この記事のキーポイント
・TJの見積もりは、TAとθJAから、もしくはTTとΨJTからの2通りに求め方がある。
・どちらの計算にも、ICの消費電力Pが必要になる。
ここまでは、熱抵抗データの理解のために、TJの見積もり計算を行う際にθJAとΨJTをどのように使うか、どのように使えるか、そしてΨJTの特性とTJの見積もりにおけるθJAとΨJTの有効性について説明してきました。ここからは、熱抵抗データを使ったTJの見積もり計算の例を示して行きます。
TJの見積もりに使用する基本計算式
最初に、TJの見積もりに使用する基本計算式を確認しておきます。TJは以下の2通りの式で見積もることが可能です。
①周囲温度TAから求める
②実使用状態でのICのパッケージ上面中心温度TTから求める
どちらの式にも出てくる消費電力Pは、基本的にはICの電源電圧と電源電流の積になりますが、ICの機能(電源IC、オペアンプなど)や出力負荷電流などを考慮する必要があります。いずれにしても、そのICが消費する電流と電圧から消費電力を求める点には変わりはありません。以下にリニアレギュレータ例を示します。
これは最もシンプルな例で、VIN×ICCがICの自己消費電力、入出力差(VIN-VOUT)×IOUTが負荷分の消費電力、この合計がこのIC全体の消費電力となります。
次回から例を使って、実際にTJを求めて行きます。
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