熱設計|
電子機器における半導体部品の熱設計 これからの熱シミュレーション
2022.08.16
この記事のポイント
・設計から量産に至るまでの工数削減のために、熱設計のフロントローディング化が進んでいる。
・フロントローディング化を推進するには、精度の高い熱シミュレーションが鍵となる。
「熱設計とは」、「技術トレンドの変化と熱設計」、そして「熱設計の相互理解」で記したように、熱設計の趣旨は従来から変化し、設計手法にも変革が起きています。その中でも、熱シミュレーション技術は大きく進歩しており、すでに実測との置き換えが可能なほど高精度になっています。
熱設計のフロントローディング化
製品の設計開始から量産に至るまでの工数、特に不具合やデバック、設計変更といった手戻りの削減のために、熱シミュレーションを利用した熱設計を設計の初期段から導入する取り組みが進んでいます。これは「フロントローディング化」と呼ばれ、シミュレーションなどを活用して初期工程に重みを置くことでトータルの工数削減を目指すアプローチです。
以下の図は、フロントローディング化のイメージです。

製品設計の開始から量産までのプロセスにおいて、量産に近づくにつれて変更や修正が難しくなり、それにかかるコストとリソースは増えます。これを最小限に抑えるには、設計プロセスのなるべく早い段階で品質の高い確実な設計がなされている必要があります。従来は試作によって設計の問題を見出し、修正・変更を行うのが一般的でしたが、構想設計や基本設計に時間と工数をかけるフロントローディング化によって、試作以降の工数を削減可能です。熱設計のフロントローディング化には、熱シミュレーションが非常に有効で、先にも述べたようにその精度は高くなっています。
熱シミュレーションの高精度化によって、今までの熱シミュレーションが熱対策のためのシミュレーションだったのに対し、これからの熱シミュレーションは熱設計のフロントローディング化を推進する要となります。
熱シミュレーションモデル
高精度な熱シミュレーションには、熱シミュレーションモデルが重要になってきます。以下に代表的な熱シミュレーションモデルを示します。「詳細モデル」は、高精度な熱シミュレーションが期待できますが、基本的に規格に則るものではなくメーカー独自のものになり、その提供において機密保持契約(NDA)などが必要になる場合もあります。

残念ながら、すべてのディスクリート部品やLSI(IC)に熱シミュレーションモデルが用意されているわけではありません。その場合に、JEITA(社団法人 電子情報技術産業協会)の半導体パッケージング技術委員会のウェブサイトに設置されている、「半導体パッケージ熱パラメータ予測ツール」を利用することで対処できる場合があります。委員会の活動内容なども示されていますので、一度訪問してみてください。
【資料ダウンロード】 電⼦機器における半導体部品の熱設計
電子機器の設計では近年熱対策が注目され、熱設計が新たな課題になっています。熱は以前から重要検討事項ですが、近年は電子機器に対する要求が変化しており、従来の熱対策を見直す必要が出てきました。このハンドブックでは、基本的に電子機器で使われるICやトランジスタなどを前提にした熱設計に関して解説します。
熱設計
-
熱設計とは
- 技術トレンドの変化と熱設計
- 熱設計の相互理解
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- 熱抵抗と放熱の基本:伝熱と放熱経路
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- 熱抵抗データ:JEDEC規格および熱抵抗測定環境と基板
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- TJの見積もり:過渡熱抵抗を使った計算例
- 表面実装における放熱面積の見積もりと注意点
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- 表面温度測定:熱電対の固定方法
- 表面温度測定:熱電対の取り付け位置
- 表面温度測定:熱電対の先端の処理
- 表面温度測定:熱電対の影響
- まとめ
- 熱設計ワンポイント集