2019.11.12
・3相全波ブラシレスモータの位置検出には、ホール素子を使う方法と、ホール素子を使わずモータコイルの誘起電圧を利用する方法がある。
前回説明した「3相全波ブラシレスモータの回転原理」では、3つのコイルへの駆動電流の切り替えによって3相全波ブラシレスモータが回転することを説明しました。続いて駆動方法を説明して行きますが、その前に実際の駆動では回転する永久磁石の位置検出が必要になることから、位置検出の方法について説明します。
位置検出には主に2つの方法があります。1つはセンサを使う方法で、ホール素子の電圧を利用します。前回、回転原理を説明した図にも、直接の説明はしませんでしたがH1、H2、H3のホール素子(センサ)が記されています。もう1つの方法は、各コイルの誘起電圧を検出する方法で、センサを使わないことからセンサレスと呼ばれています。
回転する永久磁石の位置を検出するしてホール素子(センサ)を使用する場合は、ホール素子の設置位置をコイルとコイルの中間点、つまり1/2の角度にあたる点とします(右図参照)。
コイル3とコイル1の間のホール素子をH1、コイル1とコイル2の間のホール素子をH2、コイル2とコイル3の間のホール素子をH3とすると、時計回りに回転している電流波形に対してホール素子の信号波形は以下のようになります(中段の波形)。
この例では、ホール素子にN極の磁界がかかると正(+)電圧、S極の磁界がかかると負(-)電圧が差動電圧で発生するとし、磁界の強さが永久磁石の回転位置によりSin波で変化するとします(波形図中段「ホール素子電圧波形」)。各相の出力電流波形は台形波とします(波形図上段「電流波形」)。波形図の時間軸に記した①~⑥の点は、前回の「回転原理」の説明で使用した図の①~⑥に対応しています。同じ図を次項の「誘起電圧を使用した位置検出(センサレス)」で使っていますので参照願います。
駆動のためには、ロータの位置によって変化するホール素子出力信号波形から出力電流波形を合成します。合成は、H1電圧波形からH2電圧波形を引き算、H2電圧波形からH3電圧波形を引き算、H3電圧波形からH1電圧波形を引き算します。これらの演算により、H1、H2、H3より30°位相の進んだSin波形(M1、M2、M3とする)を得ることができます。これらの信号を基に出力電流を生成すれば、所望の位相をもつモータ駆動用の電流波形を作ることができます。
逆転のための出力電流信号を合成するためには、H2からH1を引き算、H3からH2を引き算、H1からH3を引き算します。つまり、M1=H2-H1、M2=H3-H2、M3=H1-H3から、M1、M2、M3の合成波形の位相に合わせて出力電流を供給することで逆転が得られます。
センサ(ホール素子)を必要としない方法で、コイルに発生する誘起電圧利用します。3相全波ブラシレスモータは、コイルに対して永久磁石が回転してN極とS極が交互に変わって行くので、コイルには磁束密度の変化が生じコイル自体が発電し誘起電圧が発生します。磁束密度は磁極Nがコイル端にある時コイルに入る向きで最も大きく、磁極Sがコイル端にある時コイルから出る向きで最も大きくなります。しかし、永久磁石の着磁がSin波状の場合、磁束密度の変化は、N極とS極の中点で最も大きくなります。
上図は、前回の「回転原理」の説明に使ったものと同じで、モータの①~⑥の状態は以下の波形図の時間軸①~⑥に一致しています。
モータの①~⑥の状態と、誘起電圧波形の関係を説明します。
コイル2、コイル3も同様に、S極からN極の切り替わりの中間点では正で最も高い誘起電圧を発生し、N極からS極の切り替わりの中間点では負の最も高い誘起電圧を発生し、N極とS極がコイル端にある時は誘起電圧がゼロになります。
また、波形図が示すように、各コイルの誘起電圧波形とその駆動電流波形は位相が同じになります。
誘起電圧のゼロ点を検出して出力電流波形を合成することにより、誘起電圧をロータの位置検出信号に用いてモータを回転させることができるので、位置検出用のホール素子を使わずに制御が可能になります。
次回からは、実際の駆動方法を説明して行きます。
ローム主催セミナーの配布資料です。
ブラシ付きモータの基礎的な概要として、構造、動作原理、駆動方法、特徴などの説明です。
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