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基礎知識

基礎編

3相ブラシレスモータ

センサレス120度通電駆動の起動方法 1:同期動作運転から誘起電圧を検出して起動

前回、センサレスの3相全波ブラシレスモータの駆動について、ベーシックな120度通電駆動を用いて説明しました。今回は、3相全波ブラシレスモータのセンサレス固有の起動方法について説明します。基本的な起動方法として、同期動作運転から誘起電圧を検出して起動する方法と、永久磁石停止位置を検出して起動する2つの方法があるので、2回にわたり説明します。

3相全波ブラシレスモータのセンサレス120度通電駆動の起動の課題

3相全波ブラシレスモータの起動は、「3相全波ブラシレスモータの回転原理」と「3相全波ブラシレスモータの位置検出」で説明したように、センサ付きの場合はセンサにより停止時の永久磁石(ロータ)のN極とS極の位置が把握できているので、右図のように90度の合成磁界が発生するようにコイルに電流を流し始めることで起動します。

センサレスの場合は、「3相全波ブラシレスモータの駆動:センサレス120度通電駆動」で説明したように、永久磁石の回転により通電していないコイルに発生する誘起電圧を利用して位置検出を行い駆動します。したがって、停止時には永久磁石の位置が把握できないため、起動に手順が必要になります。その1つが、同期動作運転から誘起電圧を検出して起動する方法です。

3相全波ブラシレスモータのセンサ付き120度通電駆動の永久磁石と合成次回の位置関係。

センサレス120度通電駆動の起動方法 1:同期動作運転から誘起電圧を検出して起動

前述のように、センサレスの場合は停止時の永久磁石の位置が把握できないため、起動時に3つのコイルにどのように通電すればよいかがわかりません。この対処の1つとして、同期動作運転により永久磁石を回転させ、発生する誘起電圧を検出して120度通電駆動を行う方法を、下図を使って説明します。

:永久磁石が①の位置であるならば、本来は6時方向に合成磁界が発生するようにコイルに電流を流しますが、永久磁石の位置がわからないため、永久磁石の位置に関わらず予め決めた位置(図では5時方向)に合成磁界を生成します。

:この状態を一定時間維持すると、永久磁石のS(N)極が合成磁界のN(S)極に引き寄せられ、永久磁石は少し時計回りに移動(回転)します。

③、④:しかしながら、まだ誘起電圧を発生するほどの動きではないので、次に7時方向に合成磁界を発生させます。そうすると同様に永久磁石は時計回りに移動します。

⑤、⑥:続いて合成磁界を9時方向に発生させると、永久磁石はさらに時計回りに移動し、回り始めます。

3相全波ブラシレスモータのセンサレス120度通電駆動の、同期動作運転から誘起電圧を検出して起動する方法の動作説明。


この操作を続け、少しずつ切り替えるまでの時間を短くして行くと永久磁石の回転が上がり、次第に検出できるレベルの誘起電圧が発生するようになり、誘起電圧が確認できる状態になったら通常のセンサレス120度通電駆動に入ります。

つまり、この方法は永久磁石の位置に関わらず合成磁界を回転方向に作り、一定時間で切り替えることにより永久磁石が回転を始めることで発生する誘起電圧を検出して通常制御に持ち込む方法です。

この方法では、開始時に合成磁界の切り替えが早すぎると永久磁石が追従しないので、ゆっくりの周期から始めて少しずつ早めて行く方法を採る必要があります。

同期動作運転から誘起電圧検出の機能ブロックと動作波形

先に説明した動作を行う機能ブロック図と動作波形を示します。

起動周期発生発振器はST_CLKを駆動用基本波形生成ブロックに送り、この信号によって上述の永久磁石の位置に関わらず予め位置を決めた合成磁界を発生させ、信号周期で回転方向に合成磁界を切り替えて行きます。

BEMF_DETは誘起電圧の検出を知らせる信号で、この信号が起動周期発生発振器に入るとST_CLKは停止し、駆動用基本波形生成ブロックにはBEMF_DETが入力され誘起電圧に基づくよる合成磁界の生成が始まり、通常の制御に入ります。

3相全波ブラシレスモータのセンサレス120度通電駆動の、同期動作運転から誘起電圧を検出して起動するための回路ブロック図。

以下は、説明した一連の動作を示す波形例です。ST_CLK信号とBEMF_DET信号とこれらの加算信号(ブロック図参照)、そして出力電圧波形A1~3が、今回の説明に該当するところとなります。BEMF_DET信号の周期がだんだん短くなっているのは、回転数が上がって行くことを示しています。

3相全波ブラシレスモータのセンサレス120度通電駆動の、同期動作運転から誘起電圧を検出して起動する波形図例。

この起動方法には、以下の課題があります。

  • ・永久磁石の位置に関係なく合成磁界を作るので、状態によっては逆転方向のトルクがかかることがあり、永久磁石の停止位置によって起動に時間がかかる。
  • ・本来、十分なトルクを発生する永久磁石と合成磁界の位置関係は90度だが、永久磁石の位置に関係なく合成磁界を作ることから70度や60度といった角度からスタートするので、一定の大きな起動トルクが得られない。

これらの課題への対処となるのが冒頭に記したもう1つの方法で、永久磁石停止位置を検出して起動する方法になります。次回に説明を予定しています。

キーポイント

  • ・3相全波ブラシレスモータのセンサレス120度通電駆動の起動には、停止時の永久磁石の位置がわからないため以下の方法を採る。 ①同期動作運転から誘起電圧を検出して起動 ②永久磁石停止位置を検出して起動
  • ・①の方法は、永久磁石の位置に関わらず合成磁界を回転方向に作り、一定時間で切り替えることにより永久磁石が回転を始めることで発生する誘起電圧を検出して通常制御に持ち込み起動する方法。
  • ・この方法には以下の課題がある。
    -永久磁石の位置に関係なく合成磁界を作るので、状態によっては逆転方向のトルクがかかることがあり、永久磁石の停止位置によって起動に時間がかかる。
    -本来、十分なトルクを発生する永久磁石と合成磁界の位置関係は90度だが、永久磁石の位置に関係なく合成磁界を作ることから70度や60度といった角度からスタートするので、一定の大きな起動トルクが得られない。
  • ・対処としては、②の方法を採る。