| 温度出力機能付き 過熱保護機能付き |
BM63373S-VA / BM63373S-VC | 10A/600V |
| BM63374S-VA / BM63374S-VC | 15A/600V | |
| BM63375S-VA / BM63375S-VC | 20A/600V | |
| BM63377S-VA / BM63377S-VC | 30A/600V | |
| 温度出力機能付き | BM63573S-VA / BM63573S-VC | 10A/600V |
| BM63574S-VA / BM63574S-VC | 15A/600V | |
| BM63575S-VA / BM63575S-VC | 20A/600V | |
| BM63577S-VA / BM63577S-VC | 30A/600V |
※ -VA:長尺タイプ、-VC:制御側千鳥タイプ
■600V IGBT搭載 Gen.3 インテリジェントパワーモジュール(IPM) BM6337xS, BM6357xSシリーズ アプリケーションノート
https://fscdn.rohm.com/jp/products/databook/applinote/discrete/ipm/gen3_igbt-ipm_bm63x_series_an-j.pdf
以下は、本章の各記事に示したキーポイントの一覧です。
この記事のキーポイント
・BM6337xS-xx/BM6357x-xxシリーズを例として、IGBT IPMの保護機能と動作シーケンスについて説明する。
・保護機能の理解と同時に動作シーケンスや外付け部品定数の計算方法なども理解する必要がある。
この記事のキーポイント
・短絡電流保護機能(SCP)は、IPM外部にシャント抵抗を接続し、抵抗に発生する電圧をCIN端子へフィードバックする回路による。
・CIN端子には、誤動作防止のためRCフィルタが必要。
・短絡電流保護は下アームに対してのみ動作する。
・短絡電流保護が作動した場合、即座に動作停止し異常状態を回避する必要がある。
・シャント抵抗値とRCフィルタの時定数は提示された式に基づき、推奨値を目安に設定し、最終的には実機での動作確認を行い決定する。
IGBT IPMの制御電源電圧低下時誤動作防止機能(UVLO)
この記事のキーポイント
・制御電源電圧低下時誤動作防止回路(UVLO)は、制御電源電圧が低下し既定の電圧以下となった場合に作動する。
・HVIC(High Side Gate Driver)とLVIC(Low Side Gate Driver)の両方に搭載されているが、FO信号(エラー出力)は、LVICのUVLO作動時のみ出力する。
この記事のキーポイント
・BM6337xSシリーズは、LVIC(Low Side Gate Driver)の温度をモニタする熱遮断回路を搭載しており、LVICのTjが規定以上になると熱遮断回路が作動し、下側アーム全相のIGBTをオフし、FO信号を出力する。
・TSDが作動した場合、IGBTのTjが絶対最大定格の150°Cを超えているため、IPMを交換する必要がある。
・この機能でモニタしているTjはLVICチップのもので、IGBTチップの急激な温度上昇には追随できないため、急激なTjの上昇には有効に機能しないので注意が必要。
この記事のキーポイント
・VOT出力は、LVIC部の温度をアナログ電圧に変換して出力する機能で、主に想定以上の温度上昇が生じた場合の保護のための温度モニタを目的としている。
・IGBT IPMの高精度な温度モニタにはサーミスタを用いるのが一般的だが、BM6337xS/BM6357xSシリーズはサーミスタと同等の高精度を実現しているのでサーミスタの代替として検討可能。
・VOT出力はLVIC部の温度出力なので、IGBTやFWDチップの急激な温度上昇には追従できない。
・したがって、放熱ファンの故障などによる温度上昇や過負荷継続時の出力制限といった、従来ヒートシンクに取り付けて使用していたサーミスタと同様の目的、方法での使用が推奨される。
・低電圧マイコンをVOT出力の処理に使う場合、VOT電圧がマイコンの電源電圧を超えないようにクランプ回路を設置する。
・VOT電圧がマイコンの電源電圧を超えるような設計が必要な場合は、VOT出力を抵抗分圧する方法がある。
この記事のキーポイント
・FO端子はエラー出力機能端子で、搭載されている保護機能の作動を外部に通知し、自身の保護のため下側アーム全相のIGBTをオフにする。
・FO出力は、作動した保護の種類によって信号出力時間が異なるので、どの保護が作動したかが判別可能で、これは当機種から搭載された機能。
・FO端子の入力としての機能として、FO端子にRCを接続し時定数を調整することで、下側アーム全相のIGBTオフ期間を拡張することができる。
・これは、FO出力を絶縁素子を介してMCUに入力する場合、出力時間絶縁素子の伝搬遅延時間がFO出力のLレベル最小時間より長いときに、遅延に合わせてFO出力時間を拡張するのに利用できる。
IGBT IPMの制御入力(HINU、HINV、HINW、LINU、LINV、LINW)
この記事のキーポイント
・制御端子HINU、HINV、HINWは上側IGBTの、LINU、LINV、LINWは下側IGBTの、各U相、V相、W相の制御入力。
・誤動作への配慮が必要で、ノイズ回避のためにRCフィルタを挿入する場合は内部のプルダウン抵抗を考慮し、制御端子の入力仕様を満足するように設定する。
・制御入力端子HINU、HINV、HINWには、HVCC無通電時に機種ごとに異なる抵抗値を示すローム独自の機能が付加されており、基板実装後に機種の識別が可能で誤実装などを検出可能。
・機種識別抵抗の測定は、指定の測定方法に則る。
【資料ダウンロード】 IGBTの基礎
IGBTは代表的なパワーデバイスの1つで、モーター駆動を始めとした幅広いアプリケーションで利用されています。このハンドブックでは、IGBTの基礎的な理解として、IGBTの特徴を基にした適用範囲とアプリケーションのイメージ、構造と動作原理、他のパワーデバイスとの比較および使い分けについて解説します。