電気回路設計|基礎編

キルヒホッフの法則

2024.09.30

キルヒホッフの法則は、電気回路の電流と電圧の関係を式で表すための基本法則です。節点に出入りする電流の関係を表すキルヒホッフの第1法則(キルヒホッフの電流則:KCL、Kirchhoff's current law)と、閉回路を一周したときの電圧の関係を表すキルヒホッフの第2法則(キルヒホッフの電圧則:KVL、Kirchhoff's voltage law)の2つで構成されます。

オームの法則だけで解ける回路は限られています。配線が枝分かれしたり電源が2つになったりすると、未知の電流や電圧を求められないためです。そのような回路解析の基礎となるのがキルヒホッフの法則であり、回路シミュレータや設計時の手計算でも、複雑な回路は最終的にこの法則を用いて連立方程式を立てて解きます。

法則そのものは非常に単純ですが、多くの場合、つまずきやすいのは符号の付け方です。本記事では、公式の使い分けと、符号で迷わない手順を固めた上で、節点の電流、直列回路の電圧降下、電源が2つある回路という3つの例題について、解答と計算が正しいかの確認までを通して説明します。

キルヒホッフの法則の公式を先に確認

キルヒホッフの法則の公式は2つだけです。第1法則が\(\sum I_{IN}=\sum I_{OUT}\)、第2法則が\(\sum V=0\)です。覚えることはこれですべてで、この2つの式をどの場面でどのように使うかが重要です。後の例題を理解しやすくするため、まず表で全体像を確認します。

公式の確認だけが目的であれば、この表だけでも十分です。ただし、2つの式は適用する場面を取り違えると正しく機能しません。この記事では、その判断方法を説明します。

法則 公式 意味
第1法則(電流則:KCL) \(\sum I_{IN}=\sum I_{OUT}\) 節点に流れ込む電流の和と、流れ出る電流の和は等しい
第2法則(電圧則:KVL) \(\sum V=0\) 閉回路を一周したときの電圧の総和は0になる

第1法則は「点(節点)」で電流を整理する道具、第2法則は「一周(閉回路)」で電圧を整理する道具です。この「点か、一周か」という対比が、2つの法則を使い分ける際の羅針盤になります。次の早見表で、場面ごとの使い分けを具体的に確認します。

キルヒホッフの第1法則・第2法則の使い分け早見表

使い分けの答えを先に示すと、電流の行き先を知りたいときはキルヒホッフの第1法則(電流則)、電圧の配分を知りたいときはキルヒホッフの第2法則(電圧則)となります。実際の回路解析では、どちらか一方だけを使うのではなく、両方を組み合わせて連立方程式をつくります。節点の数だけ電流則(KCL)の式、閉回路の数だけ電圧則(KVL)の式、という形で式を立てるのが基本の型です。この型さえ手元にあれば、初めて見る回路でも式の本数で迷うことはなくなります。場面ごとに整理すると次のようになります。

解きたい場面 使う法則 式の考え方
節点で電流が分岐・合流する 第1法則(電流則:KCL) 流入電流の和 = 流出電流の和
閉回路を一周して電圧を追う 第2法則(電圧則:KVL) 一周の電圧の総和 = 0
節点が複数ある回路をまとめて解く ノード解析 KCLを各節点に適用する
閉回路が複数ある回路をまとめて解く メッシュ解析 KVLを各閉回路に適用する

法則の使い分けに迷った場合は、着目するのが「点(節点)」なら第1法則、「一周(閉回路)」なら第2法則です。表の下2行にあるメッシュ解析とノード解析は、キルヒホッフの2つの法則を大規模な回路向けに手順化したものです。その位置づけは記事の後半で説明しますが、まずこれら2つの法則がなぜ成り立つのかを確認します。成り立ちを理解しておくことで、符号のルールを単なる暗記事項ではなく、法則から自然に導かれる結果として捉えられるようになります。

キルヒホッフの法則とは

キルヒホッフの法則は、1845年にドイツの物理学者グスタフ・キルヒホッフがまとめた、電流に関する第1法則と電圧に関する第2法則の総称です。どちらも回路のためだけにつくられた特別な決まりではありません。第1法則は電荷保存則を配線の分岐点に当てはめたものであり、第2法則はエネルギー保存則を閉じた経路に当てはめたものです。キルヒホッフの法則は物理の基本原理に基づいた法則であり、どんな回路解析にも広く使われています。この章では、第1法則と第2法則を順に図と式で確認します。

キルヒホッフの第1法則:キルヒホッフの電流則(KCL)

第1法則は「ある節点に流れ込む電流の総和は、その節点から流れ出る電流の総和と等しい」という法則です。キルヒホッフの電流則、又はKCL(Kirchhoff's Current Law)とも呼ばれ、式では次のように表します。

\(\sum_{}^{}I_{in}=\sum_{}^{}I_{out}\)

キルヒホッフの第1法則(電流則・KCL)の概念図。図1:節点に流れ込む電流と流れ出る電流(KCLの概念図)

この法則が成り立つ理由は、電荷が節点に溜まらないためです。配線の分岐点は単なる接続点であり、電荷を蓄える働きを持ちません。入ってきた電流は、同じ量だけ流れ出ることになります。水道管のT字継手を例にすると分かりやすいでしょう。2本の管から流れ込んだ水は、残る1本から出ていく以外に行き場がありません。

なお、第1法則には、式を立てやすい別の書き方もあります。流入をプラス、流出をマイナスと定めると、「節点での電流の代数和は0」と表せます。どちらの形も広く用いられていますが、意味する内容は同じです。

キルヒホッフの第2法則:キルヒホッフの電圧則(KVL)

第2法則は「閉回路を一周したときの電圧の総和は0になる」という法則です。キルヒホッフの電圧則、又はKVL(Kirchhoff's Voltage Law)とも呼ばれます。

\(\sum_{}^{}V=0\)

キルヒホッフの第2法則(電圧則・KVL)の概念図。閉回路を一周したとき、電源の起電力と各抵抗の電圧降下の総和が0になることを示す図2:閉回路を一周する電圧の関係(KVLの概念図)

この法則はエネルギー保存則に基づいています。電圧の正体は電位、つまり回路上の位置ごとに決まるエネルギーの水準です。閉回路を一周して出発点に戻れば、電位も必ず元の値に戻ります。そのため、途中の電位上昇(電源によるエネルギーの供給)と電位降下(抵抗などによるエネルギーの消費)は、一周したときの合計で互いに打ち消し合わなければなりません。これを別の形で表したものが、「起電力の和 = 電圧降下の和」です。

この関係は単なる計算上の規則ではなく、物理的な事実でもあります。電源が回路に供給するエネルギーと、負荷で消費されるエネルギーは、一周ごとに等しくなります。この性質は後ほど、例題3で電力の収支を確認する際に取り上げます。

使い分けの考え方(点ならKCL、一周ならKVL)

キルヒホッフの2つの法則は、着目する対象が異なります。第1法則が対象とするのは「点」、つまり節点での電流の出入りです。第2法則が対象とするのは「一周」、つまり閉回路に沿った電圧の和です。求めたいものが分岐後の電流であれば第1法則から、各部品にかかる電圧であれば第2法則から考えるのが自然です。

未知数が複数ある回路では、独立した節点の数に応じてKCL(キルヒホッフの電流則)の式を、独立した閉回路の数に応じてKVL(キルヒホッフの電圧則)の式を立てて、連立方程式として解きます。言葉だけでは抽象的な説明になります。この後の例題では、節点1つの基本的な問題から電源2つの本格的な回路まで、同じ手順がどのように適用されるかを順に確認します。

式の立て方と符号の付け方

符号の付け方の基準は、「電位が上がればプラス、下がればマイナス」という原則一つだけです。キルヒホッフの法則でつまずく原因の多くは符号の処理にあり、逆に言えば、この基準を手順として定着させてしまえば、残りは代数計算だけです。回路解析の誤答の大半は符号の取り違えによるものです。そのため、この章では例題に入る前に符号の扱いを確認します。手順そのものは5つだけです。一度型として理解すれば、回路がどれほど複雑になっても同じ手順で対応できます。以下では、手順と、それによって得られる式の形を順に確認します。

符号で迷わないための5つの手順

次の5つを毎回同じ順序で実行します。

  1. 各枝の電流の向きを仮定し、回路図に矢印を書き込む。
  2. 閉回路を回る向きを決める(時計回りなど、ループごとに固定する)。
  3. 回る向きに沿って一周し、電位が上がる要素はプラス、下がる要素はマイナスとして電圧を加算する。
  4. 抵抗は、仮定した電流と同じ向きに通過する場合は電圧降下(マイナス)とする。
  5. 一周分の合計を0と置く。

このうち2つの手順には補足があります。手順1の電流の向きは任意に設定して構いません。仮定した向きが実際と逆の場合は、計算結果がマイナスになるだけで、計算自体は正しく進みます。この性質は後の章で具体例とともに確認します。手順3で重要なのは、電源と抵抗で別々の符号規則を覚える必要がないことです。「回る向きに対して電位が上がるか、下がるか」という判断だけで、すべての要素を同じように処理できます。

キルヒホッフの法則の符号の付け方。閉回路に電流の向きの矢印と、電位の上昇をプラス、降下をマイナスとする符号を書き込んだ図図3:閉回路に電流の矢印と符号を書き込んだ例

「一周の総和は0」と「起電力の和 = 電圧降下の和」は同じ式

手順を最も単純な回路に当てはめます。電源\(V_{S}\)が3つの抵抗を直列に駆動している回路で、電流はプラス端子から出る向きに、一周も同じ向きに取ります。電源を通るときはマイナス端子からプラス端子へ抜けるので電位は上がり、+\(V_{S}\)です。各抵抗は電流と同じ向きに通過するので電位は下がり、それぞれマイナスの項になります。

\(V_{S}-V_{1}-V_{2}-V_{3}=0\)

電圧降下の項を右辺に移項すると、次の形になります。

\(V_{S}=V_{1}+V_{2}+V_{3}\)

2つ目の式は、「電源電圧は各抵抗の電圧降下の合計に等しい」と表せます。すなわち、先ほどの「起電力の和 = 電圧降下の和」です。つまり、\(\sum V=0\)の形とこの形は、同じ式を移項しただけです。教材によっては、どちらの式も使われていますが、どちらから立式しても答えは同じため、問題ごとに分かりやすい方を選択できます。

例題1:節点の電流を求める

最初の例題は、節点が1つだけの単純な回路を扱います。基板上の配線が合流する場所では、いくつかの電流は分かっていても、残りの電流が分からないという状況がよくあります。そのような場面で第1法則をどのように適用するかを、最も単純な形で確認します。例題は段階的に構成しており、この後の例題でも同じ考え方を用います。回路が大きくなって節点が増えた場合も、各節点について同様の式を立てる点は変わりません。

問題: ある節点に電流 \(I_{1}\)=2Aと\(I_{2}\)=3Aが流れ込み、電流 \(I_{3}\)が流れ出ています。\(I_{3}\)を求めてください。

キルヒホッフの第1法則の例題。2Aと3Aの電流が節点に流れ込み、1本の電流I_3が流れ出る図4:節点に2つの電流が流れ込み1つが流れ出る

解答: 与えられているのは流入する2つの電流であり、求めるのは流出する1つの電流です。両者を直接結び付けるのが第1法則であり、流れ込む量と流れ出る量は等しいため、式は1本で済みます。

\(I_{1}+I_{2}=I_{3}\)

\(2+3=I_{3}\)

よって

\(I_{3}=5A\)

となります。

流入をプラス、流出をマイナスとする代数和の形を用いる場合は、2+3-\(I_{3}\)=0と書いても同じ結果が得られます。

この例題では、第1法則の基本的な使い方を示しました。回路が大きくなって節点が増えても、各節点で電流の流入と流出を整理するという考え方は変わりません。必要な節点について同じ形の式を立て、それらを連立して解くことで、各部の電流を求められます。さらに、第2法則と組み合わせることで、抵抗や電源を含む回路全体をより体系的に解析できるようになります。

例題2:直列回路の電圧降下を求める

2つ目の例題は、閉回路が1つだけの回路を扱います。ここでは第2法則の使い方に加えて、キルヒホッフの法則とオームの法則の役割分担も確認します。KVL(キルヒホッフの電圧則)が閉回路全体の関係を式で表し、オームの法則が各抵抗の電圧を電流で表します。この組み合わせは、回路が複雑になっても変わりません。数値も計算もごく単純な問題ですが、最後に得られる計算結果の数字には、実務でもよく見られる関係が隠れています。それが何かは、検算の後で説明します。

問題: 12Vの電源に、3Ωと5Ωの抵抗が直列に接続されています。回路に流れる電流と、各抵抗の電圧降下を求めてください。

キルヒホッフの第2法則の例題回路。12Vの電源に3Ωと5Ωの抵抗が直列接続され、電流1.5Aが流れる図5:12V電源と3Ω・5Ωの直列回路

解答: 直列回路では電流の通り道が1本しかないため、流れる電流は1つです。これを I と置き、電流の向きを電源のプラス端子から出る向きに仮定して、同じ向きに閉回路を一周します。電源では12Vの上昇が生じ、各抵抗の電圧降下はオームの法則により(\(I \times R\)) と表せるため、式は次のようになります。

\(12-3I-5I=0\)

電流の項をまとめて解きます。

\(8I=12\)

\(I=1.5A\)

電流が分かれば、各抵抗の電圧降下はオームの法則からすぐに求められます。

3Ω側が

\(V_{1}=1.5 \times 3=4.5V\)

5Ω側が

\(V_{2}=1.5 \times 5=7.5V\)

になります。

検算:

\(V_{1}+V_{2}=4.5+7.5=12V\)

となり、電源電圧と一致します。一致しない場合は、符号又は計算のどこかに誤りがあると考えられます。

答えを利用する前にこの検算を行うことで、符号や計算の誤りを効率よく発見できます。得られた計算結果には、もう1つ読み取れることがあります。12Vは抵抗値に比例して、3Ωに4.5V、5Ωに7.5Vと配分されました。この比例配分こそが分圧(電圧分割)であり、実務でもよく使われる関係式の1つです。分圧の法則は、この例題を一般化したものにほかなりません。

例題3:電源が2つある回路を連立方程式で解く

この例題では、キルヒホッフの法則の有効性がより明確になります。電源が2つある場合、直列・並列の合成抵抗では回路を簡単化できません。それぞれの電源が電流の配分に影響を与えるため、1つの電源を基準に回路全体を整理できないからです。それでも、キルヒホッフの法則の手順は変わりません。未知数を定め、その数に応じて必要な式を立て、連立方程式として解きます。ここまでの2つの例題で用いた考え方はそのままであり、新たな法則や手順を追加する必要もありません。変わるのは、扱う式の数だけです。

問題: 上側の節点Aと下側の共通線との間に、次の3本の枝が並列に接続されています。

・枝1:電源\(V_{S1}\)=12V と抵抗 \(R_{1}\)=2Ωの直列 ・枝2:抵抗 \(R_{2}\)=4Ω

・枝3:抵抗 \(R_{3}\)=2Ω と電源 \(V_{S2}\)=6Vの直列

\(V_{S1}\)・\(V_{S2}\)の極性はともに、プラス端子が節点A側(上側)、マイナス端子が共通線側(下側)です。極性は図の表示に従います。各枝に流れる電流を求めてください。

電源が2つある回路をキルヒホッフの法則で解く例。12V電源、6V電源、3本の抵抗、節点A、各枝の電流I_1・I_2・I_3、電源の極性を示す図6:電源2つと抵抗3つからなる回路

式を立てる(KCLが1本、KVLが2本)

最初に行うのは、未知の電流の数を確認することです。枝が3本あるので、未知の電流は\(I_{1}\)・\(I_{2}\)・\(I_{3}\)の3つです。したがって独立な式が3本必要になります。

電流の向きを仮定します。\(I_{1}\)は枝1から節点Aへ流れ込む向き、\(I_{2}\)は節点Aから\(R_{2}\)を通って下る向き、\(I_{3}\)は節点Aから\(R_{3}\)を通って枝3へ向かう向きとします。これは仮定した向きにすぎないため、実際の向きと逆であっても問題ありません。その場合は、計算結果が負の値として現れます。

1本目の式は、節点AでのKCLです。流れ込む電流の総和と流れ出る電流の総和は等しいので、

\(I_{1}=I_{2}+I_{3}\)

となります。

残りの2本はKVLから求めます。左の閉回路\(V_{S1}\)→\(R_{1}\)→\(R_{2}\)を、\(I_{1}\)の向きに進み、続いて\(R_{2}\)を\(I_{2}\)の向きに下ると、電源では12Vの上昇、2つの抵抗では電圧降下が生じるため、

\(12-2I_{1}-4I_{2}=0\)

右の閉回路\(R_{2}\)→\(R_{3}\)→\(V_{S2}\)は、\(R_{2}\)を\(I_{2}\)と逆向きに上るため\(4I_{2}\)の上昇、\(R_{3}\)を\(I_{3}\)の向きに進むため電圧降下、\(V_{S2}\)をプラス端子からマイナス端子へ抜けるため6Vの降下となるので、

\(4I_{2}-2I_{3}-6=0\)

となります。

ここで、「両方の電源を通る外側の大きなループは使わなくてよいのか」と疑問に思うかもしれません。外側のループから得られる式は、すでに立てた2本のKVLの式を加えたものと同じであり、新しい情報を含みません。そのため独立な式としては使えませんが、後で検算に利用できます。

連立方程式を解く

3本の式が揃ったので、後は未知数を1つずつ消していきます。まず、KCL(キルヒホッフの電流則)の式\(I_{1}=I_{2}+I_{3}\)を左側のループの式に代入し、\(I_{1}\)を消去します。

\(12=2\left(I_{2}+I_{3}\right)+4I_{2}=6I_{2}+2I_{3}\)

次に、右側のループの式を変形して、\(I_{3}\)を\(I_{2}\)で表します。

\(I_{3}=2I_{2}-3\)

この式を左側のループの式に代入すると、未知数は\(I_{2}\)のみになります。

\(12=6I_{2}+2\left(2I_{2}-3\right)=10I_{2}-6\)

\(I_{2}=1.8A\)

あとは求めた値を順に代入していくだけです。

\(I_{3}=2 \times 1.8-3=0.6A\)

\(I_{1}=1.8+0.6=2.4A\)

3つとも正の値で求まりました。これは、最初に仮定した3つの電流の向きがすべて実際の向きと一致していたことを示しています。

検算と結果の読み解き

答えが得られたら、求めた電流が回路全体で矛盾していないかを確認します。1つ目の検算は、式を立てる際には使用しなかった外側のループです。

外側のループを\(V_{S1}\)→\(R_{1}\)→\(R_{3}\)→\(V_{S2}\)の向きに一周すると、\(V_{S1}\)による電圧上昇と、\(R_{1}\)、\(R_{3}\)、\(V_{S2}\)による電圧降下がつり合います。したがって、KVLより次の式が成り立ちます。

\(V_{S1}-R_{1}I_{1}-R_{3}I_{3}-V_{S2}=0\)

ここに、\(V_{S1}=12\,\mathrm{V}\)、\(R_{1}=2\,\Omega\)、\(I_{1}=2.4\,\mathrm{A}\)、\(R_{3}=2\,\Omega\)、\(I_{3}=0.6\,\mathrm{A}\)、\(V_{S2}=6\,\mathrm{V}\)を代入します。

\(12-2 \times 2.4-2 \times 0.6-6=12-4.8-1.2-6=0\)

外側のループでもKVLが成立しているため、求めた電流が回路の電圧関係と矛盾していないことを確認できます。

2つ目の検算は、電力の収支です。KVLはエネルギー保存則に基づくため、回路全体で見たときに、供給される電力と消費又は吸収される電力も一致します。

12 V電源が供給する電力は、電源電圧と電源から流れ出る電流の積で表されます。

\(P_{S1}=V_{S1}I_{1}\)

\(P_{S1}=12 \times 2.4=28.8 W\)

一方、3つの抵抗で消費される電力は、\(P=I^{2}R\)より次のように表されます。

\(P_{R}=I_{1}^{2}R_{1}+I_{2}^{2}R_{2}+I_{3}^{2}R_{3}\)

\(P_{R}=2.4^{ 2} \times 2+1.8^{ 2} \times 4+0.6^{ 2} \times 2=11.52+12.96+0.72=25.2 W\)

12 V電源が供給する 28.8 W に対し、抵抗で消費される電力は 25.2 W です。差分の 3.6 W は、6 V電源が吸収する電力に対応します。

この回路では、\(I_{3}\)が\(V_{S2}\)のプラス端子へ流れ込んでいます。そのため、6V電源は電力を供給するのではなく、電力を吸収しています。

\(P_{S2}=V_{S2}I_{3}\)

\(P_{S2}=6 \times 0.6=3.6 W\)

したがって、抵抗で消費される電力と6 V電源が吸収する電力の合計は、次のようになります。

\(25.2+3.6=28.8 W\)

これは12 V電源が供給する電力と一致します。このことから、電圧の関係だけでなく、電力の収支から見ても、求めた電流が妥当であることを確認できます。

この最後の観察は、単なる検算以上の意味を持ちます。プラス端子に電流が流れ込む電源は、エネルギーを供給するのではなく吸収しています。これは、電池が充電されているときに起きている現象と同じです。電源が2つあるこの回路は、充電回路の基本的構造そのものであり、キルヒホッフの法則は、エネルギーがどちらへ流れるかを予測するための道具であることが分かります。

よくある間違いと負の答えの扱い

間違いの原因の多くは、符号の扱いにあります。手順そのものは前章まで整理できているので、後は誤りやすい箇所をあらかじめ知っておけば、不要な遠回りを避けられます。つまずきは大きく4つの型に分けられます。どれも起こりやすい間違いですが、事前に確認しておくだけで十分な対策になります。順に確認した上で、「答えが負になったとき」の意味について、例題3の数値を使って具体的に確認します。

4つのつまずきの型

1つ目は、途中で電流の向きの仮定を変えてしまうことです。最初に書いた矢印は、答えが出るまで変更しないのが鉄則です。途中で向きを変えると符号の体系が崩れ、計算結果の整合性が保てなくなります。

2つ目は、電圧降下と起電力で符号のルールを別々に覚えようとして混乱することです。判定の基準は「回る向きに電位が上がるか、下がるか」の1つだけで十分です。電源と抵抗で別々の規則を設けるほど、符号の取り違えが起こりやすくなります。

3つ目は、答えが負になったときに計算誤りだと判断してしまうことです。これについては次の節で詳しく扱います。

4つ目は、並列の枝には同じ電流が流れると考えてしまうことです。並列回路で等しくなるのは電圧であり、電流は枝ごとに異なります。その配分を決めているのがKCLです。

これら4つのつまずきに共通する対策が検算です。求めた値を、式を立てる際に使用しなかった別の閉回路へ代入し、KVLの合計が0になることを確認します。例題2および例題3で示したように、この確認によって符号の取り違えをはじめとする多くの誤りを発見できます。

負の答えが意味すること

負の答えは、「実際の電流が仮定した矢印とは逆向きに流れている」という結果を示しており、計算結果としては正しいものです。電流の大きさはそのまま使えます。

例題3の数値を用いて確認します。\(I_{3}\)を逆向き、つまり枝3から節点Aへ流れ込む向きに仮定した場合を考えます。仮定する向きが変わると式中の符号も変わりますが、計算手順は変わりません。答えは\(I_{3}=-0.6\,\mathrm{A}\)となります。これは、同じ電流、同じ物理的な向きを、逆向きの基準で表しただけです。仮定した矢印の向きを反転させれば、そのまま先へ進めます。

閉路・閉回路・開回路の違い

3つの用語の違いを整理すると、閉路は「回路図の上で一周できる経路」、閉回路は「実際に電流が流れる一周の経路」、開回路は「経路が途中で断たれ、電流が流れない状態」のことです。ここまでの例題では深く区別せずに「閉回路を一周」として扱ってきましたが、通常の回路解析ではそれで支障はほとんどありません。ただし、開回路が関係する場面では、この違いを理解していないと誤った結論につながることがあります。用語そのものの違いは単純ですが、故障解析で重要になるのは、3つ目の開回路の性質です。その点を含めて、順に整理していきます。

開回路と閉回路の比較図。スイッチが開いて電流が流れない開回路と、経路が完成して電流が流れる閉回路を並べて示す図7:開回路と閉回路

閉路(閉ループ)と閉回路

閉路(閉ループ)とは、回路図の上で連続してたどり、出発点に戻ることができる経路のことです。KVL(キルヒホッフの電圧則)が適用されるのはこの閉路であり、そこに実際に電流が流れているかどうかは問いません。一方、閉回路は、閉路のうち実際に電流が流れている回路を指します。電源から出発し、抵抗・コンデンサ・インダクタなどの素子を通って再び電源へ戻る経路が完成している状態です。閉回路では電流が途切れることなく流れ、電圧降下は経路上の各素子に分配されます。

通常の回路解析では、この2つを区別しなくても支障はほとんどありません。違いが重要になるのは、次に説明する開回路を含む場合です。

開回路とKVL(キルヒホッフの電圧則)の関係

開回路とは、スイッチが切れている、あるいは配線が断線しているといった理由で電流の通り道が途中で断たれ、電流が流れていない状態です。

ここで見落とされやすいのが、「電流が流れない枝を含んでいても、閉路としてたどれるのであればKVLは成立する」という点です。スイッチが開いた枝を含む閉路を考えると、電流は0であるため、各抵抗の電圧降下も0になります。それでも、開いたスイッチの両端には電位差が存在しており、その電位差を含めれば、一周したときの代数和はきちんと0になります。抵抗の降下がすべて0であるため、電源の電圧はそのまま開いたスイッチの両端に現れます。

これは単なる理論上の話ではありません。動かなくなった基板を調べているとき、想定外の場所に電源電圧がそのまま現れていれば、断線箇所の位置を絞り込めます。開いたスイッチの両端電圧や断線箇所の電位差を計算できるこの性質は、故障解析の現場で日常的に利用されています。また、意図的に開回路をつくるスイッチ制御回路の設計においても、その考え方は同じです。

オームの法則・メッシュ解析・ノード解析との関係

キルヒホッフの法則は、単独で完結する法則ではありません。各抵抗の電圧と電流の関係を表すにはオームの法則と組み合わせて用い、回路が大きくなればメッシュ解析とノード解析という手順化された解析手法へと発展します。また、どのような回路にも無条件で適用できるわけではなく、成立には1つの前提があります。この章では、キルヒホッフの法則が回路解析の中でどのような役割を持つのかを整理します。全体像を把握することで、この先に登場する解析手法のどれもがキルヒホッフの法則の延長にあることが分かり、相互の関係が見通しやすくなります。

オームの法則との組み合わせ

オームの法則は、導体の電圧\(V\)・電流\(I\)・抵抗\(R\)の関係を表す法則です。

\(V=I \times R\)

キルヒホッフの法則が扱うのは、「回路全体において電流と電圧がどうつながるか」です。一方、オームの法則が扱うのは「個々の抵抗において電圧と電流がどのような関係にあるか」です。例題2と例題3で見たとおり、KVL(キルヒホッフの電圧則)で立てた式の電圧降下を、オームの法則を用いて\(I \times R\)に置き換えることで、未知数を電流だけに絞ることができ、連立方程式として解ける形になります。この2つの法則は競合する関係ではなく、常に組み合わせて使用します。オームの法則の詳細については、オームの法則の記事で解説します。

直流回路と交流回路での適用

直流回路では、電流の向きと電圧が一定であるため、ここまで説明した形のままキルヒホッフの法則のKCL・KVLを適用できます。交流回路では、電圧と電流が時間とともに変化し、位相差や周波数も関係してくるため、抵抗の代わりにインピーダンスを用いて同じ法則を適用します。法則そのものは交流回路でも成立しており、複素数を用いて計算する点が異なるだけで、節点とループを基準に考えるという考え方は変わりません。

ここで知っておくべき前提が1つあります。キルヒホッフの法則が成り立つのは、回路を集中定数回路として扱える場合です。集中定数回路とは、抵抗や電源といった性質が各素子に集中しており、配線そのものの影響を無視できるとみなす回路モデルです。信号の周波数が高くなり、配線の長さが波長に対して無視できなくなると、この前提は成り立たなくなります。その場合、分布定数回路として扱う必要があります。電源回路や低周波の信号回路では、この前提を意識する場面はほとんどありませんが、高速信号や高周波を扱う基板設計では、集中定数回路として扱える範囲を把握することが配線設計の出発点になります。

メッシュ解析・ノード解析へのつながり

閉回路や節点の数が増えると、式を1本ずつ手作業で立てる方法では手間が増え、誤りも生じやすくなります。そこで用いられるのが、KVL(キルヒホッフの電圧則)をすべての閉回路へ系統的に適用するメッシュ解析と、KCLをすべての節点へ系統的に適用するノード解析です。どちらも符号の扱いを含めて手順が体系化されているだけで、基礎になっているのはキルヒホッフの法則そのものです。例題3で用いた考え方は、メッシュ解析やノード解析にもそのまま引き継がれます。未知数が4つを超えるような回路に出会った場合は、メッシュ解析とノード解析の記事を参照してください。

電圧・電流の測定とキルヒホッフの法則

キルヒホッフの法則は、机上の回路解析だけに用いる法則ではありません。実際の回路で電圧や電流を測るときにも、どこを測るかの判断と、測定値をどう解釈するかの判断、その両方の基準になります。測定点を必要以上に増やさずに済むのも、机上の計算と実測が食い違ったときにどちらに原因があるのかを判断できるのも、この法則を基準として回路全体を捉えられるためです。電圧と電流では計器の接続方法が異なるため、それぞれについて説明します。

電圧の測定

電圧を測るときは、電圧計を測定したい2点間に並列に接続します。そして、閉回路の中のいくつかの電圧が分かれば、残りの未知の電圧はKVLで計算できます。部品が密集していてすべての点にプローブを当てられない基板でも、測定できる箇所の値から測定できない箇所の電圧を推定できるのは、この性質によるものです。

電圧測定の接続図。電圧計を測定したい2点間に並列に接続する図8:電圧計の並列接続

電流の測定

電流を測るときは、電流計を測定したい枝に直列に接続します。分岐のある回路では、1カ所の電流を測定するだけで、KCLから他の枝の電流を計算できる場合が多く、測定箇所を減らせます。

さらに、キルヒホッフの法則は測定値の整合性チェックにも使えます。測定した値がKCLやKVLと矛盾する場合は、測定方法か回路のいずれかに問題がある可能性を示す有力な手掛かりになります。測定方法の詳細については、直流回路における電流と電圧の記事で解説しています。

電流測定の接続図。電流計を測定したい区間に接続する図9:電流計の直列接続

電位差と起電力:KVL(キルヒホッフの電圧則)の物理的な意味

KVL(キルヒホッフの電圧則)の物理的な意味は、「電源が供給するエネルギーと負荷が消費するエネルギーが、一周ごとに釣り合う」ということです。この章では、その釣り合いを支える2つの概念である電位差と起電力を整理します。\(\sum V=0\)は単なる計算規則ではなく、エネルギーの収支を表しています。例題3の電力収支で確認した釣り合いを、電位差と起電力という概念から捉え直します。

電位差とは

電位差とは、2点間に生じる電位(電気的なエネルギーの水準)の差です。電荷\(Q\)を一方の点からもう一方の点へ移動させるのに必要な仕事を\(W\)とすると、電位差\(V\)は次の式で表されます。

\(V=W/Q\)

単位はボルト(V)です。電位差が大きいほど、同じ電荷を移動させるために必要な仕事も大きくなります。

起電力とは

起電力(EMF:Electromotive Force)とは、電池や発電機などの電源が回路につくり出す電位差です。電源の内部では、電場によって電荷が低い電位から高い電位へ移動します。起電力は、この電位差を維持することで回路へエネルギーを供給します。

この2つの概念で捉えると、KVLの\(\sum V=0\)は「起電力の和 = 電圧降下の和」と表せます。電源が供給するエネルギーと、負荷が消費するエネルギーは、閉回路を一周するごとに正確に釣り合います。例題3の電力収支で数値として確認したのは、この釣り合いです。電源電圧の配分を見積もる設計段階でも、故障解析における電圧低下箇所の特定でも、この釣り合いが判断の基準になります。

まとめ:式の立て方から検算までの型

キルヒホッフの法則は、KCL(キルヒホッフの電流則)とKVL(キルヒホッフの電圧則)という2つの式によって、オームの法則だけでは解析が難しい回路を扱えるようにする法則です。KCLは電荷保存を節点に、KVLはエネルギー保存を閉路に、それぞれ適用したものです。KVLは電流が流れていないループに対しても成立します。

実際の解析手順も、本記事で一通り解説してきました。手順をまとめると、電流の向きを仮定して固定する→節点の数だけKCL、閉回路の数だけKVLの式を立てる→連立方程式として解く→答えが負なら仮定した向きと実際の向きが逆だったと解釈する → 使用していないループと電力収支で検算する、という流れです。例題3で示したとおり、この手順は電源が2つある回路、すなわち充電回路にもそのまま通用できます。

ここまでの内容を理解できていれば、より複雑な回路も同じ考え方で扱えるようになります。未知数がさらに増えた回路で同じ法則を効率よく回す方法が、メッシュ解析とノード解析です。本記事で扱った考え方が、それぞれの手法でどのように用いられるのかは、各記事で解説しています。

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