IGBTパワーデバイス|応用編

IGBT IPM:保護機能と動作シーケンス IGBT IPMの熱遮断保護機能(TSD)

2023.01.10

この記事のポイント

・BM6337xSシリーズは、LVIC(Low Side Gate Driver)の温度をモニタする熱遮断回路を搭載しており、LVICのTjが規定以上になると熱遮断回路が作動し、下側アーム全相のIGBTをオフし、FO信号を出力する。

・TSDが作動した場合、IGBTのTjが絶対最大定格の150°Cを超えているため、IPMを交換する必要がある。

・この機能でモニタしているTjはLVICチップのもので、IGBTチップの急激な温度上昇には追随できないため、急激なTjの上昇には有効に機能しないので注意が必要。

3つ目の熱遮断保護機能について説明します。なお、この保護機能はBM6337xSシリーズのみの搭載で、BM6357xSシリーズには搭載されていません。

熱遮断保護機能(TSD)

BM6337xSシリーズは、LVIC(Low Side Gate Driver)の温度をモニタする熱遮断回路を搭載しています。LVICの温度が規定の温度以上になると熱遮断回路が作動し、下側アーム全相のIGBTをオフし、FO信号を出力します。

項目 記号 規格値 単位 条件
最小 標準 最大
熱遮断回路トリップ温度 TSDT 115 130 LVICの温度
熱遮断回路ヒステリシス温度 TSDHYS 20 LVICの温度

熱遮断保護機能の動作シーケンス

以下は、LVICに搭載されているLVCC熱遮断保護機能の、動作シーケンスとタイミングチャートです。動作説明のd1~d7は、タイミングチャートに示されたそのポイントの動作になります。

  1. d1:通常動作においてIGBTがオンすると、出力電流Icが流れる
  2. d2:LVICのTjが上昇すると、TSDTで保護動作を開始
  3. d3:下側アーム全相のIGBTをオフ(LINの入力に関わらずオフ)
  4. d4:FO出力(180µs(Min))、TSD=H期間180µs以下の場合。TSD=H期間180µs以上では、TSD=HであるTjがTSDT-TSDHYSまで下降するまでの期間FO出力(FO=L)
  5. d5:LVICのTjが低下すると、TSDT-TSDHYSでリリース
  6. d6:LIN=H(点線)でリリースされても、次のLIN立ち上がりエッジまではIGBTはオフ状態。(各相へのLIN入力で相ごとに通常状態に復帰する)
  7. d7:通常動作。IGBTがオンし、出力電流Icが流れる

ローム第3世代のIGBTIPMであるBM6337xS-xx/BM6357x-xxシリーズ。熱遮断保護機能の動作シーケンス(LVICに搭載)

以下は、IGBT IPM実装時の内部LVICチップへの熱の伝わり方を示した模式図です。IGBTチップの発熱はボンディングワイヤを経由してLVICチップに伝導する経路と、ダイアタッチパッドからパッケージ裏面放熱パッド、そしてヒートシンクを経由し、さらにパッケージ封止樹脂に戻った熱が伝導する2つの経路があります。

ローム第3世代のIGBTIPMであるBM6337xS-xx/BM6357x-xxシリーズ。IGBT IPM実装時の内部LVICチップへの熱の伝わり方を示した模式図

※注意事項

  • ・TSDが作動し、エラー出力が発生した場合、即座に動作停止し異常状態を回避してください。
  • ・エラー出力により停止した際に、ヒートシンクの緩みや外れ、冷却ファン異常停止など冷却システムの異常が原因であった場合は、それらによってTSDが作動しエラーが出力された可能性が高くなります。その場合、IGBTチップの接合部温度が絶対最大定格の150°Cを超えているため、IPMを交換する必要があります。
  • ・本機能でモニタしている接合部温度は、下側IGBTゲートドライバチップ(LVIC)の温度です。IGBTチップの急激な温度上昇には追随できないため、モータロックや過電流時などのような急激な接合部温度上昇には、本機能は有効に機能しないので注意してください。

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