ブラシレスモーターの誘起電圧波形を考慮した巻線電流

2023.02.07

第4話目次

ここまで、ブラシレスモーターの実際の信号波形での疑問点①、「U電流はなぜこのような波形になるのか」について説明をしてきました。今回は巻線電流と誘起電圧の関係についてまとめます。

ブラシレスモーターの誘起電圧波形を考慮した巻線電流

ここまでの説明を踏まえて、あらためて巻線電流波形について考えます。

ブラシレスモーターのコイルに誘起電圧が発生することを考慮すると、「ブラシレスモーターの巻線電流」で示した等価回路に誘起電圧(Vbemf)が追加されます。それにより、たとえば下図のような印加電圧と誘起電圧の波形であれば、巻線コイルに実際に掛かる電圧は図のグレー部分の電圧となります。

電圧印加時のコイル(巻線)電流の等価回路に誘起電圧を追加した等価回路図と、電流・電圧波形。

図から分かる通り、この巻線コイルに実際に掛かる電圧は最初は大きく、途中で小さくなり、その後にまた大きくなります。電圧波形(グレー部)がこのような形状となるため、巻線電流は中央が凹んだような波形になります(「ブラシレスモーターの巻線電流」で示した波形と同じ)。

ここで、「印加電圧と誘起電圧の大きさが変われば、巻線電流の大きさやその波形が違ってくる」ということが頭に浮かんだのではないでしょうか。印加電圧はコントロールICが制御できる電圧ですが、誘起電圧は様々な条件で変化します。誘起電圧はコイルを通る磁束の変化量と説明してきた通り、誘起電圧の大きさ(波高値)について以下のことが言えます。

  • ▶ 磁石の磁力が大きいと大きくなる ← 磁束の絶対量が増えるため
  • ▶ コイルの巻数が多いと大きくなる ← 発電するコイルの量が増えるため
  • ▶ モーターの回転数が速い(高い)と大きくなる ← 磁束の変化が早くなるためその逆は小さくなる

厳密な理論は割愛しますが、誘起電圧の大きさはこのような条件で変化します。

誘起電圧の大きさが変わった時の電流波形の変化の例を下図に示します。誘起電圧が大きく印加電圧の大きさに近い方が、電流の中央の凹み具合が顕著になっていることが分かります(図上側)。また、大きさとは別に、印加電圧のタイミングでも電流波形は変わります(図下側)。

誘起電圧の大きさと巻線電流の関係を示した波形図。

これは120度通電(矩形)を例にした波形の変化ですが、他の通電パターンでも誘起電圧の大きさや位置、もちろん形状によっても巻線電流が変化します。このことがモーターの特性に様々な影響を与えますが、その内容については後で説明します。

これで、疑問点①、「U電流はなぜこのような波形になるのか」について、その要因である巻線電流と誘起電圧による説明を終わります。次は、②の「UHの信号がパルス状になっていること」について説明します。

この記事のポイント

・印加電圧と誘起電圧の大きさが変われば、巻線電流の大きさやその波形が違ってくる。

・印加電圧はコントロールICが制御できるが、誘起電圧は条件により変化する。

・誘起電圧の大きさ(波高値)について以下が言える。

 -磁石の磁力が大きいと大きくなる←磁束の絶対量が増えるため

 -コイルの巻数が多いと大きくなる←発電するコイルの量が増えるため

 -モーターの回転数が速い(高い)と大きくなる←磁束の変化が早くなるためその逆は小さくなる

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