【第6話】テスト対決!一ノ瀬と二宮の真剣勝負!
2023.05.09




ここからは、ブラシレスモーターの出力特性について以下の4項目に分けて説明していきます。この出力特性は、モーターを制御(回し始める、止める、トルク制御、回転数制御、電流の増減などのモーターに関する様々な制御)する上で必要となる基礎知識と言えます。
第6話目次
ブラシレスモーターの出力特性:トルクと回転数
モーターの出力は機械的(力学的)エネルギーです。よって、その指標は「トルク」と「回転数」の2つとなります。今回は、この2つの特性はどのように決まり、どのような関係があるのか、今までの説明してきたことと合わせて説明していきます。
ブラシレスモーターのトルク
最初は「トルク」についてです。実際のモーターのトルクの大きさはモーターの径や長さにも関係しますが、複雑になるのでここではその要素は定数Aとします。モータードライバーを設計する上で知っておきたいのは、トルクは電磁石磁力の大きさと永久磁石磁力の大きさ、さらにその相対角度θに依存するということです。式で表すと以下のようになります。ここでの電磁石磁力は、コイルの巻数(ターン。例:30回巻いていたら30ターン。ここでは1コイルの巻数をN t/cで表現する)と電流の大きさの積に、定数Bを掛けたものになります。定数Bは、ティースの大きさや鉄心の材料特性により決まってくる値です。また、永久磁石磁力は磁石の材料や工法などで決まる磁石性能によります。

ここで、式の簡略化のためにモーター特性を固定して考えてみます。すると、これらの関係式のうち永久磁石磁力と巻数は一定となります。そこで、それらをまとめて定数Cとすると、出力トルクは電流とsinθの式となります。この関係式が重要です。ちなみにこの式の電流も一定としたのが「ブラシレスモーターのタイミングチャートの作り方」で示したT=A×sinθの式となります(ここでのAは上記のAとは別値)。
ブラシレスモーターの回転数
次にモーターの「回転数(回転速度)」についてです。モーターの回転数は上記の出力トルクと、ファンなどを回すのに必要とする負荷トルクの大小関係で決まってきます。これは以下の2つの物理式から分かります。1つはトルク=イナーシャ×加速度(F=maの回転体版)という式、もう1つは速度=加速度の積分という式です。これらから、出力トルクと負荷トルクに差があれば加速度が発生し、速度が変化することが分かります。そしてその速度変化が出力トルクおよび負荷トルクに変化を与え、それが一致すると加速度がゼロとなり、その回転数で安定します。

上記の回転数変化が出力トルクを変えるということについて、例として負荷トルクがない場合(無負荷)にどうなるかを考えてみましょう。上記の式で負荷トルクがゼロなら加速度aがゼロとならず、速度は上がっていきます。しかしながら、もちろん延々と加速するわけではありません。ここで、トルクを決めている電流がどのように決まっているかが関係してきます。下記の電流の計算式が示す通り、電流は印加電圧から誘起電圧を引いた値と巻線のインピーダンスで決まります。よって、回転数が上がると誘起電圧Vbemfが大きくなり、電流は減っていつかはゼロ、すなわち加速度もゼロとなり回転数は安定します。モーターの回転数はこれらが相互に関わり合って決まってきます。

ブラシレスモーターの出力特性:実際のモーターの駆動状態
モーターには主に3つの駆動状態があります。1つは、負荷がなく回っている状態で、この時の出力トルクはほぼゼロです。2つめは負荷があり回っている状態です。これは、通常のモーターの使用状態であると言えます。最後はロック(固定)状態です。電圧が印加されているのに、モーターが回っていない状態です。この他に、モーターが外部から回されている状態(回生状態、発電状態)や逆回転状態、電圧が掛かっていない状態もありますが、ここではこの3つの状態について説明します。
無負荷状態
出力トルクを必要としない状態です(厳密には軸受摩擦などの負荷があるのでトルクが必要)。この場合、巻線電流はほぼゼロということになります。電流がゼロになるのは、印加電圧と誘起電圧がほぼ同値となることを意味します。言い方を変えると、誘起電圧が印加電圧と同値となるところまで回転数が上がった状態と言えます。
印加電圧が下図のように方形状(矩形波)で誘起電圧が正弦波である場合に関して、同値とはどういう状態であるかは議論の余地がありますが、ここでは電流がトータルでゼロとなることを同値とします。

負荷状態
ファンなどの負荷体を回すためにトルクが必要な状態です。そのトルクを発生させる巻線電流が必要であるため、以下の図に示すように無負荷状態より誘起電圧が小さめになります。よって、回転数は無負荷状態より下がっています。

ロック状態
モーターが回転しておらず、誘起電圧が発生していない状態です。電流は、この3つの状態の中では最大になりトルクも最大です。

次回は、これらの状態の変化の理解を深めるために、S-T特性とI-T特性のグラフについて説明します。
この記事のポイント
・モーターの出力は機械的(力学的)エネルギーであるため、その指標は「トルク」と「回転数」の2つとなる。
・トルクは電磁石磁力の大きさと永久磁石磁力の大きさ、さらにその相対角度θに依存する。
・モーターの回転数は出力トルクと負荷トルクの大小関係で決まる。
・出力トルクと負荷トルクに差があれば加速度が発生し速度が変化する。
・その速度変化が出力トルクと負荷トルクに変化を与え、それが一致すると加速度がゼロとなり、その回転数で安定する。
・モーターには主に、負荷がなく回っている状態、負荷あり回っている状態、ロック(固定)状態の3つの駆動状態がある。
・無負荷状態は、出力トルクを必要としない状態で巻線電流はほぼゼロ。
・負荷状態は、負荷体を回すためにトルクが必要な状態で巻線電流が必要であるため、無負荷状態より誘起電圧が小さめで、回転数は無負荷状態より下がる。
・ロック状態は、モーターが回転しておらず誘起電圧が発生していない状態で、3つの状態の中では電流、トルクともに最大になる。
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