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2021.06.29 熱設計

熱抵抗データ:
TJの見積もりにおけるθJAとΨJT -その1-

電子機器における半導体部品の熱設計

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前回は、熱抵抗データのθJAとΨJTの定義について説明しました。今回はTJの見積もり計算を行う際に、θJAとΨJTをどのように使うか、どのように使えるか、を2回に渡り考察したいと思います。なお、熱抵抗データを使ったTJの見積もり計算例は、別途説明を予定しています。

θJAとΨJT

この表は前回示したもののθJAとΨJTに関する抜粋です。θJAはジャンクションから周囲環境までの熱抵抗で、放熱には複数の熱経路が存在します。ΨJTはジャンクションからパッケージ上面中心までの熱特性パラメータです。ΨJTの計算式に含まれるTTはパッケージ上面中心の温度です。

記号 定義 用途 計算式
θJA ジャンクションと周囲環境間の熱抵抗。 形状が異なるパッケージ間での放熱性能の比較。 θJA=(TJ-TA) / P
ΨJT デバイス全体の消費電力Pに対するジャンクションとパッケージ上面中心の温度差を表す熱特性パラメータ。 実セット(実際の放熱環境)でのジャンクション温度の推定。 ΨJT=(TJーTT) / P

用途として、θJAは「形状が異なるパッケージ間での放熱性能の比較」、ΨJTは「実セットでのジャンクション温度の推定」が示唆されていますが、この理由について考えて行きます。

θJAについて

熱設計において、「θJAは熱設計に適用できるのか?」という検討があります。結論からいうと、θJAでの熱設計の検討は難しいと考えられています。主な理由を示します。

●TAは、どこの温度なのか?
最終的な判断にTJが何度であるかの見積もりが必要になります。θJAを使用してTJを求める場合には、周囲環境温度であるTAが必要になります。

TAがどのような温度なのかは、JEDEC Standardによって定義されています。以下に参考となるJEDEC Standardを示します。

▶JESD51-2A Integrated Circuits Thermal Test Method Environmental Conditions – Natural Convection (Still Air)

基本的にはJEDECに準拠した箇所でTAを測定しますが、メーカーによっては個別にTA測定条件を提示しているケースもあります。

また、JEDEC Standardでは発熱の影響を受けない空間でTAを定義していますが、近年の機器の実装は込み入っており、果たして発熱の影響を受けない空間があるのか、という話もあります。

●高密度実装化
前項でも示しましたが、高密度実装化により、基板上ではICをはじめ発熱する部品がひしめき合っています。現実的に対象に隣接するICなどとの熱的干渉により温度上昇が生じており、TAと思しき箇所の温度が本当にTAとしてより温度なのか、その判断がかなり難しいのは想像に容易いと思います。

高密度実装化が進む機器。TAの測定はもちろん、TAの定義も困難

●有効放熱範囲が変わるとθJAは変化する
表面実装パッケージのICのデータシートに提示されているθJAは、条件として放熱用の銅箔面積、基板の材質や厚みが示されています。これは、裏を返すと、「実装条件によってθJAは変わる」ことを示していると言えます。このグラフは、θJAとIC実装部の表面銅箔面積の関係を示したデータの一例です。言うまでもなく銅箔面積が増えるとθJAは小さくなりますが、θJAの変化は直線的ではなく、このようなグラフが提供されていないと、実基板の該当面積からθJAを推定するのはかなり困難です。残念なことに、このようなグラフは必ず提供されるとは限りません。

θJAと表層銅箔面積との関係を示したグラフ

これらのことから、特に昨今の状況においてはθJAを使って熱設計を行うのは難しいと考えられています。近年、TJの見積もり方法として主流となりつつあるのは、対象のパッケージ上面中心の温度TTを実測して、ΨJTからTJを算出する方法です。

ΨJTについて

ΨJTは、デバイス全体の消費電力Pに対するジャンクションとパッケージ上面中心の温度差を表す熱特性パラメータです。以下の図は、TJとTTのイメージを示しています。TTはとパッケージ上面中心の温度であることから、実機での実動作状態において熱電対などを使って実測が可能です。

TJとTTのイメージ

TTを取得できれば、最初に示したΨJTを示す式を変形してTJを求めることができます。

 ΨJT=(TJーTT) / P  ⇒  TJ=TT+ΨJT×P

「ΨJT×P」は、TJとTTの温度差になるので、TTに加算することでTJとなります。

次回は、実機の諸条件とθJAおよびΨJTの関係と、TJの見積もりにおけるΨJTの有効性について説明を予定しています。

キーポイント:

・近年の機器の実装条件からは、θJAでの熱設計の検討は難しいと考えられている。

・TAの定義は近年において一律に定義することは難しく、個々に定義が求められる。

・実測密度の高い機器におけるTAの実測は非常に困難な状況にある。

・近年は、比較的実測しやすいTTとΨJTによるTJの見積もりが主流となっている。

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