【第2話】スギケン現る!スーパーエンジニアへの第一歩

2022.11.01

ここからは、モーターそのものについての基礎として、以下について説明して行きます。最初にモーターとはどんなものか、またその回転原理について、最も基本となるブラシのついたブラシ付きモーターを例に説明しています。続いて、本題であるブラシレスモーターについて解説して行きます。

第2話目次

モーターとは

モーターとは広くは動力を意味しており、たとえばモータースポーツなど自動車に関連することにも用いられますが、ここでの「モーター」は、電気エネルギーを力学的エネルギーに変換する「電動機」を指しています。

それでは、電動機(モーター)はどのように電気エネルギーを力学的エネルギーに変換しているのでしょうか?

モータードライバーICの役割」や「モータードライバーICとモーター機器の関連」でも触れましたが、「電磁石の現象を利用している」と言うのが答えになります。つまりモーターは、電気エネルギーで電磁石を作り、磁石の引力/斥力を利用して力学的エネルギーを発生させるものです。

また、別の考え方もあります。むしろこちらの説明の方が一般的かもしれませんが、「磁界中に置かれた導線に電流を流した時に起こる力を利用している」とも言えます。フレミングの左手の法則です。この原理は以下のような簡単な回転機構の模式図を使って説明できます(注:回転を続けるには電流の向きを切替える必要があります)。しかし、この構造はこれから説明する実際のモーターの構造とは少しイメージが異なります。したがって、ここでは最初の「電磁石の利用」をイメージした説明をしていきます。

簡単な回転機構。

電磁石は鉄に代表される磁性体に導線を巻いたものです。そのままでは当然何も起こりませんが、導線に電流を流すことで磁性体が磁石の特性を持つようになり、他の磁性体(鉄など)を引きつけます。また、電流の向きを変えて磁極を変化させることもできるので、対面に別の磁石を配置した場合、その磁石に与える力を引力もしくは斥力に切り替えることもできます(下図参照)。

電磁石と磁石の特性。

この電磁石の特性を基に、電気エネルギーを使って回転運動をするのがいわゆるモーターです(注:リニアモーターなど直線移動するものもある)。

さて、力学的エネルギーを磁石の引力/斥力で得ることはわかると思いますが、継続的な回転運動はどのように実現しているのでしょうか?それは、実はラジコンカーや工作などに使われるモーターの構造を見てみると理解しやすいです。

モーターの回転原理

原理の説明のため基本となるブラシモーターを例にします。

モーター構造の例。

このモーターがどうような構造となっているかというと、「電磁石3個」の図に示すように、機械的に120度ずつの間隔に配置されたコイルと導電板、導電板を挟むように配置されたブラシと呼ばれる2つの板、そして永久磁石で構成されています。このモーターは、ブラシがあることからブラシモーターやブラシ付きモーター、もしくは整流子電動機と呼ばれます。

電磁石3個の場合の回転原理。

なぜこのような120度ずれた構造となっているかの説明のため、まず電磁石が1つである図を使って回転原理を説明します。

電磁石1個の場合の回転原理。

電磁石1個の図において、まずブラシは2枚あり、一方はプラス電極に、もう一方はマイナス電極に接続されます。このブラシで図のように導電板を挟むと導電板に接続されたコイルに電圧がかかり電流が流れます。この導電板はモーターのシャフトに貼り付いていて、コイル(電磁石)と一緒に回る構造となっています。

このような構造を基本とし、たとえば図の<c>の位置にコイルがある場合には、電磁石が図のような磁極となる電流が流れるように導電板の位置を調整、配置したとします。すると、コイルには反時計回りの力が発生し回転します。

次に、回転によってこのコイルが<d>の位置まで来た時を考えます。この位置でも電磁石の極性がそのままだとコイルは止まってしまいます。そこでこの位置で電磁石の極性を変えます。ちょうどこの位置でブラシと導電板の接続が逆になるように導電板の位置を微調整します。こうすることによりモーターは回り続けます。

しかし、よく考えるとこの構造には難点があります。たとえば<d>の位置で電極をタイミングよく切り替えるのは実は難しく、ここで磁極がうまく切り替わらなければモーターは止まってしまいます。また、1枚の導電板と両方のブラシが接触するとプラスとマイナスが短絡してしまい、障害が発生する可能性があります。

これらの問題を解決する方法として、コイルを3つ使って電磁石を120度間隔で配置する構造が考えらました。この構造のモーターは3相巻線モーターと呼ばれており、例示のモーターはこれに該当します。ちなみに、電磁石1つの構成は単相モーターと呼ばれます。

前出の「電磁石3個」の図は、3相モーターの構造の概念図になります。コイルは3つあって各コイルの一端は導電板につながり、他端はその3つがつながっています。この配線で、ブラシを使って2つの導電板に電圧を印加し2つのコイルを磁化します。こうすることで、たとえば<a>の位置ではAとBのコイルを磁化し、<b>の位置では<a>でN極化されていたBのコイルは磁化を解かれ、CのコイルがN極となります。この動作なら、「電磁石1個」の図<d>のようなことは起こりません。またこの導電板の配置であれば、プラスとマイナスが短絡することもありません。

導通版の調整イメージ。

このように、電磁石の極性を適切なタイミングで切り替えることでモーターは回転します。次からは、本題の3相ブラシレスモーターの話に入ります。

この記事のポイント

・モーターとは、広くは動力を意味するが、ここでは電気エネルギーを力学的エネルギーに変換する「電動機」について説明する。

・モーターは、電気エネルギーで電磁石を作り、磁石の引力/斥力を利用して力学的エネルギーを発生させるものと言い表すことができる。

・電磁石の極性を適切なタイミングで切り替えることでモーターは回転する。

・電磁石1つの単相モーターでは問題が起こるので、例えば電磁石3個の3相モーター構造にすることで確実な回転が得られる。

・電磁石1つの単相モーターが持つ磁極切替えタイミングの課題は、電磁石3つの3相モーター構造にすることで解決でき、確実な回転が得られる。

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