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セミナー開催レポート 「実験キットで学ぶ 電源・アナログ回路入門」ハンズオンWebセミナー ~ロームの若手エンジニアによる受講レポート~

2024.07.04

3日間18時間のハンズオンWebセミナーをZEPエンジニアリング株式会社と共催

2024年3月27日(水)、4月10日(水)、24日(水)の3回にわたり、雑誌「トランジスタ技術」の元編集長が運営するZEPエンジニアリング株式会社(エレクトロニクス分野のキット付き教材の企画・制作・販売)とロームの共催で、「実験キットで学ぶ 電源・アナログ回路入門」Webセミナーを実施しました。

▲Webセミナー予告動画

 
講師は、ZEPエンジニアリング株式会社が提供する教材を多数手がける善養寺氏が担い、電源回路設計のノウハウについて講義が行われました。講義資料と受講用の実験キットにはロームのオペアンプ、トランジスタ、ダイオードが使用され、110名限定の有料実験キット付きコースは即完売の盛況ぶりでした。
セミナーには850名以上が参加し、試作基板の設計を担当する方や新人教育を担当する方々も多く参加されました。セミナー終了後には参加者から高い満足度が寄せられました。

受講対象は、電源回路の設計に携わるエンジニア、オペアンプやフィードバック回路の理解を深めたい方、電源ICのデータシートの読み方を理解したい方、基本的な電子部品の使用方法を知りたい方などを想定したカリキュラムです。

ロームは半導体・電子部品の開発・製造・販売を主たる事業としてますが、一部の製造装置は内製化しています。
今回は、内製装置の開発を担当する若手エンジニアも受講しました。感想を交えながら、講義の内容を振り返ります。

Webセミナーを受講しながら実験キットの基板に、はんだ付けを行う様子

▲Webセミナーを受講しながら実験キットの基板に、はんだ付けを行う様子

<受講者プロフィール>

入社
2023年(2年目)

業務内容
実習機(検査装置)の立ち上げ。
制御側を担当。
電装作業、ソフトウェア設計、
プログラミング等

 

第1回:「オームの法則から!電子回路 超入門」

第一回目は、以下の講義テーマで開催されました。

(1)オームの法則の理解 電圧/電流/抵抗の関係
設計で使う抵抗の計算
内部抵抗やインピーダンスの解説
(2)基本的な電子部品 抵抗の種類や選び方
コンデンサの基礎と使い方
コイルの基礎と使い方
(3)回路図の読み方と描き方 回路図で使うさまざまな記号と部品
回路図を描いてみる
(4)もっとも基本的な半導体素子「ダイオード」 ダイオードの定義
ダイオードを設計に利用する際の特性
データシートの読み方
(5)電子部品の取り扱い方 電子部品の構造を理解する
静電気からの保護
(6)表面実装部品のはんだ付け はんだ付けに必要な工具類
実装のための、部品表や回路図の読み方
チップ部品のはんだ付け実習
部品の取り外しやリワーク作業
(7)はんだ付けした基板のチェック 目視検査
電源の投入
電圧の測定

前半パートではオームの法則から、回路図の読み方と描き方、データシートの読み方など基礎的な解説から始まり、後半パートでは実験キットを使用し表面実装部品のはんだ付けを行いました。自身での部品実装を行うコースの受講者は、全部品の実装が次回までの宿題となりました。

●受講者感想:
業務ではんだ付けをする機会はありますが、これほど小さな抵抗を取り付けるような作業はしたことが無いです。次回までに上手くできるか少し心配です。

 

第2回:「OPアンプの基礎から!リニア電源回路 超入門」

第2回目のテーマは「リニア電源回路」です。
前半では電子回路やオペアンプの動作原理などの基本を学び、後半ではリニア・レギュレータについての幅広い解説が行われました。

(1)電源回路の基本 電源回路の役割と必要性
一般的な電源回路の要求事項
(2)よく使うアナログIC「OPアンプ」の基本 OPアンプの概要
OPアンプの動作原理
OPアンプの基本的な回路
設計で使える特殊なOPアンプ
(3)ディスクリート部品で学ぶ リニア・レギュレータ 実験に必要な測定器と道具
もっとも簡単な低電圧電源:ツェナーダイオードの利用
トランジスタの動作を理解する
シンプルなレギュレータ回路の動作確認
安定化を図る電圧フィードバックのメカニズム
位相補償の重要性
(4)リニア・レギュレータ回路の応用「電子負荷」 回路動作を理解する
(5)リニア・レギュレータの発熱 電子負荷で電流を引き、レギュレータ回路を発熱させる
発熱の原因と回路設計の注意点
(6)現実のリニア・レギュレータ 製作したレギュレータと、販売されているLDOとの違い
ローム製のLDOのデータシートを使って仕様の解説
LowDropout/過電流保護/過電圧保護/突入抑制/
オートディスチャージ/UVLO/低ノイズほか

●受講者感想:
前回の資料を振り返り、基板へのはんだ付けを行いました。抵抗やコンデンサが非常に小さく最初は苦労しましたが、段々と慣れてきました。
講義内で興味深かったポイントは“発熱の原因と回路設計の注意点”です。発熱問題は目視で分かりづらく盲点になりやすい部分だと感じました。今後、回路設計をする際に気を付けようと思います。
難しかったのは“オペアンプの動作原理”です。
オペアンプが出力する電圧の計算方法やイマジナリーショートは知っていたのですが、オペアンプがどういった過程を経てその電圧になるのかは理解できていなかったのだと気づかされました。
分かりやすく混合栓で例えていただき、理解出来ました。
回路図が複雑そうに見えたとしても、1つ1つ塊として理解していけばそれほど難しくないのだと気づかされました。各部品の仕様の見方も分かったので、自分でも調べてみようと思います。


 

第3回「小型&高効率!スイッチング電源の実践設計」

最終日の第三回目のテーマは「スイッチング電源の実践設計」です。
PWMやFETの基本原理から、スイッチング・レギュレーターの実験、講義終盤ではローム製電源ICのデータシートを見ながら、ここまで作ったものが、ワンチップで非常に小型になること、FET内蔵や効率などの特長の解説が行われました。

(1)PWMの基本原理 PWM波形の生成
PWMの利用目的
応用:LEDの明暗制御、モータの速度制御、D級アンプほか
マイコンによるPWM生成とアナログ回路によるPWM生成の比較
(2)FETの基本 FETの概要
ゲート駆動回路の解説
ローム製MOSFETのデータシートを見ながら基本動作を解説
さまざまなFET(SiCデバイスほか)の特徴
(3)スイッチング・レギュレータの実験体験 スイッチングによる電圧制御の実験
フィードバック回路による安定化
負荷がある場合のスイッチング電源のふるまい
昇圧、反転などのスイッチング電源のトポロジ
(4)スイッチング・レギュレータの利点と欠点 電子負荷で電流を引いた場合のリニア・レギュレータとの違い
小型化のポイント、ノイズ・熱対策
(5)現実のスイッチング・レギュレータ

リニアレギュレータ回路の実験の様子

▲リニアレギュレータ回路の実験の様子

前回同様、受講前には実際にテスターやオシロスコープ等を使って基板の動作確認をし、これまでの講義の復習をしてから臨んだそうです。

●受講者感想:
アナログ回路の周波数のパートでは、大学時代に授業で勉強していたので、理解しやすかったです。また、FET内部に意図しないコンデンサが生まれている所が非常に興味深かったです。抵抗を付けて放電をさせる工夫や、ゲートドライバの重要性も併せて学ぶ事が出来ました。

計3回の受講後、普段の業務で活用できそうなポイントについてうかがいました。
回路図を読む際に活用できると感じました。例えば“オームの法則の理解”を通して、回路をした人がどのような意図で抵抗を使っているのかがイメージできるようになりました。今後、回路基板を設計するような業務も予定しているので、今回の講義で学んだ事は必須知識になってくると思います。

他の参加者からも以下の声をいただき、ハンズオン形式ならではの充実したWebセミナーであったことが伺えます。

  • ・「毎回、回路を説明しながらの測定や実験があるため、とても参考になりました。」
  • ・「基本知識はある程度必要ですが、講師の方の説明が分かりやすく、日ごろ色んな回路の設計をしておられる方ならではのノウハウが聞けて大変有益でした。」
  • ・「難しい理論や理屈ばかりが書き連ねられている教科書と違い、回路設計の実践の現場で活躍されているベテランの講師さんによる血の通った講義でしたので大変有意義でした。」
  • ・「講義だけではなく、実験が一番いい席で見れるという点でとても良かったです。また、質問にできる限りその場で回答するのも良かったです。」

今回のWebセミナーの内容が学べる実習キット付きVOD教材は、こちらからご購入可能です。ショートセミナーもご覧いただけます。

ロームでは年間30回以上、技術者向けのWebセミナーを様々なテーマで開催しております。
今後も、今回のようなハンズオン形式を含め様々なセミナーを開催していく計画ですので、ぜひ(セミナー情報 | ローム株式会社 – ROHM Semiconductor)ご確認ください。

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