DC-DCコンバータ|応用編

フローティング動作のリニアレギュレータを使った電源設計のポイント リニアレギュレータの入出力コンデンサ設計とリップル対策

2022.12.27

この記事では、リニアレギュレータIC設計における基本的な特性と注意点を解説しています。入出力電圧差、過渡応答、リップル除去比の関係性に加え、出力及び入力コンデンサの選定・配置の要点についても詳述しています。また、フローティング動作におけるリップル電圧の増加防止や、過電流保護の動作特性についても取り上げ、安定した電源回路を構築するための実践的なアドバイスを提供しています。

リニアレギュレータの入出力電圧差と過渡応答及びリップル除去比の関係

この内容は、仕様値や特性グラフはBA1117に関するものですが、基本的にリニアレギュレータIC全般に共通です。リニアレギュレータICは、規定されているドロップアウト電圧(入出力間の電圧差)が確保されないと動作できません。入力電圧の最小値は、使用する負荷電流でのドロップアウト電圧をデータシートの「ドロップアウト電圧 vs 出力電流」グラフから読み取り、出力電圧に加算した電圧となります。例に使用しているBA1117では、出力電流を0.5Aとすると、ドロップアウト電圧は約1.1V(typ値、Ta=25℃)であることが読み取れるので、例えば出力が5Vの場合、最小入力電圧は6.1Vになります。

リニアレギュレータの入出力電圧差と過渡応答及びリップル除去比の関係

このような最小限の入力電圧差のときはDC的には動作できていますが、他の制御能力は十分に発揮できません。例えば負荷変動がある場合は、入出力電圧差が小さい条件では入力から出力へ短時間に大電流を供給することができません。つまり負荷応答が遅くなります。また応答性の遅れはリップル除去比(PSRR)特性の低下としても現れます。これは、これらの規格値の規定条件の入出力電圧値や関連のグラフを見るとわかります。以下に一例を示します。5V出力に対してドロップアウト電圧1.2Vを加算した6.2V入力時の特性と、2V以上を加算した7V入力以上の特性が大幅に異なるのがわかります。

リニアレギュレータの入出力電圧差と過渡応答及びリップル除去比の関係

効率を重視する場合には、入出力電圧差を最小限にしたいところですが、期待する特性を発揮することができない可能性があります。この例では、負荷応答性とPSRRに関して必要な能力が得られる入力電圧検討して、効率と各特性の妥協点を求めるようにします。

リニアレギュレータの出力コンデンサに関する注意点

出力コンデンサは、レギュレータの安定性を維持する上で必要になります。以下にBA1117を例にした出力コンデンサに関する注意点を示します。ほとんどの注意点は、BA1117固有のもではなくリニアレギュレータ全般に当てはまります。

リニアレギュレータの出力コンデンサに関する注意点

実装基板上での配置

出力コンデンサCOUTは帰還ループを安定化するために、ICのVOUT端子に極力近い位置に接続し、同様に近傍のグラウンドに接続します。これは、BA1117以外でも同様です。

静電容量

BA1117の出力コンデンサの静電容量は22μF以上にしてください。静電容量が小さいと発振する可能性があります。静電容量が大きい方が帰還ループの安定性と出力の過渡応答特性が向上します。静電容量の最小値はリニアレギュレータICによって違う場合があるので、使用するICのデータシートに従ってください。

静電容量の最大値に制限はありませんが、いくつか検討事項があります。静電容量を大きくすることで、電源オン時の出力コンデンサの充電時間(設定電圧に到達する時間)、及びオフ時の放電時間(おおよそグラウンド電位に到達する時間)が長くなります。これらの時間が給電するデバイスや回路の電源要件に対して問題がないか確認が必要です。

また、入力電源をオフにしたときに出力と入力の電圧が逆転(出力電圧が入力電圧より高い)して、IC内に大電流が逆流することで損傷することが考えられます。このような場合、逆流バイパスダイオードを追加することで回避可能です(上図)。使用するダイオードは、ICの出力トランジスタが入出力電圧逆転により導通状態になる電圧より低い電圧で導通し逆電流をバイパスしなければならないので、有効な順方向電圧VFのダイオードを選択する必要があります。ICによっては、この保護を備えたものがありますので、個々にデータシートで確認が必要です。

ESR(等価直列抵抗)

BA1117の出力コンデンサのESRは5Ω以下にしてください。ESRが大きいと帰還ループが不安定になり発振を起こします。また、このESR値はIC単品及び抵抗負荷による評価結果を基にしており、実使用においては基板の配線インピーダンスや入力側の電源インピーダンス、負荷インピーダンスによって変化するため、必ず実機に実装した状態で発振がないか十分な確認をしてください。

一般に、出力コンデンサのESRが大きすぎる場合だけではなく、小さすぎる場合にもループが不安定になり発振を起こします。ESRの上限と下限はICによって異なるので、個々にデータシートによって確認する必要があります。

アルミ電解コンデンサ

出力コンデンサとしてアルミ電解コンデンサを用いることができます。アルミ電解コンデンサは安価で大容量が得られますが、低温で急激な容量減少とESR上昇が起こるものがありますので注意が必要です。

セラミックコンデンサ

出力コンデンサにセラミックコンデンサを用いる場合は、温度特性が良好なX5R及びX7Rを推奨します。Z5U、Y5V、Fは容量変化が大きいため使用しないでください。許容差、温度特性、DCバイアス特性により静電容量値が減少するので、使用条件においてデータシートに示されている最小値を下回らないように選択してください。また、DCバイアス特性はケースサイズにも依存し、サイズが小さくなるにしたがって静電容量の低下が大きくなる傾向にあります。

出力負荷過渡応答

出力負荷電流の変動が急峻な場合、出力電圧に過渡的な電圧変動が発生する場合があります。この電圧変動を小さくしたい場合は、出力コンデンサの静電容量を大きくしてください。ただし、出力の静電容量を増やすと、入力側から出力コンデンサへ充電する電荷量が増えるため、入力側電源の負荷応答性が良くない場合は入力電圧が同様に過渡的に低下する場合があります。これを防止するためには、入力コンデンサの静電容量も出力コンデンサの静電容量相当まで大きくします。

リニアレギュレータの入力コンデンサに関する注意点

入力コンデンサは、回路動作時に入力電源の電位変動を抑えてリニアレギュレータICの入力を安定にさせるために必要です。特に入力配線(基板薄膜配線)が長い場合や、入力電源のインピーダンスが高い場合に、LDO入力電源の安定性を確保するために効果的に働きます。

以下に、BA1117を例にした入力コンデンサに関する注意点を示します。出力コンデンサ同様に、ほとんどの注意点はBA1117固有のもではなくリニアレギュレータ全般に当てはまります。

リニアレギュレータの入力コンデンサに関する注意点

実装基板上での配置

入力コンデンサCINは、VIN端子の直近に接続し、同様近傍のグラウンドに接続します。ICから1cm以内に配置してください。前述のとおり、入力電源インピーダンスを小さくすることが目的であり、基板における寄生成分の影響を可能な限り排除するためです。

静電容量

BA1117の今回の例としては、10uFの入力コンデンサを使用していますが、出力電流が急変する場合、出力コンデンサの静電容量を大きくして過渡的な電圧変動を低減する方法を取ります。ただし、入力電源側の瞬間的な電流供給能力が不足する場合は入力電圧が低下する場合があります。これを防止するには、入力コンデンサの静電容量も出力コンデンサの静電容量相当まで大きくしてください。バルク(大容量)コンデンサは、セラミックコンデンサと並列にアルミ電解コンデンサなどを接続します。

ESR(等価直列抵抗)

入力コンデンサは入力電源インピーダンスを小さくすることが目的のため、ESRは小さいことが望まれます。ICへの入力電流の急変がない場合は、他の種類のコンデンサでも構いません。

フローティング動作リニアレギュレータの出力リップル電圧増加の防止

これは、ADJ端子を持つフローティング動作のリニアレギュレータに関する内容になります。出力電圧が高くなるにつれて入力リップルが増幅されるため、ICのリップル除去比が悪化します。この対策として、ADJ端子とグラウンド間にコンデンサCADJを付加することでリップルの増幅を抑え、リップル除去比の悪化を防止することができます。

フローティング動作リニアレギュレータの出力リップル電圧増加の防止

リップル除去比の悪化を防止するには、以下の式が示すように、すべてのリップル周波数でCADJのインピーダンスがR1よりも低い必要があります。
\(\displaystyle \frac{1}{2\pi \times f_{\text{RIPPLE}} \times C_{\text{ADJ}}} < R_1\)

fRIPPLE :リップル周波数[Hz]
以下は、BA1117のCADJとリップル除去比の変化を示したグラフで、CADJの効果が確認できます。

フローティング動作リニアレギュレータの出力リップル電圧増加の防止

リニアレギュレータの負荷と起動に関する注意点

BA1117の過電流保護(OCP)は垂下型特性なので、ほとんどの負荷で起動可能です。しかしながら、起動時に大電流(突入電流)が流れる回路では起動できない場合があります。これは、負荷電流がICの出力(供給)電流を上回ると、出力電圧が上昇できずICが起動できなくなるためです。注意すべき負荷は、モータ、大容量のコンデンサ、定電流負荷などです。

下図は、BA1117の出力電流IOと出力電圧VOUT(1.5Vに設定した例)の関係を示したグラフです。BA1117の出力電流仕様は、1.0A最小、1.7A標準です。グラフは、出力電流をほぼ一定に維持して出力電圧が降下する、垂下型の過電流保護特性を示しています。このように垂下型の場合は、電流制限が働いてもほぼ制限値の出力電流を流し続けるので、通常は前述のような負荷の場合でも起動可能です。

リニアレギュレータの負荷と起動に関する注意点

リニアレギュレータの中には、フの字(フォールドバック)特性の過電流保護を採用しているタイプがあります。フの字特性は、出力電圧と出力電流の両方を降下させるので、起動時に突入電流が流れ保護が働いてしまうと、出力電圧が上昇できない状態に固定してしまいます。特に前述のような負荷の場合は、起動に問題がないかチェックする必要があります。

過電流保護の種類には、垂下特性、フの字特性、ヘの字特性、これらを組み合わせた特性があります。それぞれに特徴があるので、各特性を理解して回路仕様に適する過電流保護を備えたリニアレギュレータICを選択します。

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