3相ブラシレスモータ
3相全波ブラシレスモータの駆動:センサレス120度通電駆動
ここからは、センサレスの3相全波ブラシレスモータの駆動について説明して行きます。例として、ベーシックな120度通電駆動を用います。
3相全波ブラシレスモータの駆動:センサレス120度通電駆動
下図は、一般的なセンサレスの3相全波ブラシレスモータ120度通電駆動回路の例です。
センサレス駆動ではモータの位置検出に、ホール素子の代わりにコイルの誘起電圧を利用する方法があります。この方法では、3つのコイルの中点の信号CTを利用します。このCT信号とA1、A2、A3の信号を駆動回路に取り込み、コンパレータにより比較処理を行い各出力を生成します。このプロセスは、誘起電圧を利用する以外はセンサ付きと基本的に同様です。
誘起電圧は、永久磁石が回り通電していないコイルを貫く磁束が変化する際に発生する電圧で、通電中のコイルでは検出できません。120度通電駆動では、3相のうち2相が通電して、1相が通電していません。この通電していない相の端子に誘起電圧が表れ中点のCT電圧を利用して、誘起電圧のゼロクロス点を検出することで、モータの位置検出を行います。
3相モータでは、モータ1回転(360度)に対し1つの相に通電のないオフ期間が2回あり(120度通電+60度オフが2回)、3相分で6回あります。つまり、60度毎に位置検出が可能です。各相のゼロクロスとゼロクロス間の60度信号を基にして、出力信号を生成して行きます。
以下の駆動波形の例を使って具体的に説明します。
比較器出力BE1~3は、これらの加算である波形区間選択合成により、60度で遷移する信号に合成されます。この信号には本来の誘起電圧ではないスパイクノイズが含まれているため、マスク信号(Hの部分)を使ってスパイクノイズをマスクした誘起電圧60度信号波形を合成し、30度位相を遅らせた波形から、各合成波形、出力ゲート波形を生成して行きます。
下図は、コイルオフ期間の出力A1~3の振る舞いを拡大したものです。この例は、コイル3が電流流出状態からオフになった60度の期間です。回路図はその時の回路状態を示しています。
A2は、ハイサイドMOSFETがオンしてローサイドMOSFETがオフなので、電流が流れ出しハイレベルの電圧になっています。A1はローサイドがオンしているので、A2からの電流が流れてローレベルの電圧になります。A3は電流が流入状態からオフになるので、波形が示すように一瞬電圧が跳ね上がった後、徐々に誘起電圧がリニアに現れます。この時のA3とCT間の電圧をA3の電圧波形と重ねて破線で示してあります。CTの電圧は、おおよそA2とA1の半分くらいの電圧になります。
A3の電圧とCT電圧の差を取ると、右側に示したように誘起電圧のゼロクロス点が検出でき、前出のタイミングチャートのBE3がLからHに遷移します。
センサレス120度通電駆動をシンプルな例で説明しました。センサ付き120度通電駆動と比較すると、大まかなところは同じですが、センサ信号の代わりに誘起電圧を検出する点が異なります。
キーポイント
- ・センサレス駆動ではモータの位置検出に、ホール素子の代わりにコイルの誘起電圧を利用する方法がある。
- ・この方法では、3つのコイルの中点の信号CTを利用する。
- ・CT信号とA1、A2、A3の信号を駆動回路に取り込み、コンパレータにより比較処理を行い各出力を生成する。
- ・このセンサレス駆動は、誘起電圧を利用する以外はセンサ付きと基本的に同様。