ブラシレスモーターのS-T特性とI-T特性、仕様変更と特性変化

2023.05.02

前回示したブラシレスモーターの3つの状態に関する変化がイメージできるように、モーターのS-T特性とI-T特性について説明します。

第6話目次

ブラシレスモーターのS-T特性とI-T特性

モーターのS-T特性は、横軸にモーターの回転数、縦軸にトルクをとったグラフです。I-T特性は、横軸にモーターの巻線電流もしくは電源電流、縦軸にトルクをとったグラフです。これらのグラフは、縦軸と横軸が入れ替わった表し方もあります。これらはモーターの特性を知るうえでの代表的なグラフです。

S-T特性とモーターの状態

以下にモーターのS-T特性を示します。前述のように横軸にモーターの回転数、縦軸にトルクをとったグラフです。前回示したモーターの3つの状態がS-T特性のどの部分に該当するかを、グラフの中にポイントしてあります。

モーターのS-T特性とモーターの状態。

S-T特性カーブはモーターによって異なり、印加する電圧よっても変化します。図には、あるモーターのDutyが100%、50%、25%のときの特性を示しています。

「無負荷状態」はトルクがゼロとなる領域です。この時の回転数を「無負荷回転数」と言います。無負荷回転数はおおむね印加電圧に比例して変化します(グラフの横軸に沿って変化する)。

「ロック状態」は回転数がゼロの状態です。この時のトルクは、モーターが回り始める時のトルクの意味で「起動トルク」と言われます。このトルクも印加電圧に比例します(グラフの縦軸に沿って変化する)。

「負荷状態」は負荷トルクがあり、かつモーターが回っている状態で、上図の三角形の領域となります。

外力による干渉がない限り、モーターはこれらの領域を逸脱しての駆動はできません。ちなみに外力により過剰に回される場合は発電状態(回生)となります。また、逆回転させられる状態では起動トルク以上のトルクが出ることもあります。

ブラシレスモーターのI-T特性

I-T特性は、横軸にモーターの巻線電流もしくは電源電流、縦軸にトルクをとったグラフです。このグラフの特性曲線の傾きはモーターによって異なります。また、Dutyを変えた場合、巻線電流の特性曲線の傾きは変わりませんが、電源電流の傾きは変化します。よって、I-T特性を確認する際にはどちらの電流のグラフであるか把握することも重要です。

モーターのI-T特性。

S-T特性とI-T特性からわかること

この2つの特性グラフから、モーターの使用条件においてそのモーターが使用できるか否かの判断できます。たとえば、ある機器においてのモーター採用の判断をする場合、使用する際に必要となる回転数とトルクがS-T特性の図中の三角形の範囲内であれば、そのモーター仕様で使用可能という判断ができ、範囲外であれば使用不可となります。

範囲外となった場合には、電源電圧の変更やモーターの巻線仕様の変更を行います。ただし、これらの変更はモータードライバーにも影響を与えます。電源電圧の変更はICの耐圧に関係します。また、巻線仕様の変更はI-T特性の変化となり、ICの駆動電流に関係してきます。したがって、モーター特性の変更によるモータードライバーICへの影響を知っておく必要があります。

ブラシレスモーターの仕様変更と特性変化

モーターの特性は、電源電圧の変更やモーターの巻線仕様の変更によって変更することができます。ただし、前述したように、これらの変更はモータードライバーの仕様にも関係します。モーター駆動回路の設計においては、モーターの仕様変更に対する特性変化の原則を知っておくことが重要です。

モーターの特性はモーターの大きさなどでも変わってきますが、同寸法でも巻線仕様(巻線径、巻数)や永久磁石の磁力で変わります。これらを変更した際の変化の例を、S-T特性とI-T特性のグラフによって示します。ここに挙げた例はどれもモーターの効率をアップさせる効果があります。しかし、同時にコストが上昇する変更でもあります。また、それぞれの変更を組み合わせた変更も可能です。

ブラシレスモーターの仕様変更と特性変化。

さて、ここまでモーターのトルクと回転数、駆動状態、S-TおよびI-T特性、仕様変更と特性変化といったモーターの出力特性に関して説明してきました。これらは、モーターを制御する上で必要となる基礎知識です。式やグラフも比較的理解しやすいものだと思いますので、しっかり押さえておいてください。次は、モーターの出力トルクに関してもう一歩踏み込んだ話をします。

この記事のポイント

・モーターのS-T特性は横軸にモーターの回転数、縦軸にトルクをとったグラフ。

・I-T特性は横軸にモーターの電流、縦軸にトルクをとったグラフ。

・これらの特性グラフからモーターの使用条件においてそのモーターが使用できるか否かの判断が可能。

・モーターの特性は、電源電圧の変更やモーターの巻線仕様の変更によって変更することができる。

・モーター駆動回路の設計においては、モーターの仕様変更に対する特性変化の原則を知っておくことが重要。

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