ブラシレスモーターとは?モーターの極数とスロット数、機械角と電気角、ホール素子(ホールIC)についても解説
2022.11.01
第2話 目次
- ・モーターとは
- ・モーターの回転原理
- ・ブラシレスモーターとは
- ・モーターの極数とスロット数、機械角と電気角
- ・ブラシレスモーターにおけるホール素子(ホールIC)
- ・ブラシレスモーターの構造例
- ・ブラシレスモーターの使用例
ブラシレスモーターとは
ここからは、ブラシレスモーターについて説明して行きます。
前回の「モーターの回転原理」の説明で例示した構造のモーターは、ブラシがあることからブラシモーター(ブラシ付きモーター、整流子電動機)と呼ばれています。ブラシモーターについて下図の名称を使って再度説明すると、回転子(ロータ)と一緒に回る整流子(導電板)が、ブラシとの接触/非接触を繰り返す機械スイッチの役割をすることで回転子の磁極が自動的に変化して回り続けるモーターと言えます。

自動で回り続けてくれるこのモーターですが、この構造はブラシと整流子が擦れ合うために生じる摩耗により寿命が短いという課題があります(ブラシの材質が開発テーマになったりします)。そこで、この機械的なスイッチ部分の寿命改善が検討され、まったく新しいスイッチ構成として生まれたのがブラシレスモーターです。

ブラシレスモーターのスイッチ部分は、スイッチ機能として実用性能を持つようになった半導体素子のトランジスタを使っています。ブラシ付きモーターの整流子とブラシの部分の代替として、6個のトランジスタ(3相全波の場合。図はMOSFETを使用した例)を使って以下のような回路を構成し、モーターを回します。

さて、この構成となり新たな技術が求められるようになります。まず前述のトランジスタには「スイッチング」に関わる技術が不可欠で、使用するにも知識が必要です。また、機械スイッチの時には自動で行われていた配線の切り替え動作の代わりにトランジスタのON/OFFを制御する信号が必要となります。それをコントローラと呼ばれる集積回路(IC)で作るようになったため「駆動制御」が技術テーマとなるようになります。さらに、その制御信号を作るには磁石の位置を検出する必要があるため、「磁石位置検出」の技術も論じられるようになりました。そしてこれらを具現化したものがモータードライバーです。
ここまでは、電気回路の観点でブラシ付きとブラシレスの違いを説明してきましたが、機械的な構成にも違いが出てきます。ブラシ付きモーターでは、永久磁石が固定され、電磁石が回っていました。これには理由があります。仮にこれを逆にしようとするとブラシを回すことになり、それに繋がる配線が捻じれてしまう問題が発生するからです。よって、電磁石が回る方が一般的です。
この構成がブラシレスモーターでは逆となります。巻線が回路に繋がったままとなるため電磁石を回すことができません。よって電磁石が固定子となり、永久磁石が回転子となります。
まとめると、ブラシレスモーターはトランジスタを使って電磁石の磁極を切り替え、その電磁石によって永久磁石でできたロータを回し、電磁石の切り替え信号はロータの位置情報を元にコントローラが生成する、そういった構成のモーターと言えます。
このようなブラシレスモーターですが、実際にモーターを扱ったり設計したりしようとすると、聴き慣れない概念や部品名が出てきて困惑することがあります。
そこでここでは、設計時などに必要な基礎知識である「極数とスロット数」、「機械角と電気角」、「ホール素子(ホールIC)」について簡単に説明しておきます。
モーターの極数とスロット数とは
モーターの特徴を示す数値である極数とスロット数、また関連する機械角と電気角について説明します。
モーターには極数とスロット数というモーターの特徴を示す数値があります。極数とはロータの磁極の数を指します。スロット数とは、厳密には下図のスロットと呼ばれる空間の数を指しますが、この図のような1つのティースに1つの巻線をする集中巻と呼ばれる巻線のモーターではコイルの数と同義で扱われます。ちなみに、下図にはありませんが複数のティースにまたがって巻く巻き方は分布巻と呼ばれます。

3相モーターの概念などの基礎的なことを説明する場合、1対のN極とS極、U相、V相、W相と呼ぶ3つの巻線を描く、2極3スロットの図を使うことが多いです(巻線はA相、B相、C相と呼ぶこともあります)。しかし、実際のモーターはこの2:3の構成を機械構造的に倍化させた4極6スロットや6極9スロット、8極・・・のものが多く使われています。また、8極9スロットや10極12スロットなど、2:3でない比率のモーターも存在します。
これら極数とスロット数の構成には、それぞれメリットとデメリットがあるので、モーターの用途に応じて各モーターメーカーが構成を決めています。モータードライバーを設計する上で、対象とするモーターがどの構成のものであるかは、必ず知っていなければなりません。
モーターの機械角と電気角とは
さて、前述の極数の違いによって、機械角と電気角(電気周期)という概念が生まれます。機械角とは、文字通りモーターの機械的な1回転の角度です。ロータの軸がある位置から回転し始めて元の位置に戻ってくるまでが360度です。これに対し、電気角は巻線(コイル)に電圧をかけるスイッチの切り替えの1サイクル(詳細は後述)を360度とします。
もう少し説明すると、まず2極3スロットであれば、機械角と電気角は一致します(下図参照)。4極6スロットとなると、機械角360度に対して電気角は2周期分となります(機械角180度で電気角が360度に達する、もしくは電気周期1周期でロータは半周しかしない、と表現できる)。

この機械角と電気角の表現の違いをよく覚えておく必要があります。たとえばモーターの回転数は1分間に何回転するかを示す単位r/min(rotations per minuteの略記号:rpm、min-1とも書く。また、rはround、roll、revolutionsと表現されることもある)で表されることが多く、他にもロータの位置や位置検出器の配置を示すために角度が用いられますが、これらは機械角がベースとなります。一方、モータードライバーが出力する電気信号は、スイッチ切り替えの1サイクルの繰り返しとなるので電気角がベースとなります。
上図のような「スイッチの切り替え」図では電気的な角度が重要であるかどうかわかりにくいかもしれませんが、ブラシレスモーター駆動技術の発展にともない、角度の概念は非常に重要になってきますので、その関係をイメージできるようにしてください。
ブラシレスモーターにおけるホール素子(ホールIC)
ブラシレスモーターの駆動には位置検出が必要で、そのためにホール素子(ホールIC)を用いる方法があります。
モーターはロータの位置に応じて電磁石の磁極を変えていく必要があります。ブラシ付きモーターではその役割をブラシと整流子が担っていますが、それらを持たないブラシレスモーターでは、その代わりをする機能が必要になります。ここでは、その機能の中でロータの位置検出の手段の一つとして用いられるホール素子について簡単に説明します。

ホール素子とは、ホール効果(Hall:Hall博士が発見)を用いた磁気検出素子です。ホール効果とは、電流が流れている物体に対し電流に垂直に磁場をかけるとローレンツ力によって電子が移動し、電流と磁場の両方に直交する方向に起電圧が現れる現象です。現在、InSb(インジウムアンチモン)やGaAs(ガリウムヒ素)、Si(シリコン)などが、良い特性を得られるためホール素子の材料として用いられています。

ホール素子の端子に発生する起電圧は、磁束密度と電流の大きさに概ね比例し、また磁石の極性が変われば電気的な極性も変わります。したがって、ホール素子が発生させる電圧を計測すれば磁石の極性が分かり、ホール素子の位置を基準としてロータがどの位置にあるかを検出できます。ホール素子の出力信号は、磁力の大きさと比例するアナログ出力のもの以外にデジタル化されたものもあります。
モーターで用いる場合、ホール素子は基板上でロータの磁極を検出できる位置に配置されます。そして、前述の電気角で60度毎にスイッチのパターンを変えることを前提とすると、電気角でそれぞれ120度離れた位置に合計3つの素子が置かれます。120度ごとに置くと、3つの素子の信号から6つの位置、すなわち60度ごとのロータ位置を判別することができます(詳細は後述)。

最近では、ホール素子を使わないセンサレス駆動と呼ばれる駆動方法や、ホール素子を1つとする方法もありますが、モーターの位置検出の基本としてホール素子の特性(電気的特性、温度特性など)も機会をみて学んでください。
次回は、ブラシレスモーターの構造例を紹介します。
この記事のポイント
・極数とは、ロータの磁極の数を指す。
・スロット数とは、厳密にはスロットと呼ばれる空間の数を示すが、集中巻と呼ばれる巻線のモーターではコイルの数と同義で扱われる。
・3相モーターを例とすると、1対のN極とS極、U相、V相、W相と呼ぶ3つの巻線を持つので、「2極3スロット」と呼ぶ。
・機械角とは、機械的な1回転の角度で、1回転は360度。
・電気角とは、スイッチ切り替えの1サイクルを360度とする。
・2極3スロットでは機械角と電気角は一致するが、4極6スロットになると機械角360度に対して電気角は2周期分となる。
・機械角と電気角の概念はモーター駆動に重要なポイントになるのでイメージできるようにしておく。
・ホール素子とは、ブラシレスモーターの駆動においてロータの位置検出の手段の一つとして用いられる素子。
・ホール素子が発生させる電圧を計測すれば磁石の極性がわかり、ロータがどの位置にあるかを検出できる。
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