3相ブラシレスモータ
センサレス120度通電駆動の起動方法 2:永久磁石停止位置を検出して起動
前回は、3相全波ブラシレスモータのセンサレス固有の起動方法について、基本的な2つ方法の内、同期動作運転から誘起電圧を検出して起動する方法について説明しました。今回は、永久磁石の停止位置を検出して起動する方法について説明します。
同期動作運転から誘起電圧を検出して起動する方法の課題
前回、「同期動作運転から誘起電圧を検出して起動する方法」には、いくつかの課題があることを説明しました。今回説明する「永久磁石の停止位置を検出して起動する方法」は、それらの課題を改善する方法になります。確認しやすいように、その課題を再度書き出しておきます。
<同期動作運転から誘起電圧を検出して起動する方法の課題>
- ・永久磁石の位置に関係なく合成磁界を作るので、状態によっては逆転方向のトルクがかかることがあり、永久磁石の停止位置によって起動に時間がかかる。
- ・本来、十分なトルクを発生する永久磁石と合成磁界の位置関係は90度だが、永久磁石の位置に関係なく合成磁界を作ることから70度や60度といった角度からスタートするので、一定の大きな起動トルクが得られない。
センサレス120度通電駆動の起動方法 2:永久磁石の停止位置を検出して起動する方法
早速、上記の課題への対処となる「永久磁石の停止位置を検出して起動する方法」の説明をしていきます。
具体的な例の説明をします。③では、通電によりコイル2にS極、コイル3にN極が発生します。コイル2の対向に永久磁石のS極があり、コイル3の対向には永久磁石のN極があるため、コイルの磁極化が妨げられます。そのため、電流の立ち上がりが最も緩やかで小さくなります。
⑥は③の逆で、通電によりコイル2にN極、コイル3にS極が発生します。コイル2の対向に永久磁石のS極、コイル3の対向に永久磁石のN極があるため、コイルの磁極化が助長されます。そのため、電流の立ち上がりが最も急で大きくなります。
つまり、電流が最大または最小になる通電パターンを確認することで、永久磁石の位置を検出できます。
具体的なドライバの回路ブロック例と動作波形図を使って、もう少し具体的に説明します。
ただし、最初から大きなトルクで回転を始めるので、数パターン(この波形図では4発のST_CLK分)で十分な誘起電圧を得ることができ、誘起電圧を利用した定常駆動状態に入ります。つまり、誘起電圧を検出して起動する方法の課題である、起動に時間がかかる点が改善されます。
キーポイント
- ・「永久磁石の停止位置を検出して起動する方法」は、「同期動作運転から誘起電圧を検出して起動する方法」の課題である逆転や低トルクでの起動は回避し、起動に時間がかかることを改善する。
- ・永久磁石の停止位置検出には、モータが回転しない短時間の6パターンの通電を行い、電源電流が最大(または最小)のパターンを確認する。