この記事のキーポイント
・熱抵抗のデータは、標準規格に則って取得され、その準拠規格も明示されているのが一般的。
・JEDEC規格の中で、熱に関連する規格は主に以下の2つ。
-JESD51シリーズ: ICなどのパッケージの熱に関する規格のほとんどを含む。
-JESD15シリーズ: シミュレーション用の熱抵抗モデルを規格化したもの。
・熱抵抗を測定する環境は、JESD51-2Aで定められている。
・熱抵抗を測定する基板は、JESD51-3/5/7で定められている。
今回から、熱抵抗データについての説明をして行きます。最初は熱抵抗関連の規格と測定に関してです。
JEDEC規格
JEDEC(Joint Electron Device Engineering Council)は、半導体部品の分野で規格の標準化を行っている業界団体です。半導体メーカーはもちろん、エレクトロニクス分野では必ずかかわることになる標準規格が多数あります。熱にかかわらず測定方法や条件は業界標準規格に則るのが大原則です。理由は言うまでもありませんが、方法や条件がバラバラでは比較や良し悪しの判断ができないからです。
JEDEC規格の中で、熱に関連する規格は主に以下の2つです。
JESD51シリーズ: ICなどのパッケージの熱に関する規格のほとんどを含む。
JESD15シリーズ: シミュレーション用の熱抵抗モデルを規格化したもの。
以下にJESD51シリーズの代表的な熱に関する規格を示します。
JESD51 | 概略 |
---|---|
JESD51-1 | TJ測定のETM法及び過渡熱測定の方法(Dynamic/Static法) |
JESD51-2A | ICパッケージの熱測定用自然対流環境(Still Air) |
JESD51-3 | SMPパッケージ測定用低熱伝導基板 |
JESD51-4 | 熱測定用TEGチップの規格 |
JESD51-5 | 放熱部品(FINなど)内蔵パッケージのテスト基板規格 |
JESD51-6 | ICパッケージの熱測定用強制対流環境(Moving Air) |
JESD51-7 | SMPパッケージ測定用高熱伝導基板 |
JESD51-14 | 1次元放熱経路を持つパッケージのRthjc測定法 |
熱抵抗測定環境
熱抵抗を測定する環境は、JESD51-2Aで定められています。以下はJESD51-2Aに準拠した熱抵抗測定環境の例です。
測定対象をアクリルチャンバー内に置くことでStill Air(静止空気)状態とし、雰囲気の流れの影響を排除し、測定対象は自然空冷状態になっています。また、測定対象は常に同位置にセットすることで、再現性の高い測定が確保されます。
熱抵抗測定基板
熱抵抗を測定する基板に関しても規定があります。一般にJEDECボードと呼ばれている基板は、JESD51-3/5/7で規定されています。以下に一例を示します。
熱抵抗のデータは、基本的に標準規格に則って取得され、その準拠規格も明示されているのが一般的です。
「電子機器における半導体部品の熱設計」と同一カテゴリの記事一覧
- 熱設計とは
- 技術トレンドの変化と熱設計
- 熱設計の相互理解
- 熱抵抗と放熱の基本:熱抵抗とは
- 熱抵抗と放熱の基本:伝熱と放熱経路
- 熱抵抗と放熱の基本:伝導における熱抵抗
- 熱抵抗と放熱の基本:対流における熱抵抗
- 熱抵抗と放熱の基本:放射における熱抵抗
- 熱抵抗データ:実際のデータ例
- 熱抵抗データ:熱抵抗、熱特性パラメータの定義
- 熱抵抗データ:TJの見積もりにおけるθJAとΨJT -その1-
- 熱抵抗データ:TJの見積もりにおけるθJAとΨJT -その2-
- TJの見積もり:基本計算式
- TJの見積もり:θJAを使った計算例
- TJの見積もり:ΨJTを使った計算例
- TJの見積もり:過渡熱抵抗を使った計算例
- 表面実装における放熱面積の見積もりと注意点
- 表面温度測定:熱電対の種類
- 表面温度測定:熱電対の固定方法
- 表面温度測定:熱電対の取り付け位置
- 表面温度測定:熱電対の先端の処理
- 表面温度測定:熱電対の影響